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バトンを渡して…

イベント運営を趣味としてる僕ですが、今回その引き継ぎに失敗しましたので、その反省をしていきたいと思います。

イベントの引き継ぎって、新しいイベントを作り出していく時、特にクリエイティブに様々なものに手を加えるときにはかなり重要なプロセスになるはずなんです。既存イベントと新規イベントを両方回せるほどの体力を備えることは難しいですから。一度上げたクオリティーを担保していくには、しっかりとした引継ぎが必要なわけなんですが…これまた、特に企画系であると難しいんですよね…。今回、そんな体験談を余すことなく書き下して次からのイベント運営に生かしていこうと思います。


状況把握

まず、ざっくりと今回の状況を振り返ってみましょう。まず僕は、とある学園祭の周遊企画の昨年度の担当でした。周遊企画は、毎年スタンプラリーを実施していましたが、昨年は僕が謎好きだったことから周遊謎企画を実施。今年の担当の子はその企画を気に入って担当を引き継いでくれることになりました。担当の子は、去年の周遊謎をパワーアップしたものを作成しようとしましたが、イベント2週間前の時点で、ゲーム後半が白紙状態…。このままでは当日の開催が危ぶまれるということになり本人との相談の結果、僕がテコ入れに入り、現在作成済みのものを最大限生かした全く別の企画を作成しました。最終的にはスタンプラリーとリズムゲームを組み合わせた形に落ち着き、開催前日の夜になんとか完成させました。僕は満身創痍でした…。正直自分が担当の時よりもハードでした…。

企画を引き継ぐ難しさ

今回の事例で特に難しかったのが、介入の加減です。ある程度過程の決まっている仕事(学園祭で言えば、模擬店の取り仕切りや招待企画など)に関しては1から10までやることが決まっていますが、企画をする仕事(学園祭で言えば、ステージでの企画や周遊企画)に関しては昨年やったことこそあれ、今年の内容は一切白紙の状態から開始されます。つまり、引き継がれる者が自由に遊べる場ということです。その状況を楽しめる人であれば願ってもない環境なわけですが、ここに引継ぐ者と引き継がれる者、双方の難しさもあります。

まず引継ぐ者に関しては自分の時の事例の知識しかありません。つまり、非常に狭い視野ながらアドバイスを与えなくてはならないのです。実質、新しい企画を一緒に考えていくということになります。しかし、自分の事例の知識や経験を鮮明に伝えれば伝えるほど、企画に引き継ぐ者の色が滲み出てきます。塩梅を間違えれば乗っ取ってしまいかねません。その人の色を皆知っているので手を加えれば一瞬でわかってしまいます。そこの加減を調整しつつ、一般化を交えながら伝えていくのは至難の業です。自分の時はお客さんのことだけを考えていれば良かったですが、引き継がれる者がいかに楽しめるか、作りたいものを作れるかを含めて考察しなくてはいけないため、難易度は爆上がりします。

一方、引き継がれる者には一切の知識がない状態から企画を生み出すという産みの苦しみが襲いかかってきます。これは特に慣れていない場合非常にストレスフルな作業です。目に見える進捗が生まれない状況になるので…。しかし、昨年度の企画をそのまま再現してはオリジナリティに欠けると評価されてしまうため生み出す必要がある。引き継ぐ者の情報も手に入れられますが、その企画は比較対象となるライバルでもあるので、安直な再利用は期待できません。作ったのは自分だと胸を張るには、自分の色が滲み出る必要があるのです。

また、企画は手を動かす前の頭の中の滞在期間が非常に長いことが特徴です。つまり進捗が掴みづらい。その人が大丈夫だと言えば大丈夫になってしまうのが怖いところです。何故ならその当人ですら本当にどこまで進んでいるのかは把握できてないのですから…。何にも進まない日もあれば今まで考えてたことが纏まって1日で60%進むこともあります。しかし、それもまた結果論で、現状何%かは把握せずに走っているわけです。その頭の中の状態をましてや外部の人が把握しようなんざ無理な話なんです。ある程度表出化してもらっても、無難な反応以外を返しづらいのです。

