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「イノベーション=技術革新」の幻想を覆す『イノベーションの競争戦略』

今回は、『イノベーションの競争戦略』をピックアップします。

「日本企業でなぜイノベーションが生まれないのか?」という議論は、以前より盛んに行われています。本書では、いくつものビジネスの成功事例と失敗事例を研究する中で見えてきた、「イノベーションの本質」を明らかにします。

イノベーションへの4つのステップ

本書では、イノベーションを「技術革新」と捉える従来の考え方ではなく、以下のように定義します。
「イノベーションとは、これまでにない価値の創造により、顧客の行動が変わること。」
そして、イノベーションの創出プロセスは、以下の4つのステップで表されます。

アイロボット社のロボット掃除機「ルンバ」を例に、各ステップを見てみましょう。

ステップ1:消費者のドライバー(変化)を捉える
共働き世帯の増加という変化を背景に(社会構造)、家事からの解放や効率化を必要とする人々を想定(心理変化)。そこから、顧客の家を理解し、部屋を綺麗にするロボットの技術開発に注力した(技術革新)。

ステップ2:新しい価値を創造する
「人の代わりに掃除をすることで、家事から解放された時間を提供する」という新しい価値を創出。

ステップ3:顧客の態度が変わる
「掃除はロボットに任せてもよい」という価値観を生み出す。

ステップ4:顧客の行動が変わる
「掃除は外出中に行なう」「ルンバが掃除をしやすい家具を揃える」といった顧客の行動変容を引き起こし、家具業界のトレンドにも変化をもたらした。

先行企業の価値を磨き上げ、追い越したメルカリ

フリマアプリの国内最大手企業・メルカリ。自誰もが日常的に中古品を買い、中古品を売るというライフスタイルを世の中にもたらしたという点で、メルカリはイノベーションを起こしました。
しかし、メルカリはフリマアプリと呼ばれる領域においてイノベーターではなく、フリル(現ラクマ)から1年遅れでの登場でした。なぜ後発者のメルカリがフリルを追い越し、現在の地位を確立できたのでしょうか?

その理由の一つに、「フリマアプリは難しそう、トラブルが心配」と思うライトユーザーをどんどん取り込んだことが挙げられます。

匿名配送や全国一律送料などの導入、 トラブルが起こった際の入金停止や商品代金補償を行った結果、個人間取引・フリマアプリへの抵抗がなくなり、誰でも簡単に安心して販売できる状態を作りました。ユーザーおよび売買量が増えたことで、 「自分にとっては不要品でも誰かが買ってくれる」という態度変容をもたらし、「不用品は捨てずに売る」という行動変容に成功したのです。

フリマアプリという価値を創出した第一人者はフリルでしたが、「何でも簡単に安心して売れる喜び」 によって、その価値を磨き上げ、顧客の行動変容を起こしたのは後発者のメルカリだったのです。

「イノベーション=技術革新」幻想を覆す1冊

世の中に存在しなかった画期的な発明やサービスは、企業におけるイノベーションの必要条件ではないということである。それよりも新しい製品・サービスを消費者や企業の日々の活動や行動の中に浸透させることこそがイノベーションの本質である。 我々はこれを行動変容と呼ぶが、これこそが企業がイノベーションを起こすためのカギとなる。そのことを皆さんに知ってもらいたいという想いが本書執筆の動機となっている。

「はじめに」より抜粋

本書は、日本企業がイノベーションを起こしていくためのメカニズムとノウハウを学べる1冊です。多数の事例をヒントに、イノベーターへの一歩を踏み出してみませんか?


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