外山恒一&藤村修の時事放談2018.4.25「〝いい人〟安倍ちゃんは政治家には向いてない」(その4)

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 「その3」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 FランのJ出版界が粗製濫造するFラン文化人の順列組み合わせ的な対談本の類とは比較にもならん超ハイレベル対談なので意外と……いや当然ながら大人気の、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2018年4月25日におこなわれ、紙版『人民の敵』第42号に掲載された。。

 第4部は原稿用紙21枚分、うち冒頭8枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその8枚分も含む。

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 野間っちの新刊『実録・レイシストをしばき隊』

藤村 しかしフツーに〝時事放談〟をやってもあんまり面白いことが云えないな。やっぱりしばき隊の話をしてたほうが……(笑)。

外山 いや、べつにかまいませんよ、しばき隊の話でも。新しい本(『実録・レイシストをしばき隊』河出書房新社・18年2月)も出たみたいじゃないですか。

藤村 しまった! 今日は持ってくるの忘れた。

外山 実際に会って話して(16年7月の東京・高円寺でのトークライブ)、ぼくはもうすっかり野間サンには興味を失ってるからさ(笑)。本もまあ、『全共闘以後』の正式バージョン(紙版『人民の敵』に連載してるバージョン[その一部を「1988年の反原発運動・全史」として公開済み])が00年代篇に突入すれば読まざるを得ないけど、完全に後回しになってるもん。まあ、〝しばき隊評論のトップランナー〟(清義明氏の評)である藤村君がいるから、大事なとこだけ教えてもらってれば、とりあえず読まなくても大丈夫(笑)。

藤村 そうは云われても、とくに話すこともないですが……いい本ではあったよ。面白かった。しかしなぜ面白いかというと、しばき隊のことを主に書いてるからなんだけど。つまり〝クラック〟に改称して以降のことはハショってある。

外山 クラックのことを書き始めたら破綻しちゃうだろうからね。

藤村 というか、前半(「第1部 新大久保の戦い」)が〝しばき隊の歴史篇〟で、後半(「第2部 グローバル・ヴィレッジの百姓一揆」)はいわば〝理論篇〟なんだけど、後半は要するにもうクラックの理論なんだ。しばき隊というよりクラックの正当性を一所懸命、説いてるんです。だけど内容は〝反ヘイト〟あるいはせいぜい〝反ネトウヨ〟や反〝どっちもどっち〟というテーマの範囲内に限定されてて、つまり実際には野間さんたちは〝アベ政治を許さない!〟的な運動にもどっぷり関わってるんだけど、そこらへんについてはほとんど触れてない。そこはちょっと不満……〝不満〟ではないな。そもそも野間さんの力量ではそこまで論じられないよね(笑)。しばき隊の話は今回はそんなもんです。

外山 もっと語っていいのに(笑)。


 九州にしかない野蛮な風習〝朝課外〟

藤村 あ、話はまたガラッと変わりますが、つい最近の西日本新聞にこんな記事が出てましたよ(と4月18日の記事の切り抜きを提示)。

外山 「福岡県立高の朝課外『強制』根強く」……。

藤村 うん、「『自由参加』は有名無実?」って。

外山 まだやってるんだもんな。我々(外山が主宰した反管理教育グループ「DPクラブ」)がこの問題で闘ってから、すでに30年になりつつありますよ。

藤村 今さらかよ、と。

外山 (記事をひととおり読んで)しかし、そんなに〝外山恒一〟はタブーなのか、って話だね。いろんな人のコメントが出てくるけど、この問題をやるなら外山恒一に取材に来ないのは完全におかしいもん。「半世紀近く続く伝統」って書いてあるけど、その約半世紀の間、この問題で組織的に闘ったのは、おそらく我々だけなんだからさ。
 DPクラブのメンバーは、朝課外(〝補習〟とも云う)は〝出席禁止〟だったんだ(笑)。分裂して、闘う気のある奴だけが残って以降の話だから、福岡と長崎の高校にそれぞれ1人ずつ、計3、4人だけど、要は一種の〝同盟休校〟(部落解放同盟の傘下の生徒たちが、何らかの要求を掲げて組織的に登校拒否をすること)をやってた。その話は伝わってないにしても、最初の本(『ぼくの高校退学宣言』徳間書店・89年)を出した時に西日本新聞はかなり大きなインタビュー記事を載せてて、その中でぼくは在学中も補習出席を拒否して、そもそもそれが学校当局と揉め始めたきっかけだったって話はしてるんだから、過去の記事を漁れば出てこないはずがない。

藤村 しかしこの問題は、ほんとに他の地域の人は知らないよねえ。

外山 うん、知らない。

藤村 九州だけなんでしょ?

