見出し画像

仮説段階でも議論できる文化がいいな

この記事は、ぼくがstand.fmで配信している音声コンテンツを書き起こし、修正・編集したものになります。

こんにちは、こんばんは、井口です。
今回のツイートはこちら。

これ、140文字ちょっとでまとめちゃったのけっこう乱暴だったなぁと思いまして、補足します。

仮説とは

まず、デザインをどんなデザインにしようかなっていうの考える際、これはよく言うんですけど、情報設計というか、何をコンセプトにどういうどの辺を目的とするのかな、とかいうところからいろいろ考えるわけです。

目的はひとつだったとしても、その目的を達成するためのアプローチって多分いくつかあるんですよね。
それがここでいう「仮説」です。

画像1

でもクライアントさんに何かしらを提出せねばならない以上、その中から「これがいいかな」というのを、1案とは言わないにしても絞り込んで作って、デザインとして表現にして提出するわけです。

どうしても表現されたもので評価されてしまう

これ、なぜ絞りこむのかって、まずそもそもの話でいくと、ぼくたちは、「デザインすることを請け負う」っていう事業モデルなんですよね。そうでありたくない気持ちもあるけど、どうしてもそういう認識をされています。

なので「なにかしら表現されたデザイン」を持っていく必要があるわけです。でもね、正直な話、いくつも案を作る時間もリソースもないので、絞り込んで作るしかないわけです。

そして、「デザインをする」っていう行為のなかでも、課題解決に向けていろいろな思考を行うことが大きい部分を占めるにも関わらず、最終的なアウトプットで評価されてしまうわけです。まぁ、うん、まぁ当然なんですけどね。

レストランとかで途中の状態を評価するっていうことはないですもんね。注文してできあがったナポリタンがおいしいかどうかで判断しますもんね。

画像2

でもホントの議論するポイントはそこじゃないこともある

それはそれでも仕方がないんだけれども。ほんと言うと、そのできあがったナポリタンの評価って、おいしいのはもちろんなんだけど、そのレストランでいい時間が過ごせたか、幸せを感じることができたか、みたいなところのほうが大事じゃないかって思うわけです。

なので、そのデザインの見栄えがいいか悪いかじゃなくて、それって、どんな効果を生み出したか、が本来あるべき評価のポイントなんですよね。

なんだけれども、どうしてもその作ったものそれ自体で評価されちゃう面があって。デザインがよかったね、悪かったねっていう、その見栄えの話に終始しちゃうんですよ、デザインを見せちゃうと。

究極ね、効果なんてやってみないとわかんないから、仕方ないですよね。やっぱりデザイン見れば「それが好き/嫌い」っていう反応はしちゃうじゃないですか、にんげんだもの。

なので、そこをなんとか目をつぶってください、このデザインが望んだ効果を出しそうかどうかだけを議論してください、っていうのもかなり難しいお願いですよね。

画像3

だから仮説段階で提案したい

なので、そうなってしまうぐらいだったら、こっちの方向の課題解決、ほんでこっち方向の課題解決、さらにこっちの方向の課題解決、みたいに仮説の状態で、いくつか提案したほうがいいのではないかって思うんです。

画像4

もちろん何かしら表現物がないと判断のしようがないような気もするので、たとえば手描きのラフとか、それこそワイヤーフレームとかそういう状態で見せて、「あぁこれってこういう方向で進めたら良さそうだね」みたいな。そうしたら「いや、ここ文字をもうちょっと大きくして」って言う表現の話にならない気がするんです。デザインがもたらす効果の話にフォーカスしやすい。

「あ、こういうことを言いたいんだね」とか「こういうこと言うと良さそうだね」っていうデザインの設計、情報設計の話ができそうな気がするんですよね。

でも相互理解大事

それが出せればというか、出せばいいんですけど、「その状態だと判断できません」っていうお客さんが多いんですよ。

もうお客さんの、クライアントさんのマインドが、「よっしゃデザイン見るぞ!」ってマインドになっちゃってるんですよね。なんなら「見栄えの良し悪しを判断するぞ」っていうマインドにもなってるまであるかも。

画像5

だれが悪いとかじゃなくて、もはやそういう文化になっているわけです。だから、その仮説状態のものを出しづらかったりするなぁと思ってて。

デザイナーもデザイナーで、途中段階で出すのってやっぱりイヤなんですよ。「これからもっと良くなるから、この時点でぶつくさ言われたくねえな」みたいな気持ちは絶対あるんですよね。ぼくもあるし。デザイナーに限らず資料とかでもおんなじで、なにかしら作ってる人にはかならずある感情かもしれないですね。なのでお互い様なんですよね。

