外山恒一＆藤村修の時事放談2018.４.25「〝いい人〟安倍ちゃんは政治家には向いてない」（その３）

　【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

　〈「その２」から続く〉
　〈全体の構成は「もくじ」参照〉

　ＦランのＪ出版界が粗製濫造するＦラン文化人の順列組み合わせ的な対談本の類とは比較にもならん超ハイレベル対談なので意外と……いや当然ながら大人気の、福岡在住の同い年の天皇主義右翼（でもインテリ！）・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
　2018年４月25日におこなわれ、紙版『人民の敵』第42号に掲載された。。

　第３部は原稿用紙21枚分、うち冒頭９枚分は無料でも読める。ただし料金設定（原稿用紙１枚分10円）にはその９枚分も含む。

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　安倍ちゃんも反アベ派もポスト・トゥルース

藤村　しつこく〝アベ政治を許さない〟の話に戻しますけど……。

外山　〝時事放談〟だしね。

藤村　うん、律儀に。……安倍内閣の本質は〝ポスト・トゥルース〟的な風潮を最初に政治に持ち込んだ、いわばトランプの先輩ってところにあって、ただしトランプより不徹底で、政権基盤はポピュリズム的なものではないから、トランプほどデタラメにはふるまえない。
　それでもやっぱり〝ポスト・トゥルース〟が安倍内閣の本質だよ。だからその部分をこそ追及すべきなんだけど、よく考えたら〝アベ政治を許さない〟の側もみんな〝ポスト・トゥルース〟なんだ（笑）。だから批判にならない。安倍ちゃんの側も〝アベ政治を許さない〟の側も同類なんだもん。

外山　安倍ちゃんが〝ポスト・トゥルース〟的な様相をはっきり示し始めたのって、いつぐらいからだっけ？　最初からああいう人だった？

藤村　いや、特定秘密保護法案の頃はまだそこまでヒドくはなかった気がする。安保法制の頃はだいぶ〝ポスト・トゥルース〟だったかな。〝強行採決〟とかは歴代の自民党政権もしょっちゅうやってたわけで、〝ポスト・トゥルース〟とはあんまり関係ないと思うけど……。

外山　むしろ安倍ちゃん当人ではなく、稲田とか、登用しちゃった人たちの〝ポスト・トゥルース〟度が進んでて、それを庇ってるうちに安倍ちゃんもどんどんそうなったのかな？

藤村　そうかもしれない。あるいは安倍の支持者たちがみんな〝ポスト・トゥルース〟だから……うん、支持者の問題が大きいと思う。

外山　なるほど。安倍ちゃんもある意味ではポピュリストだけど、不特定多数を相手にしたポピュリストではなくて、特定の層に向けたポピュリストなんだよね。要はネトウヨ的な連中だけど、ネトウヨは当然〝ポスト・トゥルース〟だし、そこに向けてウケそうなことばかり云ってるうちにああなったのか。

　恒例の〝安倍ちゃん＝いい人〟説

藤村　安倍ちゃんって、人間的にはすごく〝いい人〟なんだと思うんだ。安倍ちゃんと直接会って話したら、我々も「あ、いい人だなあ」って思うと思う（笑）。

外山　そこは何となく滲み出てもいるんだろうね。安倍ちゃんはつい〝安倍ちゃん〟と云ってしまうけど、〝麻生ちゃん〟とか〝菅（直人）ちゃん〟とか、あんまり云う人いないもん（笑）。

藤村　だって籠池さんたちにまで百万円も献金したりしてるんだよ？　当時の安倍ちゃんは間違いなく籠池さんたちを〝同志〟だと思ってたはずで、自分の政治信条と合うような学校運営をしてて、「ぜひとも頑張ってください」ってことでポンと献金したわけでしょ。

外山　何の下心もない、純粋なカンパだよね。

藤村　なんて男気のある……（笑）。今でこそ切り捨てられたけど、当時の籠池さんにしてみれば、涙が出るほど嬉しいことだったと思うよ。だって正直、籠池さんは当時の保守系のエスタブリッシュメントたちの人脈の中ではだいぶ〝下〟のほうの人であるはずだし、そんなシモジモの人間に今をときめく総理大臣がポーンと百万円をカンパしてくれる。籠池さんはものすごく感動したでしょう。安倍ちゃんはそういう、義侠心のある人なんです（笑）。

