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80-90年代の少女漫画が己の血肉になっている話

タイトルの通りです。
筆者は1990年代生まれなので、ほとんど世代ではないですが。

人生においてそれなりの頻度でその頃の少女漫画に沼るタイミングがあるのですが、現在その沼の真っ只中に浸かっている最中なので記録しておこうと筆をとりました。
題して「少女漫画とわたし」
※余談ですがこれは大学時代の教授が何かについて意見を述べさせるときによく口にしていた言葉です。「○○とわたし」

最大級の敬意を表して、以下敬称略とさせていただきます。



前置き:現在、そして成田美名子

さて、まず現在進行形で今どこの沼にいるのかというと、成田美名子沼です。
近々、能の舞台をはじめて観にいくこととなり、能といえば『花よりも花の如く』!!!だけど読んだことがない。
もともとCIPHERサイファが好きで、その他もちまちまと文庫で収集し、読まずに温めつづけて現在に至る。だったのを、これを機に一気に履修するぞ〜ということで、ALEXANDRITEアレクサンドライトを読み終わり、今『NATURAL』が佳境、といったところです。

もともと『CIPHER』が好き…と言いましたが、わたしが生まれる前に完結してしまっているので、その好きのきっかけは自分から掴んだものではありません。成田美名子、そして少女漫画との出会いはわたしが小学生の頃に遡ります———。(以下回想)


わたしが少女だった頃:世代を超えた出会い

人生で初めて自分で買った少女漫画を覚えています。
かわちゆかり『ないしょのカウント5』
これもおそらく生まれる前に完結しています。笑
初っ端から世代じゃないやつを手にとってますが、理由は母から勧められたから。別に母も世代ではないし読んでないと思うけどおそらく、母にとって馴染みのある繊細で可愛らしい絵柄だったのではないかと推察します。

母は三姉妹の長女で、わたしの小学生当時、母方の祖母の家には結婚して家を出た母以外の姉妹(叔母)が2人とも住んでいました。大のおばあちゃん子であり、さらに叔母っ子でもあるわたしは、学校が休みのときにはばあちゃんちに入り浸るのが習慣でした。ばあちゃんちには、母三姉妹の少女漫画がたくさんありました。階段を上がって2階のスペース、本棚に並んだ少女漫画。リビングにいないと思ったら大体そこにいる。わたしの定位置でした。

子どもの目から見ても、大人になった今考えても、姉妹は3人とも性格がバラバラで、なにかを共有することなどなく、「個人」「各々」というイメージがありました(勝手にそう思っているだけで実際は違うかもしれませんが…)。なので、少女漫画も「これは誰の」と所有者が明確に決まっていたと思います。

長女(母)の本棚

『ベルサイユのばら』『あさきゆめみし』『ガラスの仮面』『SWAN』『生徒諸君!』etc…
ここに関しては祖母の家の本棚ではなく、半分以上は実家にあったものですが。最年長なので時代を感じます。もはや70年代。
三姉妹の中で一番文系で活字も読むので、それもあって…かどうかは分かりませんがなんというか名作!大河!ロマン!みたいな雰囲気が漂います。
この中でわたしが読んだものは『生徒諸君!』、パラパラと『あさきゆめみし』、なんとなく『SWAN』、くらいなので、ここの少女漫画についてはちゃんと通れていません。もちろん有名なので、オスカルとかアンドレとかマヤとか紫のバラの人のことは存じておりますが。

次女(叔母1)の本棚

『王家の紋章』『悪魔デイモスの花嫁』海の闇、月の影『白鳥麗子でございます!』『ママレード・ボーイ』『花より男子』etc…
本人は最も少女漫画から程遠いような性格(失礼)(失礼?)ですが、一番王道恋愛ものの漫画を多く持っていたような気がします。『王家の紋章』などはキッズには手が出しにくく、その代わり『ママレード・ボーイ』を何度も本棚から拝借しておりました。『花より男子』は高校生のときに譲り受けて読破。それがきっかけで神尾葉子作品を少々嗜みます。
思い返してみると赤川次郎『三毛猫ホームズ』『吸血鬼シリーズ』も叔母1所有だったので、今思えば読書家だったのかな〜とか。(意外)(失礼)

