コロナ問題の第一人者!? 清義明氏に訊く 2020.05.07(その2)

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 「その1」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 外山は4月1日に闘争宣言(コレコレ。同12日に改めて考えをまとめたものはコレ)を発して以降、〝自粛粉砕〟の果敢な闘争を展開してきた。その大きな山場をなした5月1日〜6日の東京・高円寺駅南口広場における〝独り酒闘争〟を終えた翌日、90年前後の反管理教育運動時代の同志で、もちろん『全共闘以後』にも別名で何度も登場する沢村真司(仮名)宅で、実は外山と沢村に〝コロナ恐るるに足らず〟と判断させるに至らせた、コロナ問題に関する秀逸なツイートなどをこのかん次々と繰り出してきた、『サッカーと愛国』(イーストプレス・2016年)などで知られるジャーナリスト・清義明氏にさらに教えを乞うた。
 前記のとおりインタビューは2020年5月7日、東京某所の沢村宅でおこなわれた。

 現在進行形の問題であるし、無料部分の割合を通常よりだいぶ増やしてお届けする。
 第2部は原稿用紙換算28枚分、うち冒頭14枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその14枚分も含む。

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 実際たいしたことないウイルスじゃないか

 こないだ朝日新聞の特集でも、アフリカ諸国やインドとかもコロナ騒動で大変なことになってて、その〝大変なこと〟の中身というのは、要はほとんどが経済的な話だというんです。都市がロックダウンされて仕事がなくなってる。食べるものもない。それで、20円ぐらいしか持ってないのに、何百キロも離れた田舎まで歩いて帰らなきゃいけなくなってるとかさ。アフリカでは、自分たちの周りで毎年マラリアで何万人も死んでるのに、なんで今回だけ大騒ぎになってるのか理解できないって人も多いらしい。

沢村 それは本当にそう思うよ。なんで今回だけこうなってるの? ブラジルみたいなことをやると国際経済からハブにされるとか……ってわけでもないよね? 各国とも自国の富裕層を守るためにやってるってこと?

 ぼくも不思議でしょうがないんだ(笑)。何よりも不思議なのは……外山さんも書いてたように、これまでこのレベルの伝染病が流行ったことは何度かあったんです。それはその都度、とくに一般的にパニックが広がるということもなく、感染拡大が起きて、やがて収束していった。1957年のものは〝忘れられたインフルエンザ〟と呼ばれてるぐらいで(笑)、経済的な影響なんかも全然なかった。ところが今回は……だって現時点でもまだ、1957年と1968年のインフルエンザ流行の死者数にまったく届いてないんですよ?(清註.1957年のアジア風邪は世界で約200万人が死亡と推定されている。そのうち日本の死者数は2万人超。1968年の香港風邪は世界で約100万人が死亡と推定。日本では5700人の死者が記録されている)。それなのにこんな、世界恐慌レベルの経済縮小をしかも人為的に起こしてて、意味不明だよ。

外山 死者数はまだ、その2回の感染拡大の時に比べて、4分の1ぐらいじゃないの?

 世界的にもそうだし、日本なんか〝4分の1〟どころか、まだ死者数百人じゃないですか(笑)。……〝超過死亡者数〟って概念は知ってます?

外山 いや、あまりよく分かってない。

 伝染病による死者数って正確には分からないから、毎年の平均的な死者数と、インフルエンザとかの伝染病が大流行した年の死者数を比べて、その差異つまり〝超過死亡者数〟が、おおよそその伝染病で亡くなった数だろうって考えるわけです。ところが今年の日本の3月の超過死亡者数は、なんとマイナスになったらしい(笑)。つまり、あまりにもコロナ対策をやってるもんだから、他の病気で死ぬ人も少なくなって、その結果として超過死亡者数がマイナスになってしまうという驚くべき事態ですよ(笑)。

外山 諸外国はどうなの?

 もちろん諸外国では超過死亡者数は増えてます。イギリスなんかでは、公式に発表されている数字、つまり政府が把握している数字の何倍も超過死亡者がいるんです。ところが日本では……。

沢村 要するに日本の人民が過敏になって、騒いでるからこんな〝自粛〟ムードになってるだけだということですよね?

 いや、そこが分からないという話なんです。ちょっと待てよ、と。たった500人ぐらいしか死んでないし、総合するとむしろ死者数はマイナスになってるというのに、オレらはこんな窮屈な思いをさせられてるのか、ふざけんなよ、と。日本がそれだけしっかり対策をとれたということなのかもしれないけど、なんか納得いかねえなあ、と。こんなに死者が少ないのに、なんで専門家会議がボロクソに叩かれてるのか、ワケが分からん。素人どもに吊るし上げを食らってさ(笑)。

外山 人民は一体何を求めてるんだ?