こんな状況での情報伝達なので、そもそも引き継ぐことが難しいのです…。今回の僕の1年間の動きを思い返してみましょう。

1年間の動き

まず、ある程度のプロセスの概要を説明(2月頃)後、自分の作成した昨年の企画の試遊と運営体験をしてもらいました(5月頃)。まず、運営側から企画をいかに見るかを知ってもらうためです。ここで新しい視点を展開しながら、制作の時に考えたポイントについても話をしていきました。実際に周遊をしながら経験談を丁寧に説明していきました。これを2、3回したあと、しばらく離れていました。というのも、他の用事が忙しかったので…。引き継いだ理由が別の生活があることだと考えると仕方ないでしょう。2週-3週に1度、頭の中の構想を語ってもらい、それにアドバイスをしました。そう深く話すことはなかったですね。まぁ順調的空気感があったので。9月後半になると、流石にそろそろと急かし始めました。昨年、僕のアイデアがカタチとして出てきたのが9/23だったのでそこまでは比較的寛容に見てましたが、残りが1.5ヶ月を切ると流石に形が欲しいところ。10月に入ると、確認の頻度が上がってきました。毎週のように確認をし、試遊をさせてもらって状況把握とアドバイスに務めました。また、試遊を通してクオリティーアップをする方法を伝授しました。しかし、直接手を入れることはしませんでした。頼まれたら入れると言っていましたが、大丈夫との反応を信じていました。10月後半の試遊時、まだ後半が白紙なことが発覚します。この時もそのまま援助のみを続けることを考えていましたが、他の人から〈担当が最後までやり切ることよりもクオリティーを優先して欲しい〉との要望があり、相談の結果、企画を一時的に預かることとなりました。

今になって考えれば10月頃の大丈夫には多分の空元気が含まれていました。そこに気付いてあげられなかったのはミスです…。

三大失敗点を振り返る

さて、ここからが本題です。引き継ぎ時の3つの大きな失敗点を振り返りたいと思います。

1.前提知識量の差を伝える

僕の場合、趣味として長年謎解きイベントに参加してきたことが、かなりのアドバンテージになっていました。昔からいつかは作りたいと思っており、脱出ゲーム参加後に分析してみたりボランティアスタッフの立場で参加してみたりしていたのです。田舎住みでお金もそんなにないのでそこまで大量に参加できている訳ではないですが、それでもそんな謎解きゲームの基礎知識が蓄積されていました。また、制作が決まってからも脱出に足を運び遊んでました。いや、ただ遊んでただけなんですけど…。でもそれが確実に自分の企画の核となっていたのは事実です。その知識量を数値化することは出来ませんが、せめて時間をかけた体験の上に制作が成り立っていることを伝えられたら良かったと思います。もっと真剣に遊びに行けと言えば、なんなら連れていってしまえば良かった…。何かを作る時は絶対にその人の経験や感じたことがベースになってる。僕が作った企画に関しても、あくまでリアル脱出ゲームの劣化コピーのひとつに過ぎません。そんな素人企画しか知らずにそれをコピーしようとすれば、更なる劣化コピーとなって遊べなくなるのも致し方ないことだったのかもしれません。
僕が相手の知識レベルに立てなかったのがミスです。コレは別に上から見ているのではなく、その分野の知識を初心者に噛み砕くだけの力がなかったという力不足です。
想定していなかったことは、僕が1年間周遊謎を作りたいと言い続けていたせいで、僕の周りの人の知識レベルが上がっていたことです。周りの人間に対してある程度言葉を省いてもやりたいことが伝わるようになっていたことで、伝わるレベルを履き違えてしまっていました。

これを踏まえて、やるべきだったことは、

1.時間をかけた体験の上に制作が成り立つと伝える
2.自分の持っている知識を誰にでも伝わる言葉で言い下す
3.相手の知識量の多い分野を見つけ出し、生かす

特に3が重要でしたが、今回に関してはそれを一切出来ませんでした。好きこそものの上手なれじゃありませんけど、誰にだって好きなものや得意なものがあるはずなんです。僕が謎解きが好きで知識が一定量溜まってたのと同じように担当にもそんな分野があったはずで、それを見つけられなかったのが最大の失敗点でした。きっとその人の得意なものや好きなものと周遊企画を組み合わせれば、その人にしか出ない色の企画ができたはずなんです。つまり、相手のことを深く知ろうとする努力が僕に足りていなかったのかなと思います。結局アイツの好きなものほとんど引き出せなかったし…。ある程度距離のある他人のままやろうとしたのがダメですね。

2.最低ラインを教える

次にいけなかったのが、最低ラインを見せなかったことです。つまり、昨年僕が頑張ったものより先に一昨年以前のスタンプラリーを見せるべきだったという話です。僕の企画に対する外からの評価がどうあれ、昨年1年間を費やしその時出せるベストの力で企画を作り出したと胸を張って言えます。つまり、昨年の企画は当時の僕の最高到達点でした。時間や労力もそれ相応にかけた上で完成したものです。つまり、ハードルが高いんですね。勿論、昨年の企画というベースがあるからそこを踏み台にすれば更に高く飛べますが、そこから飛ばないという選択肢があるのも事実です。その選択肢を提示してあげられなかったのが2つ目の大きなミスだと思います。昨年より良い企画は昨年以上に頑張らなくては生まれてこないのですから。この企画制作もその人の人生の一部でしかないので、力を抜くというのも考え方としてアリなはずでした。まずは、ベースとなるスタンプラリーだけのものの作り方を教え、そこから+αを付け足していく。言ってしまえば基礎の基礎なんですが、完成品しか見ていない引き継がれる者や、初心を忘れた引き継ぐ者には少し見えづらい事実となっていました。なんなら一度普通のスタンプラリーを作らせてしまうのが正解だったのかもしれません。僕はスタンプラリーに対して様々な持論を持っていますが、言ってしまえばただのスタンプラリーです。大学生にもなって作れないわけがないのです。今年の担当がスタンプラリー自体を最後まで作れなかったかと問われれば、自信を持って作れると答えられます。まず、それを作らせて自信に繋げるべきでした。その上でゲーム性を高めていけば良い…。僕も周囲の人も抑えようと思いながら、必要以上に期待を寄せてしまっていたのがよくなかったのだと思います。そんな基礎の基礎をまとめた引き継ぎ資料を作れればよかった。(と言っても、自分はそんな企画作ってないので一から構成しなくてはならないんですけど…)