三女(叔母2)の本棚

『小山荘のきらわれ者』『ALEXANDRITE』『もしかしてヴァンプ』『葵学園シリーズ』『口紅コンバット』『やじきた学園道中記』『花のあすか組』『有閑倶楽部』etc…
ついにきました、成田美名子。なんかここだけ列挙が多いな…と感じられたら大正解。ここがわたしの血肉の原点。ここがわたしのアナザースカイ。なぜか一番懐いていて、なぜか顔まで似てきた、それがこの叔母2。趣味も合うということでしょうか。
とはいえですね、学園ものファンタジーものの流れに突如登場する高口里純のヤンキーもの(やじきたもまあ…番長ですが)や、三姉妹全員知ってそうな雰囲気のある『有閑倶楽部』が、果たして本当に叔母2の所有なのかはちょっと…はっきりしないところもあるのですが。
そしたら『CIPHER』もあるやろ!みたいな本棚なんですが、如何せん記憶が曖昧で、ただ確実にレヴァインのドレッドヘアに出会ったことは覚えています。もしかしたら背表紙タイトル読めなかったから記憶に残っていないのかもしれません、『CIPHER』。このときはまだちゃんと読んでおらず、のちに邂逅するとは思ってもいないのでした。
なかじ有紀作品だと『学生の領分』も好きだったし、『やじきた学園道中記』『有閑倶楽部』は気に入った話だけを何度も読み返していた気がします(なのでストーリーを把握できていません笑)。ホラーが苦手なので、当時は有閑ホラー回を読むのにもビビり、表紙で判断して避けてました。笑

なかじ有紀
成田美名子橘裕御三方は、もう少し成長してから作家買いするようになります。恋愛が主軸にくる王道少女漫画もいいのですが、主人公が男の子の青春もの、ちょっとやんちゃしてるような学園もの、ファンタジーや海外の雰囲気、みたいな要素が昔から好きで、小学生のわたしにとっては憧れだったのかもしれません。なかじ有紀『小山荘のきらわれ者』と、『エイリアン通りストリートから『NATURAL』までの成田美名子作品は、文庫版で今の自分の本棚に並んでいます。

成田美名子作品、小学生当時読んでいないならなぜ再燃…というところなんですが、おそらく大人になってから『CIPHER』で出会い直した、と、思います、多分。白泉社の周年の何かしらではないかと予想。絵が美しすぎるのと、海外が舞台のストーリーに惹かれて、叔母2の本棚を思い出して猛烈に読みたくなった記憶があります。ふんわりと。


わたしの成長と少女漫画:ちゃおからフィーヤンへ

ここまでは主に母三姉妹の本棚、つまり他人の本棚の話でしたが、じゃあ自分の本棚はどうだったのか。もちろん、自分の世代の漫画もその都度読んでいたし本棚にありました。

小学生(わたし)の本棚

小学校中高学年になったわたしは、ちゃおっ子デビューを果たしました。初めての月刊誌です。母三姉妹の本棚の前に入り浸る生活を送りはじめたのもこの頃だったと思われます。
当時は『りぼん』『なかよし』『ちゃお』の三國志時代。なぜに『ちゃお』が選ばれたかというと、仲良しの友人が読んでいたから、一番子ども向けだから。『りぼん』『なかよし』はどうしても少しお姉さん感があって、手を出すのを躊躇いました。(と言いつつ付録で選んだ可能性もあります。CM効果かも。)
『ミルモでポン!』『ブリリアントな魔法』『エンジェルハント』などが連載中で、この3作品はコミックスを集めていたし作家買いしていました。なによりブリマジが大好きで、ここで初めて小学生が恋愛もののロマンチックさを学びます。宮脇ゆきのフィーバー時代ですね。
近所になかよし派のお姉さんが住んでいたので、『結婚しようよ』から水上航沼にも浸かりました。あと『かみちゃまかりん』とか。

中高生(わたし)の本棚

中学に上がると友人の幅も増え、りぼんっ子、そして種村有菜に出会う時がやってきます。小学生の頃に満月フルムーンをさがして』は早朝アニメでたま〜に観ていたのですが、『神風怪盗ジャンヌ』『紳士同盟クロスなど一通り読みました。現在はアイナナでお世話になっています。
りぼんでいえば春田なな酒井まゆ槙ようこ作品を同じ友人から借りて読みました。『愛してるぜベイベ★★』は名作。このあたりで吉住渉作品も再燃します。THE少女漫画〜〜〜!!!街道をひた走っている時代。

さらにここから長い付き合いとなる『花とゆめ』との出会いも中学生です。思えば母三姉妹の本棚で既に出会っていたのですが、レーベルを認識したのはこのタイミング。出会いというか再会ですね。『悩殺ジャンキー』福山リョウコのセンスに驚愕し、こんなおしゃれな少女漫画あるんだ!?と借りて読んだ上で結局自分で買ったのを覚えています。中学に上がるくらいでちゃおを卒業したわたしは、ここから花ゆめを追うようになります。高校生になると友人から貸してもらった『Wジュリエット』にどハマり、『WジュリエットII』は今でも追いかけている数少ないコミックスのひとつです。草凪みずほ椿いづみ作品あたりもよく読んだし、あきづき空太作品は現在も本棚においています。

