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幻影記録 完結済み

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ホラー雑誌編集者として働く守美日和は、ある日、差出人不明の手紙を複数受け取る。誌面上で何度も呼びかけるが返答はない。 名前のない語り手によるショートストーリー。
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記事一覧

【SS】幻影記録 終

守美日和は、ラップトップのキーボードを叩く手を止め、手紙の束に視線を移した。 机上には、…

東西 七都
1か月前
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【SS】名前のないディストピア

ぼくたちには名前がない。 いつから。 おそらく、生まれたときから。 名前がないだけではない…

東西 七都
1か月前
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【SS】境の木

大学に行くには、電車を乗り継いで通っていた。 最寄りの駅までは徒歩で歩いていく。 大学へ進…

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東西 七都
1か月前

【SS】道を外れる

その言葉を聞くと、湿っぽく肌にまとわりついてくるような、一種異様な感覚を覚える。 食虫植…

250
東西 七都
1か月前

【SS】列に並ぶ

その日、あたしは推しがコラボしたクレープ屋さんの列に並んでいた。 クレープ屋さんの前には…

東西 七都
1か月前
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【SS】箱を開ける➁

さとり石? そんな石があるとは、今まで聞いたことはない。 これでも、図書館や動画サイトで怖…

東西 七都
1か月前
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【SS】箱を開ける①

わたしの家には昔から、開けてはならないと言い伝えられてきた箱があった。 それは、わたしが子どもの頃から既に存在していて、和室の桐箪笥の引き出しの奥にある黒の漆塗りに蒔絵が描かれた、いかにも高級そうな箱である。 その箱の中に何が収められているのか、わたしは知らない。 けれども、親からは開けてはならない、と強く言われていた。 なぜ、箱を開けてはならないのか? まるで、絵本の浦島太郎のように、箱を開けたら一気に老け込んでしまう、そんな状況に陥ると言うのだろうか。 いや、さすがに現

【SS】顔のない愚者

まただ。 私は研究室の椅子から立ち上がる。 研究室には私以外に人はいない。 けれども、私に…

東西 七都
1か月前

【SS】残業

職場には一つの噂があった。 それは一人で残業していると、必ず幽霊をドア付近で見る、と言っ…

東西 七都
1か月前

【SS】ペンパル

ずっと前に、英語の勉強のためにペンパルサイトを訪れたことがある。 そこでは、名前とメール…

東西 七都
2か月前
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【SS】ハーブ園

その日、わたしは大学で取るべき講義もなく、彼氏と一緒に植物園に来ていた。 植物園と言って…

東西 七都
2か月前
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【SS】異世界エレベーター

異世界エレベーターという都市伝説があるのを聞いたことはないだろうか。 この都市伝説は、一…

東西 七都
2か月前

【SS】くじらの悲しみ

その日、東京湾に一頭のくじらが座礁したとニュースで持ち切りだった。  くじらは住んでいる…

東西 七都
2か月前
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【SS】けんか別れ

その日は小雨の降る土曜日の朝だった。 週五勤務を終えて、ゆっくりと二度寝できる。そう思いながら俺はベッドに横になっていた。 だが、あいにくその目論見は長くは続かない。 甲高い悲鳴が隣の部屋から聞こえた。 続けて、食器の割れる音。 勘弁してくれ、と思いながら布団を頭の近くに寄せる。 身を縮めるようにして、騒動が長く続かないことを祈った。 だが、なおも怒声が隣室との壁を通して聞こえる。 女の泣き声が上がる。 どうもカップルの別れ話が、喧嘩に発展しているようだ。 勘弁してくれ