『全共闘以後』刊行記念トークライブin東京(2018.9.18)その3

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その2」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2018年9月に刊行された外山の新著『全共闘以後』の販促トーク・イベントのテープ起こしである。刊行まもない2018年9月18日におこなわれ、紙版『人民の敵』第47号に掲載された。
 会場は東京・高円寺のイベント・スペース「パンディット」で、それぞれ『全共闘以後』の主要登場人物でもある中川文人氏(半ば司会役)、佐藤悟志氏、山本夜羽音氏も登壇している。
 このさらに約2週間後に同じく『全共闘以後』刊行記念イベントとして京都大学熊野寮でおこなわれた、絓秀実氏との公開対談のテープ起こしと併せてお読みいただきたい。

 ( )内は紙版『人民の敵』掲載時にもともとあった註、[ ]内は今回入れた註である。他のコンテンツもそうだが、[ ]部分は料金設定(原稿用紙1枚分10円)に際して算入していない。
 第3部は原稿用紙換算19枚分、うち冒頭7枚分は無料でも読める。ただし料金設定はその7枚分も含む。

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 早大トーク・イベントには300名が集まったのに……

中川 ……じゃあ会場から誰か、景気よくどうぞ(笑)。昼間さん、お願いします。

外山 あ、昼間さんはすでに読まれたんですよね?

昼間たかし氏 すでに書評を書いて送信したので、近々載ると思います(サイト「日刊サイゾー」9月19日)。

外山 助かります。

昼間 今日は久々にサトサトさん(佐藤悟志)の話をお伺いすることができて、お会いするのも7年ぶりぐらいのような気がしますが、やはりファシズムの勝利を改めて確信いたしました(笑)。本の感想を述べますと、いつの時代にも勝手に、〝オレがやりたいからやるんだ〟という人はいたわけだし、もうちょっと現在の人も、そういった基本的姿勢に立ち戻って、こんなことをしたら後からいろいろ云われるんじゃないかとか、ネットに晒されるんじゃないかとか(笑)、そんなことをあれこれ心配せずにやりたい放題やったほうがいいと思います。

外山 べつにネットに晒されたっていいじゃんね(笑)。

昼間 実は今日はちょっと忙しかったんですよ。それで、先日(7月6日)の早稲田のイベント(絓秀実氏との対談[紙版『人民の敵』第43号に掲載。いずれnoteでも公開予定])を経験しましたし、こんな小さな会場には入りきれないだろうと思って、ちょっと様子だけ見て〝行ったけど席が空いてなかった〟ってさっさと帰るつもりだったんです。しかし来てみると席が空いてたので、こうして座らざるを得なかった。このことがもう、すでに危機的なのではないか、と。なぜ早稲田には3百人(正確には270名)も集まって、今日は30人しかいないのか? このことをもうちょっと討議したほうがいいと思います。

外山 集客に関しては、今回は単にぼくが呼びかけてるにすぎないからですよ(笑)。ぼくがツイッターで呼びかけたところで、ぼくのツイートをちゃんとチェックしてる人にしか、このイベントがあること自体が伝わらないわけです。

