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第4回 塩分摂取の極論 ~必要量とオーバードーズ~

濃い味付けは寿命を縮めると言われていますが、
近年は夏場に塩分をとるように言われることもあります。

ではいったい、塩の必要量ってどのくらいなのでしょうか?
また、塩の危険性ってどのくらい高いのでしょうか?


食塩摂取量

日本人の塩分摂取量の基準は中間目標?

厚生労働省がまとめた「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、
1日あたりの食塩摂取量の目標値(18歳以上)は
・男性 7.5g未満  ・女性 6.5g未満
と設定されています。
この値は必要量ではなく過剰摂取を回避するために設定されました。

経緯や推移は別の回にお話しすることにして、
この回では必要量と過剰摂取(オーバードーズ)といった極論についてお話をしていきます。

本当に必要な量って?

世界保健機関(WHO)のガイドラインには、
ナトリウムとして 200~500 mg/日が必要量だと推定される
と記載されています。
先述した「日本人の食事摂取基準」(2020年版)でも、
個人間変動を考慮に入れて、ナトリウム 600 mg/日(食塩相当量 1.5 g/日)
が男女共通の推定平均必要量と考えているようです。
これは、座位で発汗を伴わない仕事に従事している成人の
排出したナトリウム量によって算出した必要最低限の量になります。
必要量1.5 gの約4~5倍の量が基準となり、
普通に食事をとっていれば、不足することはなさそうです。

病気をしたときの食事制限(食塩摂取量)

高血圧や生活習慣病などが原因で、お医者さんに食事制限を促される場合があります。
日本高血圧学会でも、食塩摂取量は1日6g未満が望ましく、
生活習慣病の発症や重症化予防という観点からも、できるだけこの値に近づくよう食塩の摂取を控えるべきと考えられています。

塩の危険性

※※ここからは谷田部淳一医師が監修された文章を著者がわかりやすく書き換えた内容になっています。※※
通常起こりえない内容も含まれます。
ご理解いただける方のみ、読み進めてください。

食塩の致死量とは

食塩の主成分である塩化ナトリウムの推定致死量は
体重1kgあたり0.5~5.0 gとされています。(動物試験による毒性試験、半数致死量は体重1 kgあたり3.0~3.5 gです。)
体重60 kgの人なら、30~300 gの塩を一度に摂取すると死に至るおそれが
あるということです。

食塩水の濃度

イメージを膨らませるために、水で溶かしてみることとします。
水1Lに食塩は約300 g溶かすことができます。まぁ塩辛くて飲めたものではありません。
海水の塩分濃度は3.5%程度なので、1Lで35 gの食塩量となります。
海水もしょっぱいのでわざと飲むことはありませんが、海で溺れてしまった場合、海水を多量に飲み込んでしまうことがあります。
ちなみに点滴の濃度といわれる生理食塩水は0.9%です。

これらの比較からもわかるように、どのくらいの食塩が溶けているかわからない水溶液を一気に飲むのは危険です。
自作の経口補水液も、含まれる塩分量が飲む人に見合わなかった場合過剰摂取が起こりうると考えられます。


一度にとった過剰な塩分は・・・

食塩を一度に過剰摂取してしまうと、血液中のNa+(ナトリウムイオン)濃度が急激に上昇します。そうすると、浸透圧の関係で体液中の水分を血液が流れる血管の中に多く引き込むため、循環血液量が増えます。
この循環血液量が心臓のポンプ機能を上回ってしまうと「うっ血」を引き起こしてしまいます。
臓器別にいうと、肺では肺水腫、心臓ではうっ血性心不全が起こることがあります。全身はむくみ、体重は著しく増加することはいうまでもありません。重度の場合、息苦しくなり、次第に動くことも難しくなります。

急なNa+(ナトリウムイオン)濃度の上昇は、細胞内がいわゆる「脱水」の状態になります。特に脳細胞の脱水が起こると、けいれんや昏睡などの意識障害が引き起こされます。急激に脳細胞が委縮した場合、脳容積が減少するとともに血管にも負担がかかることで破綻が起こりやすくなります。脳出血やくも膜下出血もその例といえるでしょう。

急性食塩中毒の処置

食塩の過剰摂取(オーバードーズ)によって起こる頭痛、嘔吐、発熱、下痢、意識障害は、食塩中毒 といわれます。
救命処置を必要とする病態としては非常にまれで、日本でも数例の報告しかありませんが、血液中のナトリウムが非常に高い状態となる「高ナトリウム血症」の急性のものともいわれています。

食塩中毒の患者に対しては、一度にたくさんの輸液を行い、ナトリウムを第外に排泄させるという治療法が主に行われます。ほかにも血液透析と行ったりすることもあります。これらの治療方法は、食塩中毒になってから数時間以内、長くても2日以内に行った方が良いとされています。

先述した通り、食塩の過剰摂取は脳委縮という致命的なダメージを負うものですので、いたずらに飲み物に塩を多くまぜたり、からだの小さい幼児に与えることがないよう注意してください。

まとめ

個人の所感ですが、危険性と付くものにはサスペンス系のコンテンツに採用されることがあります。
最近読んだ「薬屋のひとりごと」の漫画(or 原作小説)にちょっと出てきた記憶があります。(記憶ですみません。他の回もおもしろいですよ。)
2023年秋~アニメ化されていますので、みつけたらお伝えしますね!


次回は「食塩摂取量の推移(仮)」についてです。
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