本と大学と図書館と-1- 四六答申 (Fmics Big Egg 2018年9月号)

 本は,図書,雑誌,新聞,インターネットまでを含めたメディア全般を広く捉えています。同様に,大学は,就園前から学校,社会,地域までの生涯に渡る教育の全般です。また,図書館は,出版流通から書店と読者,更に,公民館や児童館などの社会教育施設など,「本」が置かれている施設や場所も含めたシステム全般です。

 改めて,初等教育から高等教育のあり方を俯瞰する際,47 年前の『教育改革のための基本的施策:今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について』(中央教育審議会答申 1971 194p)が参考になります。四六(よんろく)答申と呼ばれ,学校教育全般の施策のあり方と背景が丁寧に記述されています。

 Google でこの答申を探すと,文部科学省「過去の中央教育審議会」から,審議の経過と諮問理由説明を除いた,本文と付録の一部が閲覧できます。インターネット書店でもあるアマゾンからは,発行当時の 350 円に近い価格で購入することができました。参照したい資料を,自宅からインターネット閲覧でも,古書でも入手できる,ユーザー的には便利な時代になりました。大学図書館の図書や雑誌の所蔵状況を検索できる「CiNiiBooks」(サイニィ・ブックス)では,全国約 950大学・短期大学の図書館の数割が所蔵しているだけです。

 答申には図書館への直接の言及はありませんが,現代の図書館にける重要案件である,情報化社会(a),生涯学習(b),ラーニング・コモンズ(c)に繋がる記述があります。(a)高度技術化社会や社会の情報化への対応(p.128,136),(b)家庭教育・学校教育・社会教育の相互補完的役割を総合的に再編する生涯教育(p.12-3,126-7),(c)少人数での演習・実験による学生・教員の相互啓発(p.60)です。

 27 年後の『21 世紀の大学像と今後の改革方策について:競争的環境の中で個性が輝く大学』(大学審議会答申 1998)では,「教室外における主体的学習の学習環境整備のために,図書館の座席数,必読図書の所要冊数の確保,開館時間や開館日,貸出期間などについて施設・設備利用面の整備への留意」を求めています。

 また,『大学図書館の整備について(審議のまとめ):変革する大学にあって求められる大学図書館像』(2000 科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会)では,大学図書館の教育活動への直接の関与を期待し「情報リテラシー教育では,図書館職員が教員を兼任するなどして、直接授業を担当することも視野に入れるべきである」(p.7)としています。

 現在の教育施策のルーツを探るため,四六答申の再読には大きな意味があるでしょう。

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