外山　男・安倍晋三！

藤村　加計学園だって、〝早稲田〟とか〝慶應義塾〟とか、そういう〝一流どころ〟でも何でもないじゃん。

外山　シモジモの……。

藤村　そんなところに便宜を図ったって、政治的には何の得もないよ。単に長年の友人の〝誼み〟でしかない。友人が獣医学部の新設を長年ずっと志しているのに申請がちっとも通らないんで、何とかしてやりたいっていう、なんて優しい人なんでしょう（笑）。
　それに安倍ちゃん自身はヘイトスピーチっぽいことはまったく云わないでしょ。だけどヘイトスピーチをやるネトウヨとかは、日本医師会とかのエスタブリッシュメント連中と違って、自民党が野党になってもホイホイと民主党政権にすり寄ったりせずに、変わらず自民党を熱烈に応援し続けてくれたわけです。安倍ちゃんはその情誼を決して忘れることなく、総理大臣になってもネトウヨを切り捨てたりはしないし、むしろそっちを向いて政治を続けてて、時々フェイスブックで「イイネ！」とかしてくれるし（笑）、そりゃあネトウヨからすれば安倍ちゃんはもう、本当に血の通った、人間的な、素晴らしい首相だってことになるよね。
　にも関わらず、何だあの〝パヨク〟どもは（笑）。安倍ちゃんが人格的にメチャクチャであるとか、〝偏差値が低い〟とか（笑）、そんなことを云ってやがる。〝許せん！〟って気持ちになって当然です。

外山　〝あんな人たち〟に負けるわけにはいかないんです、と。

藤村　そうそう（笑）。そういう脈絡が〝アベ政治を許さない〟の人たちには見えてないんだ。やっぱりそこらへんは安倍ちゃんは麻生とは違うんだよ。

外山　麻生のほうがよっぽどヘイトスピーチもやってるよね。野中広務のことで「部落民を首相にしてはならん」とか云って、安倍ちゃんよりはるかにロクでもない。

藤村　麻生はもう、あれは単なる田舎の下品なオッサンだから（笑）。

　フェミニストはアベ夫妻を絶賛すべきだ

藤村　……とにかく安倍ちゃんは、恩義がある人たちとか身近な人たちとか、そういう人たちに対してはものすごく誠実な付き合いをする人なんだろうなと思う。人としてはたぶんかなり素晴らしい人なんだ。

外山　あの奥さんとも、あんなに考え方も違うのに、夫婦として長年連れ添ってるんだもんなあ。

藤村　うん、〝妻たる者、夫に従うべきだ〟みたいな家父長制的な態度はミジンも見せない。

外山　奥さんは原発反対とか大麻解放とか云って、三宅洋平と仲良くしてたりする（笑）。

藤村　あの夫婦はほんとに……。

外山　自立した……。

藤村　まさに〝自立した男女〟だよね。

外山　フェミニストが大絶賛していいぐらいの……。

藤村　まったくその通りだ。とにかく〝反安倍〟の人たちは、何か掴み損ねてると思うよ。たぶん安倍ちゃんを〝ファシスト〟呼ばわりしてる人たちも、最初は本気でそう云ってたわけではないでしょ。まあいつもの調子で、ルーティンというか、敵はとりあえず〝ファシスト〟呼ばわりしといたほうが士気も上がるし、ってことでしかなかったと思う。でもそれがこういう状況になると完全にマイナスに作用して、今では安倍ちゃんを本気で〝ファシスト〟だと思い込んでる奴もいっぱい出てきちゃってる。それは安倍批判の的を外しちゃう結果にしかつながらない。
　ここまできたらもう、いっそのこと……オレも福岡でやってる〝アベ政治を許さない〟のデモとかに２回ぐらい参加してるからアレなんだけど、安倍政権がもっと続いてほしい気もする（笑）。そっちのほうが面白いというか、どうなるのか見ものだ。だいたい安倍政権がもし潰れたら、パヨクの皆さんはどうするんだろうか？　石破や岸田を支持するの？（笑）

外山　彼らが支持してる共産党や立憲民主党が政権を獲るなんてことは、少なくとも当分ないんだもんね。

　〝MeToo〟ムーブメントへの違和感

外山　……話は変わるけど、云いにくい問題というか、云いにくい雰囲気が作られてること自体が問題であるような問題で……要するにぼくはこのかん、〝MeToo〟問題にずっとモヤモヤしてるんだ。個別には、今回の財務次官の件にしても、たしかにヒドい奴だとぼくも思うような事例が多いけどさ。
　だけど例えば財務省が、セクハラに遭ったという女性記者に、調査のために名乗り出てほしいと云ったことが問題になってるじゃん。もちろん、どうも事件を揉み消そうとしてる気配がなきにしもあらずの財務省が調査するから話がややこしくなるんだけど、ちゃんと独立した権限で調査できる部署が担当するんなら、そりゃあ被害を主張してる当人に出てきてもらわないことには話は始まらないはずだとぼくは思うんだよ。どこの誰だかも分かんない人間が匿名で告発したのをそのまま真に受けて、加害者とされた人を処分することなんかできないはずでしょう。
　ところが、名乗り出ろということそれ自体が、〝二次被害〟がどうこうって、〝問題〟であるかのように云われてる印象が強くて、ぼくは不愉快なんだ。