沢村 現時点ではもうすでにパニックになってて、付和雷同分子が同調圧力を強め合ってるだけだろうけど、パニックが始まったメカニズムが分かんないよ。現実的な対策として〝クラスター分析〟とかやってしまったがゆえに、ココとココで発生したという情報がパニックの引き金になってしまったのか……。とくに田舎のほうだと、誰がどこで感染したのかっていうのが全部バレちゃうし、そこから同調圧力が高まり始めたように思う。

 まあ来年の今頃になると、ちょっとあれはやりすぎたんじゃないかと、みんな云い始めるような気がするけどね。経済的な影響は半年遅れぐらいでやってくるでしょ。それを夏には思い知ると思うんだよな。今やってるコレのツケを払うことになるんだ。


 疫病蔓延の結末は専門家にも分からない

外山 感染拡大そのものはどうなるの? あと1ヶ月ぐらいで収束するなんてことがある?

 ぼくは収束すると見てますけど……。それは疫学の人たちではなくて、シンガポールの統計学の先生とかが、数字だけで見れば日本では5月中旬には90%ぐらいは収まる、6月のうちに97%ぐらいに収まる、その後も多少は尾を引きつつ、最終的には9月下旬ぐらいに完全に収まるだろうと云ってます。

沢村 それは罹患者がほぼゼロになるという意味ですか?

 そう。

沢村 このままずっとロックダウンしていれば、という仮定での話でしょ?

 いや、そういう話ではない。

沢村 じゃあ集団免疫ができるってこと?

 統計学では、そういった話はすべてシャットアウトして、ただ数字だけを見て云ってるんです。どういう政策をとっているから云々とか、そういうことは一切関係なく、ただ数の推移だけで分析するんですけど、これがまた当たるんだ。すげえ当たる。統計おそるべし、なんだ。

外山 だけど常識的な感覚で云うと、ワクチンが開発されるか、人口のかなりの部分が感染して集団免疫を獲得するか、どっちかでないと感染拡大は終わらないはずでしょ?

 究極的にはそうです。

外山 じゃあそんなにすぐには収まらないんじゃないの?

 ところが伝染病というのは、とくにこれはコロナではなくインフルエンザの場合にそうなんだけど、たいていの場合、疫学の専門家たちの予想すら超えた終わり方をするんですよ。〝これはどうなってしまうんだ!?〟と大慌てしてたら、いつのまにか自然に収束してしまうとか、そんなことばっかりなんだ。SARSもMERSも鳥インフルエンザも、全部そうだったでしょ?

沢村 たしかに。

 疫学者たちが想像してたのとはまったく違う形で、どれも収束してるんです。いつのまにかなくなってるというか、いつのまにか弱毒化してる。逆に強毒化するとむしろ抑え込みやすくなるんですよ。強毒化というのは、重篤化するのがすごく早くなるということだから、まだあまり周囲に感染させないうちに患者を見つけだして隔離できるということだからね。コロナがややこしいのは、弱毒のくせに感染力はものすごく強いことなんです(笑)。こんなのはもう、人知を超えたところで収束するのを期待するしかない(笑)。で、実際そうなりつつあるんだと思う。伝染病って結局、そういうものなんですよ。まさに人知を超えちゃってる。分かんないものなんです。だから疫学者たちは運命論に行きやすい。

沢村 ペストですら、死ぬのは感染者の半分ぐらいだったでしょ。決して全員が死ぬなんてことはないってことですよね。

 ウイルスにしろ細菌にしろ、人類が死に絶えるというのは、奴らにとってもマイナスなんですから。人類を全滅させちゃうと、奴らも生き残れない。だから人間とウイルスの双方が生き延びるための最適解が求められるわけです。

沢村 ものすごく不思議なことですよね。ウイルスはべつに互いに連絡をとり合ってるわけでもないはずなのに、自分たちが広がりすぎてるとか人間を殺しすぎてるとか、どうやって判断するんだろう?

 まさに生命の神秘ってやつじゃないですか。

沢村 メカニズムは分からないけど、結果的に、決して人類を絶滅に追いやったりはしないような動き方をする、と。

 だから疫学の偉い先生たちは次第にみんな達観の境地に至って、運命論者みたいになるんですよ(笑)。


 安倍ちゃんに同情する

外山 ……安倍ちゃんはどうしたいの?

沢村 こんなに毎日コロナ、コロナ云われ続けてたら、洗脳されちゃうよな。とくに為政者の立場だと責任もあるしさ。最初はピンと来てなかったとしても、だんだん〝鎮圧しなければ!〟って気持ちになるんじゃない?

外山 安倍ちゃんはほんとにやる気があるのか、それとも……いや、ぼくはコロナに関しては、やる気なんか出さなくていいと思ってるわけだけど、安倍ちゃんは、実際には全然やる気ないんだけど、やる気を見せないと支持率が下がっちゃうから、やる気があるポーズはとらなきゃいけなくて、やる気を小出しに見せてるだけなのか(笑)、それとも本当にやる気があるのか、どっちなのか分からない。

 事態が安倍ちゃんの脳味噌のキャパシティを超えちゃってるんじゃないかなあ(笑)。

外山 要するにカネはあんまり出したくないってことなのかな?