ちなみに少年漫画もそれなりに読んでいました。『ONE PIECE』はじめ王道のジャンプ作品も多少嗜みましたが、ガンガンマッグガーデンASUKAあたりに性癖をぐさぐさ刺されました、結局。花ゆめ然り、THE少女!少年!というよりは中性に寄ってるような作品がどうもマッチするようです(花ゆめは少女寄りですが)。ガンガンだと『スパイラル〜推理の絆〜』『君と僕。』『天正やおよろず』etc…本棚に並んでいました。休載の末、君僕最終2巻が同時に本屋さんに平積みされているのを見たときには声出るかと思いました。手離さずに持っててよかった〜。
その他左近堂絵里作品やあき作品も。『アルオスメンテ』の続刊を気長に一生待っています。

大学生〜社会人(わたし)の本棚

大学生になると、継続して買っている続きものコミックス以外にはあまり手を出さなくなっていたのですが、自分の人生に「恋愛」という要素が現実のものとして加わるようになり、ここにきてマーガレット系列の少女漫画を読むようになります。もっぱら別マでした。めっちゃめちゃ少女漫画濃度高。なるほど、恋愛ものってこんなに共感できるもんなんだな、という初めての感覚。『高校デビュー』『ストロボ・エッジ』『少女少年学級団』『360°マテリアル』etc…
…内容的にも出版年的にもちょっとラグがあるので、連載中にリアルタイムで読んでないか、高校時代の記憶も入り混じってますね。笑

大学後半〜社会人になる頃には、急速に「めっちゃ少女漫画」から離れるようになります。ここらへんで80-90年代の少女漫画を思い出すようになり、「文庫版で手に入れる」という方法で収集をはじめます。花ゆめLaLaあたりの気になる名作タイトルをググっては見つけたり、作者の過去の作品を遡ったり。『おまけの小林クン』とか。
同時に今まで眼中になかった(自分が客層ではなかった)ヤング向けジャンルって面白いんだ!!!に気づきはじめます。ビームハルタフィーヤンなどなど。『違国日記』『私の少年』がそのスタートで、そこから『ホテル・メッツァペウラへようこそ』『無能の鷹』『女の園の星』あたりを現在購読中です。ネットで新たな作品に出会うことが増えたのもありますが、このマンガがすごい!などのランキングの影響も大いに受けています。

花ゆめからMELODYなど、好きな作家が年代にあわせて雑誌を移りながら漫画を描き続けて下さっているのもすごくありがたい。あの頃読んでいたこの人の作品を、大人になってからでも読み続けられるんだ、今でも新たな作品で再会できるんだ、と思うと嬉しく感じます。


ということで、まわりまわって戻ってきたんですね、成田美名子に。


後書き:いつでも自分を支えてくれる、それが血肉

己の漫画歴の変遷ばかりで全然80-90sの話してないジャン!!!
…わたしもそう思います。

ただ、血肉になっているとはどういうことか。この紆余曲折の結果、20年弱の時を経て再びここに舞い戻ってきた、これこそが、と思うんですね。
もちろんその他の作品に言えることでもあるのは承知ですが、わたしが愛する80-90年代の少女漫画からは、「自分が自分であること」その上で「他者と関わっていくこと」を、ときには楽しく、ときには厳しく、様々な感情を伴いながら学んできた気がします。成田美名子作品なんてその筆頭ですね。子どもの頃にはわくわくしながら感じていたそれを、大人になると自分を肯定してくれるかのようにしみじみと味わえる。それが自身の一部となっているように思えてなりません。
なんだか、ひとりでも生きていける、自分は大丈夫、みたいな心強い感覚になるんですよね(「他者と関わっていくこと」とは一見矛盾しそうですが)。

カテゴリが違うのでここでは深く言及しませんが、児童文学や少女小説(コバルト文庫)も同様に血肉なので、これらもあわせて永らく自分を支えてくれているように感じます。

ちなみに『やじきた学園道中記』『有閑倶楽部』を本棚に並べるのが今後の目標です。


後日談:能を見に行きました。

この文章を認めている数日の間に、能デビューの日がやってまいりました。
無事『NATURAL』を読み終え、『花よりも花の如く』憲人の道成寺予定が決まったくらいまで進み、能当日。
絶妙に予習が間に合ったようです。
20代の新進気鋭の能楽師の方が、もうすでに道成寺を披いている、それがどう凄いのか。面を通しての舞台の見えにくさ、専門用語、申合せ(もー幸せ♡)、etc…
わ、わ、わ、わ、わかる!わかるぞ!!!!!(感動)

能にあわせて急ぎ読み進めていたので、これからはじっくり味わいたいと思います。


西門、花花でも持ち前の面倒見の良さで引き続き頼むぞ!


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