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湘南モノレール50年の軌跡~ジェット コースター並みの迫力

皆さんは湘南モノレールをご存知でしょうか。残念ながら、同じ湘南のローカル路線である「江ノ電」に比べると知名度が限られており、ご存知ない方も多いことかと思います。しかしながら、世界的にも珍しい懸垂型のモノレールで、わずか全長6.6km、およそ14分の路線ながら、海あり山あり、高低差あり、龍のように曲がりくねった箇所もあり、最高速度も75kmでテーマパークのライド並みに楽しい乗り物です。その「湘南モノレール」の1971年の全線開通以来50年の歴史と魅力をここでまとめてお伝えします。

1.湘南モノレール建設の4つの当初の目的とその目的が達成されたのかの検証
1)将来の都市モノレール整備促進に向けた実験線。
  →1972年のモノレール関連法令制定から13年後の1985年に北九州モノレ
   ールが開業。その後、千葉、大阪、多摩、舞浜、沖縄とモノレール路
   線の建設が進められた。
2)湘南モノレールは懸垂型サフェージュ式モノレールで、その方式を広め  
  る。→1988年3月に千葉に同じサフェージュ式のモノレールが開業。
     しかしながら、それ以降は広がっていない。
3)沿線住民の通勤・通学の足
  →地元の足として定着している。1990年以降、ほぼ一貫して年間1千万
   人規模の利用者数があり、また、定期割合は常に40%代以上をキープ
   している。
4)江の島や鎌倉への観光の足
  →コロナ禍の影響をいったん度外視するならば、まだまだ改善の余地が
   ありそう。鎌倉市への観光客数が1千8百万人~1千9百万人台、藤沢市
   もほぼ同数が来ていることを考えれば、観光客の誘客という意味で、
   伸び代があるのは明らかである。この点については、今後、地元企
   業、商店街とのタイアップを進めるなどしながら、企画や情報発信の
   あり方などについて改善を図っていくことが、湘南モノレール企業内
   でも検討されている。

2.三菱電機をはじめ三菱グループ企業3社と京浜急行電鉄、
  3社の製鉄会社の出資で1970年3月7日に開業。2015年5月に、みちのり
  グループへ株式譲渡を経て現在に至る。みちのりグループは、数々
  の過大な債務を背負った事業者を再生させた冨山和彦氏が立ち上げた
  経営共創基盤が100%出資して2009年に立ち上がった会社で、福島交通
  茨城交通と岩手県北自動車を事業再生した会社である。
  2015年に湘南モノレールの社長に就任した、双日(元日商岩井)出身の
  社長のもと、さまざまな施策がなされた。
  1)新造車両5000系が、新体制発足後の2015年11月、翌2016年2月、同
    年5月に新編成の投入がなされた。2016年投入の7編成目は、
    乳がん撲滅の啓蒙活動を進める「ピンクリボンかながわ」を応援
    すべく、車体をピンクリボンでラッピングし、「ピンクリボン号」
    としてデビューした。
  2)大幅なダイヤ改正を実施:2016年6月1日より、平日21時から23時ま
    での夜間帯と休日(土日祝)の7時から9時、19時から21時の時間帯
    において、これまでの15分間隔から7.5分間隔に大幅増便。結果、輸
    送人員に占める定期割合が増加。
  3)2018年4月1日より交通系ICカードのPASMOが利用できるようになっ
    た。
  4)2018年4月1日より湘南江の島駅の新駅舎の供用を開始した。バリア
    フリー化とPASMO導入を同時に実施。

3.湘南モノレール沿線の魅力
  湘南モノレールは、大船から江の島へのアクセスとライドの楽しみのみ
  ならず、沿線に数々の魅力があります。そのいくつかをこちらで紹介
  します。
  1)江の島には、天女と五つの頭を持つ龍のロマンチックな「天女と五
    頭龍」
伝説があります。昔、深沢の底なし沼に、「五頭龍」という
    龍が棲み、様々な災いをもたらし人々を苦しめていました。ある
    時、海底から島がわき起こり、天女が舞い降りました。その美しい
    天女に恋をした五頭龍は結婚を申し込みますが、これまでの悪行か
    ら断られます。そこで五頭龍は悪行を止め、改心し善行を尽くし、
    天女と結婚することができたと伝えられています。
    天女は江島神社に祀られ、龍は江の島の向かいにある龍口明神社に
    祀られています。龍口明神社は湘南モノレール西鎌倉駅より徒歩5
    分。一説によると「龍口明神社」に参拝してから、「江島神社」 
    に参拝するのが習わしと言われているので、江の島に行く前に
    湘南モノレール「西鎌倉駅」で途中下車することをお勧めします。
  2)富士見町から湘南町屋間のトリビア:源頼朝の隠し湯と言われた
    「山崎園」跡地があります。また、かつて湘南町屋の駅前に
    「町屋荘」という旅館があったそうです。
  3)湘南深沢-西鎌倉間には、勾配が66%、旧国鉄の最難所として知ら
    れた信越本線の碓井峠と同じ数値の区間がある。
  4)片瀬山-目白山下-湘南江の島ルート:ダイヤモンド富士のスポッ
    トである富士見坂、また、昭和2年開業幻の江の島龍口園遊園地の
    跡地を訪ねてみては。
  5)2019年11月に湘南江の島駅で開催された「路上体験フェス」:
    廃車になった車両の座席の取っ手とか、行先表示板とか、そう
    いったものを集めて出品するイベント。コロナによって、中断され
    たが、次回の開催をこうご期待!