 だけどもうすでにだいぶカネを出してますよね。現時点で決まってる額だけでも、みんなブーブー云ってるけど、先進国としてはまあまあの規模だと思いますよ。よくここまでやったなあとオレは思う。

外山 一律支給の10万円にしても、とうてい1度きりというわけにはいかないよね?

 うん、また2回目をやるでしょう。……でも安倍ちゃんも可哀想だ。こんな状況、誰が首相でもどうしようもないよ(笑)。まあ唯一、オリンピック延期の判断がたぶん2週間ぐらい遅れたことが安倍政権の失敗だったけど、それも同情せざるを得ない(笑)。

外山 だって世界がこんなアホみたいにパニックになるとは予想できないもんなあ。

 疫学者のみなさんも、1月ぐらいの段階では、なんで世界中がこんなに騒いでるのか不思議がってたもん。伝染病の問題はしょっちゅう起きてるのに、なんで今回だけパニックになるのか分からないって。

外山 結局なんでなんだろう?

 外山さんは〝インターネッツ〟説でしょ?(笑) オレもたぶんそれはあるとは思う。あともう1つ、〝中国発〟というのも大きかったんじゃないか。〝中国脅威論〟とミックスで広がったパニックのような気がしてる。グローバリゼーション、中国、伝染病……っていう。

外山 ぼくは陰謀論の類は一切、退けますけど、ここまで不可解なパニックが起きると「もしや?」ぐらいには考えちゃいますよ。〝中国のウイルス兵器〟説があるでしょ。たぶん違うと思うけど(笑)、〝もしかして〟本当にそうで、そのことを各国指導部は察知してるからこんなに焦ってるのかなあ、とか……。だって日本と違ってヨーロッパ先進国の政府はもっとマトモなはずだと思い込んでたからさ。


 欧米人がパニックに陥った理由

 ただ、ヨーロッパ人は知らんけど、アメリカ人はもともと伝染病を怖がりますよ。

外山 でもアメリカもパニックになるのは遅かったでしょ? ヨーロッパでまずパニックになり始めなかった?

 さらに云えば最初はヨーロッパもまったく怖がってませんでしたね。〝またアジアで騒いでるね〟ぐらいの感じでしたよ。〝伝染病といえばやっぱりアジアだよね〟ぐらいのノリだったと思う。それが今回はヨーロッパにも上陸したんで、だからパニックになったんじゃないかな。

外山 へー、これまでは上陸しなかったの?

 全然でしたよ。今回のコロナに匹敵するのは、最新のもので云うならエイズでしょう。80年代から90年代にかけてエイズのパニックがあって、それ以来のこと。

外山 そうだったのか……。

 しかもエイズの場合は、感染経路がかなり限られてたし、今回に比べたらまだしも冷静だった。……1976年に、アメリカで〝豚インフルエンザ不発事件〟というのが起きてるんです。

外山 起きたというか、起きなかったわけですね(笑)。

 〝豚インフルエンザ不発事件〟って呼び方は、ぼくが勝手にそう呼んでるだけなんですけど(笑)、それはどういう事件かというと、フォートディクスってところにある米軍基地内で豚インフルエンザが発生して、それがパンデミックになるんじゃないかと大騒ぎになったんですね。当時の大統領はフォードで、アメリカ人全員にワクチンを摂取させるということまでやった。にもかかわらず、全然たいしたことにならなかったという〝不発事件〟なんですよ(笑)。フォードの大統領選敗北の一因にもなったという〝事件〟です。
 ……ともかく欧米人というのは、いざ伝染病の拡大って可能性を目の前に突きつけられると、ものすごく怖がるんだなあというのは、そのエピソードでも分かります。

外山 なるほど。

 その〝不発事件〟の米軍基地というのは陸軍のもので、細菌の研究所もあるんです。つまり自分たちの身に覚えがあるから「中国のウイルス兵器だ!」とか云ってんじゃねえのか、と疑いたくなりますよ(笑)。実際その時にアメリカはものすごく情報を隠したんだ。

外山 でもようやく納得できましたよ。自分の足元にまで問題が及んできたからヨーロッパ人が騒いだ、ヨーロッパ人が騒ぐから世界中が騒いだ、ということにすぎないんですね。

 そういう側面はあると思います。

沢村 とはいえ中国もすぐ武漢を封鎖したりしたもんね。あの光景が衝撃的だったことも大きくて、それがヨーロッパにまで及んできたものだから……。

外山 アジアでは中国も韓国も台湾も今世紀に入ってから〝恐ろしい伝染病〟の流行を経験していて……。

 みんな備えてましたからね。でもアメリカだって備えてたんです。CDCっていう世界で一番の、WHOより優秀かもしれないと云われるぐらいの組織もあるんですからね。伝染病って要は〝国防〟の問題ですから、当然アメリカはしっかりやってました。だけど……やっぱりいざ目の前にくると弱いんだ、欧米の連中は(笑)。


 マトモなことを云ってる言論人は誰?

沢村 ……それにしても今のツイッター界で、コロナ問題に関しては清さんのツイートがとにかくクオリティ高いですよね。

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