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リモートワークで一番難しいことは、「忖度」かもしれない。《重職心得箇条第15条から学ぶ》

毎朝15分間の言志録勉強会。夏の特別企画は、同じく佐藤一斎が著した重職心得箇条。幹部社員へのマニュアルだ。

本日のテーマは、第15条 意思疎通をしやすい組織づくりの大切さ。

風儀は上より起こるもの也。人を猜疑し蔭事を発(あば)き、たとへば誰に表向き斯様に申せ共、内心は斯様なりなどと、掘り出す習いは甚だあしし。上に此の風あらば、下必ず其の習いとなりて、人心に癖を持つ。上下とも表裏両般の心ありて治めにくし。何分此の六(かしみを去り、其の事の顕(あらわ)れたるままに公平の計ひにし、其の風へ挽回したきもの也。

組織は上から腐るもの


管理職(重職)になるには長い年月が必要だった。そのため、ようやく辿りついたその地位を固守するため、部下を疑い、あら探しをする場合がある。

何故そうなるかというと、能力主義と言いながら、日本企業の場合、忖度力の方が求められる場合が多いから。多くの幹部社員が、「忖度力」で出世してきているため、自分が忖度される立場になると、部下にもそれを求めるが、部下がそれをしないと、自分をバカにしているのではないかと、猜疑心が強くなる。

「忖度」とは何か。

上の人が何を期待しているかを知っていて、言われなくても黙ってやることが忖度だ。上の者がどういう行動に喜び、どういう行動を嫌がるか、知っているから、上司が何も言わないでも、それを黙って行う行為。

例えば、明日大事な会議がオンラインである。上司は恐らく出社して会議に臨むだろう。それを忖度できたものは、早めに行って準備を行う。

国会で問題になった「忖度」も、「大臣から言葉で求められなくても、官僚が忖度して9億5000万円の土地を1億3000万円で売却した。」という話。

そのため、上司である大臣には何のお咎めもなく、その罪は法律的には官僚(部下)にある。上司は「アイツが勝手にやった」と一言いえばよいだけ。
トカゲのしっぽを簡単に切り落とすことが出来る便利なシステムで、自分の立場は安泰である。

それではなぜ、官僚(部下)はその罪を敢えて被るかというと、忖度しない限り出世できない社会構造が永く続いてきたからだ。組織が老朽化してくると、「忖度」出来るかどうかが、出世の重要ファクターになったりする。

上司の法律違反ですら、部下は忖度して実行する。なぜかというと、「上司が口に出して言えないことを、忖度して実行してくれる部下」は高く評価されるからだ。
それが蔓延した社風になると、「忖度」は強要されるものではないため、逆に取り締まることが出来ず、管理できなくなり、組織のコンプライアンス違反に繋がる。
 
「組織は上から腐るもの」とはこのような意味なのだ。

「忖度」して来た者が出世すると、今度は部下に忖度を求める。

そのため、忖度出来ない部下に対しては、やり方が違うと彼らを疑い、報告がないと、仕事のやり取りがイチイチ気になり、色々と手を回して、やり取りの一部始終を聞き出そうとする。
最初から疑っているものだから、それを裏付けるものが見つかるまで、執拗に行うため、人間関係が瓦解して、組織は完全に硬直化してしまうのだ。

リモート化による忖度文化の瓦解

忖度の内容も変化する。
忖度とは、「あ・うん」の呼吸や目配りや気配りの究極芸なので、仕事もリモート化してくると、「上司が喜ぶこと」とは何か、その推測が難しくなる。

上司自体が出社しないケースも増えると、益々「忖度」が出来なくなる。
これはリモート化の良い面かも知れない。しかし、この「忖度文化」を愛する上司たちは、「やはりリモートでは限界だ」と言うだろう。

忖度文化から脱却できれば良いのだが、自分自身「忖度力」で出世してきた人たちは、当然の事ながら面白くなく、隙があれば昔に戻そうとするだろうが、時代の流れには逆らえず、忖度のないビジネス環境が誕生するだろう。

最後に、この「忖度文化」を封印するヒントとして、本日のプレゼンテーターの後田博幸氏は、言志録の54条~56条をあげた。
研ぎ澄まされた感性に唯々脱帽。
これを選んだと言われた時、どうしてなのかと一瞬理解できなかったが、こうして文章にまとめてみると、極めて意義ある条である。

酒三則
酒は穀こく気きの精なり。微すこしく飲めば以て生を養う可べし。過飲して狂くに至るは、是れ薬に因って病を発するなり。にんじん、附子、巴豆、大黄の類の如きも、多く之を服すれば必ず瞑眩を致す。酒を飲んで発狂するも亦猶お此くのごとし。

酒の用には二つあり。鬼神は気有りて形無し。故に気の精なるものを以て之を聚む。老人は気衰う。故に亦気の精なる者を以て之を養う。少壮気盛さかんなる人の若ごときは、まさに以て病を致すに足るのみ。
勤の反を惰と為なし、倹の反を奢と為す。余思うに、酒能く人をして惰を生ぜしめ、又人をして奢を長ぜしむ。勤倹以て家を興す可べければ、則ち惰奢だしゃ以て家を亡ほろぼすに足る。蓋けだし酒之れが媒なかだちを為すなり。 (言志録 第54から56条)

忖度という悪しき習慣も、考えてみたら どの程度かという量の問題である。
「他人への気遣い」「上司が喜ぶことを推測して、心がけること」は、
日本人の美徳でもある、心配りだ。
人の心が和らぐ組織の潤滑油でもある。

しかし、気配りの度が過ぎて、上司の喜ぶことを推測し、それが社会の規範に反している事でも行ってしまう「超過忖度」にまで至ってしまうと、企業(組織)にとっては、病が発症したのと同じ事になる。
例えば、会社の不振をコロナのせいしているが、忖度病という持病のあった会社は、忖度に頭を使っていたため、思考停止して、病状が一気に悪くなっているケースもあるのではないだろうか。

気配りという日本人の美しい美徳も、その度が過ぎると自分の中での正しい判断力が出来なくなる。

これはまさに酒に酩酊しているのと同じであり、その度が過ぎると酔狂し、自分のやっていることが全く分からなくなってしまうのだ。

それではどうしたらよいのだろうか。

忖度とは形のないもの。無形のサービスだからこそ、上司が喜ぶことを推測して、それを理解した上で、上手に交わし、ここまでは出来ないと思った事は、実行しないことである。

特に上司が年老いている場合、忖度して欲しいと願うものだが、それを理解してあげた上で、言葉だけで上手に交わしてスルーすること。

それが出来ない者は、忖度すらしない方が良いだろう。

忖度とは面白いものであり、一度忖度した結果、上司に認められて出世したりすると、孫子の兵法でも行ったような、驕りの心理状態に陥ってしまう恐ろしさがある。酒に酔うのと同じこと。

忖度は心理作戦なので、軍略を行ったような錯覚に陥る怖さがあるのだ。

これを防ぐには、忖度なんかで出世しようとする怠惰な気持ちを持たないこと。

大酒で出世街道を絶たれる人が多いように、忖度しすぎて出世街道を絶たれる場合も多いのだから。


一般社団法人 数理暦学協会
山脇史端

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