『全共闘以後』刊行記念トークライブin東京(2018.9.18)その4

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その3」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2018年9月に刊行された外山の新著『全共闘以後』の販促トーク・イベントのテープ起こしである。刊行まもない2018年9月18日におこなわれ、紙版『人民の敵』第47号に掲載された。
 会場は東京・高円寺のイベント・スペース「パンディット」で、それぞれ『全共闘以後』の主要登場人物でもある中川文人氏(半ば司会役)、佐藤悟志氏、山本夜羽音氏も登壇している。
 このさらに約2週間後に同じく『全共闘以後』刊行記念イベントとして京都大学熊野寮でおこなわれた、絓秀実氏との公開対談のテープ起こしと併せてお読みいただきたい。

 ( )内は紙版『人民の敵』掲載時にもともとあった註、[ ]内は今回入れた註である。他のコンテンツもそうだが、[ ]部分は料金設定(原稿用紙1枚分10円)に際して算入していない。
 第4部は原稿用紙換算17枚分、うち冒頭6枚分は無料でも読める。ただし料金設定はその6枚分も含む。

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 ヒトカドの活動家なら〝高校デビュー〟が当たり前

外山 それにしても、佐藤悟志を襲撃した部隊の指揮官が山本夜羽音の高校時代のかなり親しい友人だったというエピソードもそうだけど、今回の本を書き進める上でいろいろ調べてみると……80年代末とか90年代初頭とか、あるいはもっと後の90年代後半、00年代、さらにはごく最近まで含めて、運動シーンで注目を浴びる主だった活動家というのが、〝60年代後半から70年代前半の生まれ〟という1つの世代の中から代わる代わる大量に登場してきたじゃないですか。だけど実はそういう人たちって、80年代前半とか半ばとかの、それぞれの高校時代のうちにどこかで誰かとつながってたという話が、改めて調べてみるとものすごく多くて、ビックリしたよ。

中川 たしかにこの本を読むと、世間は狭いなあと実感する。

外山 もちろんそれは、80年代半ばというのは、高校生ぐらいで政治的な運動に身を投じていく奴がまだ一定いたとはいえ、ものすごく多いわけではないから、まあたいていの奴とは知り合うわけだよね。それが3百人規模だったのか5百人規模だったのか分からないけど、そのほとんど全員と1度ぐらいはどこかで遭遇する可能性が高いという程度のもので、いずれ注目を浴びるようなヒトカドの活動家なら〝高校デビュー〟が当たり前だし、どこかで誰かと会ってて当然なんだけどさ。

山本 しかしそれは今の時代みたいに、SNSで興味・関心が近い奴を簡単に見つけて、ダイレクト・メールを出してパッとつながれるような状況とは、ワケが違うからね。コイツは面白い、コイツはヘンだ、というのがちょっとでもアンテナに引っかかってきたら、どうにかしてコイツと連絡をつけたい、会って話してみたいって、思いつくかぎりのあらゆる手を尽くして連絡をつけて、会いに行くんだよ。その繰り返しだったじゃん。


 10代の外山恒一の地道すぎる同志発掘活動

外山 ぼくらがやってた全国高校生会議というのも……例えばぼくは福岡に住んでるわけですよ。福岡で、自分が通ってる学校の中に仲間を探そうと思っても、なかなかそんな奴は見つからない。だけどこの学校には確実に1人、オレがいるんだから、もしかしたら他の学校にはオレみたいな奴も1人ぐらいずついるんじゃないのか、と妄想を膨らませ始める。しかし仮にそうだったとして、どうやってそういう奴を探し出して連絡をつけるのか。もちろんネットなんかないので、いろいろ陰謀を巡らせるしかない。
 で、今回の本にもその時の話を書きましたけど、〝社会問題研究部〟とかいった感じの〝部活〟が、ごく稀にあるんですよね。そういうところの部員であれば、〝社会問題〟とかに関心があるに決まってるわけで、しかしどの高校に〝社研〟が存在しているのかが分からないわけです。
 1つには、受験ガイドみたいなのを調べた記憶もあります。いわゆる有名私立の類なら、福岡の本屋でもいくらかは受験ガイド本が置いてあって、校風の紹介として部活リストが載ってたりする場合もある。もちろん載ってない場合も多いし、それだけでは情報が足りない。
 そこでぼくが思いついたのは、全国各地のやっぱりエリート校の類に電話をかけまくることだった。「おたくの学校に〝社会研究部〟はありますか?」とストレートに訊いたって怪しまれて教えてくれるはずがないから、〝夏休みの自由研究〟的なことを装って、全国各地のいろんな高校にどんな部活があるのかを調べてます、って訊いてみたんです(笑)。で、部活の名前をすべて列挙してもらって、〝野球部、サッカー部、バスケ部……〟とか云われてる間は上の空で聞いてる(笑)。文化部のくだりに移った段階から、もしや〝社研〟的なものが出てこないか、じっと耳をすませてるわけですね。ごく稀にしかないんですけど、もしあると分かれば今度はそこ宛に〝高校生の手で社会を変えましょう〟みたいな熱い手紙を送って、〝連絡を請う!〟って。

中川 地道だよなあ……。ほんとに偉いと思うよ。

外山 たぶん校外から届いた怪しい手紙を未開封で生徒に渡す学校はほとんどないだろうし、開封して中身を読んだらますます生徒には渡さないだろうし、今思えば9割方は完全なムダになったはずです。返事が返ってきたのは2件だけで、1件はそれっきりで交流が続かず、残るもう1件が、広島修道高校という中国地方のまあ随一の有名私立に通ってる奴からで、そいつが結局、今回の本にもかなり重要なキーパーソンとして登場する、やがて一緒に全国高校生会議を立ち上げていくメインの1人なんですけどね。

山本 たぶん彼はあの時代の最大のオルガナイザーと云っていいと思います。

外山 で、連絡が取れてしばらくして、やっぱり直接会いに行く。するとまあやがて、途中をハショると、〝他にもオレたちみたいな奴は全国各地に他にもまだたくさんいるはずだ〟という話に当然なるし、そいつはとにかく運動関係のあらゆる情報をぼくと知り合う以前から細かく収拾してるようなヘンな奴で、当時一般に流通してた中では最も運動色が強い『朝日ジャーナル』という週刊誌の、〝集会情報〟みたいな欄も毎週チェックしてるわけですよ。いざ他にも同世代の仲間を集めようぜという話になると、そいつがそれまで収拾した全国各地の〝反原発〟だの〝反天皇〟だのって運動の連絡先に電話をかけて、「高校生で参加してる人はいませんか?」って訊いて、1人でもいると分かればミニコミを同封した手紙を送りつける。

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