外山 どうもそうらしい。この記事では福岡だけの話みたいに書かれてるけど、実際は沖縄を除く九州全域。関門海峡を越えたら驚かれるもん。

藤村 山口でもやってないんだ?

外山 反管理教育運動の頃、下関で話して驚かれた。

藤村 すごい話だよな。朝の7時半とかから登校しなきゃいけないんでしょ、九州の高校生は。

外山 普通科の高校のみだけどね。普通科の、偏差値で下から1割ぐらいを除く、9割方。

藤村 もはや〝いじめ〟のレベルだよ。オレは先週から関西にも出張しなきゃいけなくなってて、朝7時半の新幹線に乗らなきゃいけないんだ。地獄だ!と思ったけど、よく考えたら九州の高校生たちはその時間にはもう教室に座らされてるんだよね。7時半の時点で〝電車に乗る〟ようではまだまだ甘い(笑)。

外山 ちょっと遠くから通学してる奴だったら、6時半に家を出るとか、べつにフツーだもん。……この問題があるから、九州の高校では〝登校時街宣〟をやりにくいんだ。登校時間を狙って高校前で街宣しようと思ったら、朝7時すぎからワーワーやらざるを得ないでしょ。西村修平(在特会の桜井誠の師匠格として有名な〝行動する保守〟の元祖的活動家だが、3・11で反原発派に転じた)は東電の社長宅前で毎日早朝7時からとか(笑)、トラメガでガンガン街宣をやってたそうだし、べつにやってもかまわないんだけど、西村修平と違ってヒヨワな常識人なんで、近所迷惑を考えてつい自粛してしまう。朝課外をやってるほうが悪いんだから、こっちが文句云われる筋合いはないんだけど、日本では言論の自由より朝課外みたいな野蛮な風習のほうが優先されるからなあ。


 外山流〝反管理教育〟運動vs部落解放同盟

藤村 オレが理解不能なのは、日教組は何をやってるんだってことですよ。

外山 まったくおっしゃるとおり。

藤村 なんでこんなバカげた制度を放ったらかしにしてるのか。生徒も大変だけど、先生だって異常な勤務時間を強制されてるわけでしょ。

外山 まさにそこらへんで、ぼくらは解放同盟と揉めたんだよね。

藤村 ん? なんで?

外山 形式上は正規の授業じゃないから、朝課外は朝課外で、授業料を別途徴収するでしょ。部落の貧しい家庭はその負担に耐えられないから、免除しろっていう要求を解放同盟は掲げてたんだよ。つまり出席を免除しろっていう話ではなくて、無料で参加させろって要求ね。

藤村 そんなに高額な料金でもないでしょ?

外山 そうだけど、まあ運動の〝ネタ〟としてやってたんだと思う。学校のありように何やかんや文句をつけて闘って、運動の活性化なり継続なりを図るのはべつにいいんだ。でもそんなの、要は不当な補習制度を補完するような運動じゃん。反管理教育運動の一環として補習制度それ自体を問題視してる我々からすれば、解放同盟ふざけんなって話に当然なる。
 解放同盟系の高校生集会に乗り込んで、この問題をめぐる解放同盟の方針を糾弾しまくって、あれはメチャクチャ揉めたね。当時は我々も若くてイケイケで闘争心旺盛だったし、こっちは5人ぐらいで、向こうは顧問の教師とか解放同盟の活動家も含めた何百人で、さんざん罵倒されて怒号が飛び交う中、徹底的に闘い抜きましたよ(笑)。日教組というか福岡の高教組(高校版の日教組)も当然、解放同盟側だから、〝補習制度そのもの〟を問題にすることなんか思いもよらない。

藤村 なるほど!

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