3.キャパシティを把握させる

これは引き継ぎだけでなく、自分に対してもですけど…。自分のキャパシティを甘く見るのをいい加減やめようという話ですよ。まず、自分がどれだけその企画に時間を割けてその時間内にどれだけの作業が出来るかを把握してから企画をするべき/させるべきでした。見立ての甘さが後々になって苦しめてくるのは絶対です。それはいくら余裕を持って制作してもそうで、絶対に自分に甘えます。それを考慮した上でみてあげれたら良かったなと、もはやコレは理想論でしかありませんが…。自分を買い被りすぎないように少しキツくても他者から評価を下してあげるべきでした。これは企画力の問題でもなければ色が出る問題でもないのですから。ただ自分が嫌われたくないという保身から強い言葉を当てることをしなかったのが純粋にいけなかったな。それもやはり信頼関係に落ち着くと思います。しっかりした関係を築けている人とはぶつかれますから。今回、かなり多くの大丈夫をぶつけられてて、そこから大丈夫じゃないタイミングを見極めて手を差し伸べる方法を見つけるべきでした。これに関しては僕が担当のことをきちんと見れていなかったに尽きると思います。勿論、直接的な助けを求めてもらっていれば救えたというのもありますが…。助けを出しやすい雰囲気にできなかったのもミスですね。僕はずっと担当の企画を僕の色で染めてしまうこと、担当の作ったものであると言えなくなり立場がなくなることを恐れていましたが、結果として発覚が遅れてその事態へと持ち込んでしまいました…。これは大きな反省点であると思います。

まとめ

今回の件で僕がいちばん寂しかったのは、担当の人に才能がないから出来なかったと思わせてしまったことでした。これは断じて違いますっ!あくまで、知識量の差、かけた時間量の差であり才能やセンスなんてものは一切関係のないお話なんです。ただそう思わせてしまったのは事実で、その原因のひとつとして僕の振る舞いも確実に含まれるでしょう。僕に化学や数学のことをやらせてもダメダメなように、それはどの分野に時間をかけたかの違いでしかないのです。〈センスは知識からはじまる〉ですね…。もっとうまく光る場所を見つけ出せればよかったのですが…。ここまで書いて、誰かに繋ぐということは、自分が動く以上に難しくて手間のかかることであると気付きました。そもそもやり逃げで人が消えていく、うちの組織体系が間違ってるんじゃね?バランスをとっていくのは難しいですね…。まぁ、この経験を生かして次からはもう少し上手にイベントを引き継げるといいなと思います。まぁ、僕の場合一度やれたらOKだし、自分たちが楽しめることが最優先だと思っている節があるので、継続性を考えずに作って自分が消えるタイミングで潰すっ!ってのも1つのわかりやすい解なのかなって思っていますけどね…。もし魅力的なイベントを生み出せたら引継ぎたい民が現れることもあるかもしれないし…。そんなことを考えれば非常に良い経験をさせていただいたなという印象です。ありがとうございました。これからも様々なイベント作ってくぞ〜!

おしまい!(以下、少しだけおまけが続きます。)

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おまけ

何故直前にテコ入れをした時に企画を刷新したのか。それは、既存のものを捏ねくり回すより新規で作ってしまった方がしがらみが少なく作りやすかったからに他なりません。微妙なラインまで固まってしまっている企画はやっぱり扱いづらかったのです。それに加えて、僕のモチベーションというものもありました。時間をかけるのであれば、ある程度自分がワクワクするものでなくてはやっていけなかったし、自分が関わって世に出すものなら一定ライン自分が満足できるものでなくては納得いきませんでした。つまりは僕のエゴです。最低限のものであれば、ここまでする必要がなかったのも事実です。それを分かった上で今の限界に挑戦してみたくなってしまっただけなんです…。結果として担当に良くないイメージをつけてしまったこととなり反省しています…。ごめんなさい。

バトンを渡す距離の取り方って難しいですね…。

ほんとのほんとに、おしまい。

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