今も色褪せない
平成9年は、フジテレビにとって転換点となる年であった。開局以来、河田町にあった社屋を港区台場に移したのである。
そういえば、この年の月9は高視聴率を記録する作品が多かった。その中でも異色中の異色と言えるのが「ビーチボーイズ」である。
これまでの月9は、ラブストーリーが中心であったが、7月に始まった「ビーチボーイズ」は男の友情を軸に描き、ラブストーリーを端に置いたという点では新しい設定ではなかろうか。
主人公は、かつてオリンピック候補だった元水泳選手の桜井広海(反町隆史)と仕事のミスでエリートコースから外れた商社マンの鈴木海都(竹野内豊)。対照的な生き方をしてきた2人はある日偶然出会い、海沿いの民宿「ダイヤモンドヘッド」に身を寄せる。その主の和泉勝(マイク眞木)は、一緒に暮らしている孫娘の真琴(広末涼子)を東京にいる母親の元に返そうとしていたが、やがて2人の熱い説得により思い直すことになる。
そんな姿を見守るのがスナックのママ、前田春子(稲森いずみ)。実は、婚約者との間に息子がいるのだが、些細なことから別れてしまっていた。第4話では東京に行きたくないとゴネる真琴に、春子が平手打ちを浴びせた際にその理由が勝の口から明らかになったのである。そして、息子が来た時は初めこそよそよそしい雰囲気だったが、息子が帰っていくと母親の顔となって見送った。
それぞれの思いを胸に秘めつつも、ひと夏を過ごした広海と海都。そして、勝はサーフボードを取り出し再び海に繰り出すが、そのまま帰らぬ人となってしまう。その悲しみを乗り越え春子は息子を待つために民宿「ダイヤモンドヘッド」の経営を受け継ぐ。それを見守り、広海と海都は海沿いの町を離れていくのである。
当時の女性たちは、反町派と竹野内派に分かれたが、彼らと同世代の男性たちはワイルドな魅力に憧れを持っていたのかもしれない。
そういえば当時、テレビ朝日の月曜ドラマ・インでは、美内すずえ原作の「ガラスの仮面」が安達祐実主演で、読売テレビ製作・日本テレビ系の月曜10時枠では渡辺淳一原作の「失楽園」が古谷一行、川島なお美主演でそれぞれドラマ化されていた。ガラスの仮面の世界観を観た後にビーチボーイズの男たちに癒され、そして失楽園の濃厚な大人の世界に圧倒された人も多いだろう。平成9年7月当時の月曜夜は想像以上に濃い作品が揃っていた。今思うとすごいラインナップだったように思う。
「この尊さは永遠…」反町&竹野内 『ビーチボーイズ』が「時代を超える傑作」である理由(ふたまん+) #Yahooニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/ef86cab5be4dce6cf24abae34e7d570360cd4034