プロトタイプである。協議している。という共通認識。

でもね、ときどき言うんですけど、そのいま作ってるものが、完成形である必要はないんです。

そもそもデザインとは、最終的にはお客さんとの協議、協業して完成させるものだから、「いま作ってるものってプロトタイプだぞ」ってぼくたちデザイナー自身が思わないといけない。途中だろうが恥ずかしくなんかないし、そこへの注文はしっかり耳を傾けるべき。

画像6

そして同時にクライアントさんにも、そのプロトタイプっていうのを理解してもらいつつ、チェック、判断してもらう。そうすることで完成形に至る過程での合意が得られやすいのではないかなともいます。めっちゃむずい。

途中の修正指示だって、きちんと耳を傾けるけれども、ぶっちゃけ言うことは聞かなくてもいいわけだし。
これも別で言い続けている話だけど、最終的な判断はクライアント側にあるとしても、修正指示を受け入れるか否か、プロフェッショナルな判断をした提案はしてよいはず。

プレゼンテーションの場を判断させる場にしちゃったらダメかなって、近ごろつよく思うんですよね。判断する場にするんじゃなくて、協議の場に本当はしたいんですよ。
そのためには、どーんと完成形を見せて「どうですか?」っていうプレゼンテーション自体が考え直すべきものなのかもしれないですし。ちょっとまだわからないですけど。

画像7

新しい文化の構築を目指したい

こういうのを実現するには、双方にそういう文化を持つことが必要ですよね。ぼくたちの手間はもしかしたら増えるかもだけど、逆に修正の回数は減るかもしれない。

がんばって作ったのに全ボツしちゃったみたいな「デザイナーあるある」、どこにぶつけたらいいかわからない虚しさ、みたいなのも減るかもしれない。

お客さんにとってみれば、見栄えで選んでしまって効果が出なかったっていう最悪の事態は避けれるかもしれないじゃないですか。より効果的で、よりクライアントが満足するクリエイティブにはなりそうな気がするんですよね。

画像8

表現の前に協議・議論をすれば、その項目はおのずと”効果”になるはず。評価軸を好き嫌いにしないとか、良い悪いにしないってのが大事です。効果があるか無いか、ありそうか無さそうか、っていう話をしないといけない。

もちろん議論した、その「効果」を出そうと思っても、表現が追いつかないということも起こり得ます。なのでそこはしっかり制作し修正し、クオリティを求めていくところなんだけど。

グラフィックは仮説が生命線

これはWebだと、ともかく1回やってみて、そこから判断するというような、建設的にできる部分があります。でもグラフィックだと、1度印刷してしまうと、1000部、2000部、1万部印刷されてしまうので、後戻りができないんですよね。だからこそ仮説段階でかなり精度を高くする必要があります。

画像9

あと数字のフィードバックって本当にないに等しい。効果があったかどうかも正直分からない、肌感覚だったりもするから。そういう意味でも精度の高い仮説っていうのは、デザイナー側もがんばらないといけないし、クライアント側もがんばらないといけない、という風に思っています。

まとめ

なので、言いたかったっことは、お互いに仮説状態のラフっていうのでも、「途中段階で見せやがって」とか「これまだまだじゃないですか」みたいな話じゃなくて、途中の、ドラフトの状態を、ちゃんとそれを作ってきたことを評価する文化っていうのを、ぼくたちにも、クライアントさんにも求めてますよ、その状態で見せる勇気をぼくたちも持つ、ということが重要なのでは?というツイートでした。

結局ぼくがやりたいことまとめ

でもラフの状態でね、判断するのってめちゃくちゃ難しいと思うんですよ。想像力が必要です。この想像力ってどうやって身についたかって、結局のところ経験なんだと思います。

ラフの時点で、これよさそうだな、よさそうじゃないなっていうのがある程度見えてくる。これって経験だと思うんで。それをクライアントさんに求めること自体がそもそも難しいと思います。

なので、だからこそ、ぼくはお客さん側に立ちたいんですよ。クライアント側に就職したいとか、そういう話ではなくて。伴走したい。
お客さんの立場で、デザイナーが作ったものを判断するっていう仕事をしたいなぁっと。そういうクリエイティブのディレクションだけ請け負う、みたいなことができないかなーってずっと思ってるんですよね。

画像10

なので、実際デザイン作る、制作を請け負うのは弊社じゃなくてもいいんです。あえて他者視点、客観視点にするためにも、他社さんのデザイナーにやってもらうっていうのもすごくありです。

これは、まだやったことないんで、できるかどうかも分からないんだけども、このようなビジネスモデルが成り立つなら、ぼくたちもお客さんにとってもwin-winの状態、そこにもし他社のデザイナーさんが入ったとしても、win-win-winの状態っていうのが作れるんじゃないかな、っていう気がしてまして。それを模索したいなんて思っています。

おわり

ー<いぐちMHzはこちらから>ー


いいなと思ったら応援しよう!