山本 外山のツイッターは、あんまりたくさん呟かないから、よく見落とすんだよね。

外山 いやいや、そういう問題じゃなくて、ぼくの知名度の高さと、ぼくの言動を日常的にチェックしてる人の少なさとの落差が大きすぎるんです。要は〝面白動画の人〟としてぼくのことを知ってる人はやたら多いけど、マジメな思想的関心・政治的関心の対象として見てる人は非常に少ない。単に〝面白動画の人〟としか認識してない人は、ぼくのツイッターなんかフォローしてないし、そもそもぼくがツイッターをやってることも知らなかったりする。著作があることすら知らないんだから……。だからぼくが情報発信しても、集まるのはこれぐらいのものですよ。
 早稲田の場合は、何人かの学生が学内でビラ置きをやってビラ貼りをやって、タテカンまで出して宣伝したから3百人近く集まった。そうやって情報を人目に触れさせさえすれば、〝外山恒一〟を知ってる人はそれなりに多いんで、人は集まるんです。北海道大学でも同志社大学でも、主催の学生たちが事前にちゃんと情宣をやったところは、2百人ぐらい集まってます。早稲田の時も〝奇人変人〟を見物するつもりで、〝冷やかし〟のつもりで来た人が相当混じってたはずで、もちろんぼくとしてはそれで全然かまわない。実際に話を聞いてみて、〝あれ? 超マトモな人じゃん〟ということで、その意外性が面白かった、って話にたいていなりますから。
 だから今回も誰かが1ヶ月ぐらい前から東京じゅうの飲み屋とか喫茶店とか、ミニシアターとか演劇公演とか、あちこちにビラ置き・ビラ入れをしたりすれば、とうていココには入りきらないぐらい集まると思いますが、そういうスタッフは東京にはいないんで……。


 ファシズム転向:佐藤悟志氏の場合

外山 他に何か質問とかありますか? まあそもそも発売されたばかりですからね。しかもブ厚いし、発売されてすぐに買った人もまだ読み終わってないでしょう(笑)。せいぜい、公式の発売日より1週間ぐらい前から〝フライング発売〟してた模索舎で買った人たちだけが、何人か読み終わったぐらいじゃないかと。

O氏 私は一昨日買って、すでに読み終わりました。こっちの本を(と『ポスト学生運動史』を掲げる)すでに読んでいたので、中川文人さんの経歴については前々からおおよそ把握してたんですけど……。

外山 あれを出したのは何年だっけ? 2010年?

O氏 えーと、奥付を見ると……そうです、2010年の〝2月1日発行〟となってます。

外山 『ポスト学生運動史』という、ぼくと中川さんの共著で、ぼくが中川さんの法大時代の闘争の話を根掘り葉掘りインタビューした本で、今回の本の〝第3章〟の参考資料の1つですね。自分が作った参考資料を自分で参照するっていう(笑)。

中川 たしかに他に資料がないからなあ(笑)。

O氏 今回の本には佐藤悟志さんもかなり何度も登場していますよね。もしかしたら一般的には……失礼な云い方になりますが、佐藤悟志という人は、おそらく〝外山恒一〟よりももっと〝奇人変人〟であるかのように思われてるんじゃないかと思うんです。しかし今回の本を読むと、すごく思想的にマジメに、いろいろ試行錯誤しながら遍歴を重ねてきたんだということが分かります。

外山 思いつきで〝ファシスト〟とか自称し始めたんじゃねーぞ、っていうね(笑)。

O氏 あと、今回の本にも書いてあるとおり、〝内ゲバ〟というのが80年代にもまだ続いていたことは、ぼくもまあ聞き知ってはいましたが、佐藤さんは97年に、戦旗派というあんまり内ゲバに絡んでたイメージのないような党派から組織的な襲撃を受けていて、その話も「ロフトプラスワン襲撃事件」として第5章に出てきます。90年代も後半になってそんなことが起きていたとは、ぼくは恥ずかしながら、まったく知りませんでした。そこらへんの話を、せっかく佐藤さんもおられますし、もうちょっと聞いてみたいです。あと〝ファシズム転向〟の話と、2つお聞きしたいな、と。

外山 今回の本では、佐藤悟志のファシズム転向についても、ぼくのファシズム転向についても、最低限の脈絡が分かるように言及しています。ぼくが佐藤悟志と初めて会ったのは90年の秋で、つまり後期・秋の嵐が〝路上解放闘争〟的に盛り上がり始める、そのちょっと前ぐらいなんですが、その頃すでにベレー君は〝ファシスト〟を自称してたよね。〝反天皇制右翼つまりファシスト〟という〝註釈つき〟みたいな自称の仕方はだいぶ後になってからだったような気がするけど……。

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