 4.今後の湘南モノレールの展望
  1)湘南深沢・目白山下駅のバリアフリー化:特に深沢駅は、
    増改築を含め、2028年(現状では最低2年延期)に予定されて
    いる市役所移転に間に合わせる必要があります。
  2)村岡・深沢の可能性:東海道線の大船-藤沢駅間に新設開業予定の
    村岡新駅を中心に、村岡(藤沢市の国鉄湘南貨物駅跡地 約8.6 ha
              と深沢(鎌倉市のJR鎌倉車両センター跡地など 約31.1 ha)の開発案件
    があります。
    鎌倉市で検討が進められているビジョンによれば、2028年度
    を目途に(現状では2030年度以降)鎌倉市役所が深沢地区に移転
    し、周辺の地区が開発される計画になっています。このエリアに
    大規模な施設や住宅などが建設されれば、モノレールの利用者が
    激増し、現在の大船駅や湘南深沢駅ではホーム等のキャパシティが
    足りなくなるのは目に見えており、駅の増改築が必要になる。
    また、湘南モノレールは、交通事業者として、村岡・深沢エリアの
    中を移動する交通手段や交通情報の提供などを行っていくことが考
    えられます。この近未来都市での人々のモビリティはどのようなも
    のになるのでしょうか。想像するだけでもわくわくしてきます!

    前社長の尾渡氏が、新しい街の開発が、市の抱える課題解決に
    つながる可能性を提言しております。「鎌倉は山坂の多い土地柄
    であり、若い時に高台の住宅地に住まわれた方が、高齢になると
    買い物にも苦労されるケースが多々あると聞いてます。そうした方
    が新しくできる深沢の街に引っ越せば、最先端の医療やモビリティ
    がある。逆に高齢の方が引っ越された後の住宅地は、若い方々にと
    って魅力がある住宅地にリニューアルする。こうした、より住みや 
    すい場所の選択肢を用意するという施策を行うことで、市全体の
    新陳代謝が進むのではないでしょうか。」
     また、「私が夢見ている案にすぎませんが、JR村岡駅の付近に、
    現在工事中の「横浜環状南線」の支線をつないで羽田空港、横浜港
    や都心と高速道路で直結させてはどうでしょうか。そして、JR村岡
    駅の周りに、バスターミナル、大型駐車場とホテルを建設すれば、
    神奈川県のど真ん中に一大交通ハブができます。大型駐車場の一部
    は、大規模なレンタカーやカーシェアリング用のスペースとして利
    用可能です。車をここに駐車して、もしくは、羽田からバスでここ
    へ来て宿泊し、村岡新駅から富士山エリアや箱根、横浜・東京に向
    けて東海道線に乗り換えれば、関東圏内の観光にも非常に便利で
    す。
     こうしたハードの整備を押し進めることにより、日帰り観光地の
    鎌倉や藤沢市を宿泊観光地に変えることによって、医療ツーリズム
    (医療インバウンド)の一大拠点が生まれるはずです。これは、藤
    沢・鎌倉両市にとって大きな財源にもなります。
     さらに、村岡新駅と当社の湘南深沢駅をBRT(バス高速輸送シス
    テム)などで結び、湘南深沢駅前の交通広場(バスターミナル)か
    ら鎌倉・藤沢両市内各方面へのバスを発着させれば、パークアンド
    ライドとして機能し、鎌倉や江の島におけるオーバーツーリズム問 
    題の緩和にもつながると思います。」

    出典:神奈川新聞社発刊
       「湘南モノレール50年の軌跡」森川天喜著
 


     

     

 

 


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