腸腰筋滑液包炎|スクワット時の股関節痛
クロスフィットを嗜むAさん(40代男性)の相談は左股関節前面の痛み。
久しぶりのワークアウトでバックスクワット、スラスター(フロントスクワットからのプッシュプレス)をしこたまやって痛めたとのこと。
普通にしゃがむ程度ではさして痛まないのだけど、多少の重り(30~40)を担いでしゃがむと股関節の付け根を前から後ろへと突き抜けるような痛みが走るといいます。
この場合、股関節インピンジメントという故障を疑います。
経験上、内転筋・小殿筋・外閉鎖筋・ハムストリングス・腰方形筋・起立筋あたりの短縮を解くことで股関節の衝突を外すことができますが、急性期の炎症をともなっていたりすると直後効果としての除痛には至らないケースもあり得ます。
その場合はあるていど股関節の可動域は広がるけど、やっぱり深く曲げきったあたりが痛むといった結果に行き着きます。
Aさんの股関節はまさにそれ。
上記の筋群へ手入れをしたところでボトムまでしゃがみ切れはしましたが、やはり股関節の深部が痛むといいます。
この結果から、亜急性期(炎症が終息したばかり)の問題でもあるのだろうと、もう一度詳しく調べることに。
すると、左股関節の前面、ちょうど腸腰筋が恥骨を乗り越えたあたりに熱を帯びた個所が見つかりました。
深部を探ると腫れて膨らんだ腸骨筋滑液包が見つかり、そこを押すとAさんかなり痛がります。
Aさんの痛みの原因はどうやら腸骨筋滑液包炎のようです。
この故障は本来まれな故障なのですが、私の臨床ではそう少なくない故障です。患者さんの多くは深いスクワットをするウエイトリフターやパワーリフターです。
この故障の場合、もう一手試す価値のある治療があります。
それは鍼治療。
それも、極力太くて長い鍼での鍼治療。
何をするのかというと、水を貯めてぷっくり膨らんだ腸骨筋滑液包に穴をあけて水を抜くんです。
ちょっと乱暴に聞こえるかもしれませんが、これが結構よく効くから面白い。
滑液包にはたくさんの知覚神経が配置されていて、腫れて水を貯めるとちょっとした圧迫でも痛みを発します。
でも、滑液包の水を抜いたらどうでしょう?
水の抜けた水風船のようにフニャフニャになった滑液包は多少圧迫されても痛みを発っしなくなるんです。
この方法であれば、かなりの除痛効果が期待できます。
こうした手法は外側の弾発股や肩峰下滑液包炎でもよく使う手法で、鍼か注射器でしかできない処置となります。
さてAさん。
上述の方法をとることで、しゃがみ切った瞬間、いい笑顔を見せてくれました。
無事除痛に成功したようです。
あとは水のたまる根本原因となる股関節の不安定性への対処として、ちょっと特殊な腹筋運動と大殿筋の体操を覚えていただいて治療を終了しました。
股関節の安定化に使ったエクササイズの資料はこちらです。
エクササイズの前後でスクワットをしてみてください。
股関節・膝・足首が深くクリアに動くようになるのを感じることができるはずです。
故障の回復・予防にお役立ていただけますので是非ご覧になってみてください。
【ダメージが大きいケースやリハビリの初期に使うエクササイズ】
【ダメージが軽いケースや予防目的で使うエクササイズ】