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20年ぶりの味

こんにちは。
辛いカレーは苦手なとよぞうです。

子どもの頃に母親が作ってくれたカレーって特別なものですよね。
うちの母も高齢になってしまってもう食べられる機会は無いと思ってましたが、今年20年ぶりに作ってくれるきっかけとなった出来事がありました。

田舎で暮らす母に「癌の疑いがある」との連絡を受けたのは3ヶ月ほど前でした。
半年ほど前に血尿があり、かかりつけの病院で検査してもらうと腎臓に腫瘍が見られるとのこと。
腎臓の腫瘍は摘出して病理検査してみないと悪性か良性か判らないので、最善を考えるなら切除することをお勧めしたいという医師の見解でした。

大学病院を紹介してもらい手術に向けて準備した方が良いという周囲の意見に対して「絶対に手術はしたくない」という母。

84歳という高齢で腎臓をとってしまって元気を取り戻す自信もないし何よりも手術が怖いという。
私も病気ひとつしたことのない母が癌になるとはとても信じられない思いだった。

姉や嫁が説得しても頑として聞き入れない。
「手術するしないは自分で決めさせて欲しい」という。
私としても放置した結果腹痛を繰り返したり、排尿障害になる事を考えれば切除してしまった方が良いという思いから説得することを考えました。
しかし母の言い分を聞くうちに、やはり手術を受けてもらうことは難しいかなと思いはじめた。

本人曰く、仮に悪性の癌だったとしても受け入れるつもりだしお腹を切ることなんてしたくない。周りに迷惑を掛けたとしても手術したあと元気を取り戻す自信が無い。
そもそも血尿も半年前の一度だけであとはなんの症状も無いとのこと。
確かに高齢者が癌の手術をするかどうかは難しい判断だと思います。

私は自分の気持ちをありのままに伝えてみた。
「まだまだ元気でいて欲しいし、何より心配でここ何日か眠れない」…と。
すると声のトーンが急に変わり「手術を考えてみようか」と言いはじめた。
おそらく息子である私の健康まで害してはいけないという思いから気持ちが動いたのだろう。
母の愛情に感謝しつつ(気が変わらない内に)早速大学病院へ手術の依頼をすると、手術に向けてより精密なMRIを撮りに来てくださいとのことでした。

再びMRIを撮ってもらい、しばらくして大学病院の医師から「MRIの画像に腎臓の腫瘍がほとんど見られない」との連絡が…
数日後母を連れ病院を訪れ、再度CT撮影するもやはり影はほとんど見られなかった。
結局しばらく経過観察していくことになりました。

病院からの帰り道二人してほっと胸を撫で下ろした。
なんとも人騒がせな今年の夏の出来事でしたが、思いもよらない良い展開になってくれたことへ只々感謝!。

ほっとしたら急にお腹が空いて「なにか食べて帰ろうか」という母に私は「カレー作ってよ」とお願いしてみた。
久しぶりに母と過ごすうちに昔作ってくれたカレーが無性に食べたくなった。


おそらく20年ぶりくらいだろうか、母のカレーは変わらぬ味だった。
最近は少食になった私だけどおかわりもしました。

「まだ楽観視はできない」という医者の言葉はあったけど、母曰く「神様が助けてくれた」とのこと。
ひょっとしたら我が家にも奇跡が起きたのかもしれない。そういうことにしておこうか。
今度何かあったら母の希望どおりにしてあげようと思う。

まだまだ元気でいてください…

来年もまたカレー食べられますように…

そのときは今年の出来事を笑い話にできたら…

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