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教えて、あなたの世界

人の趣味について聞くのが好きだ。自分が全く興味がない分野であればあるほど好ましい。夫は鉄道全般が好きなのだが、お付き合いをする前に鉄道模型についてご教授お願いしたところ、ひどく難色を示された。

「だって、聞いたってわからないでしょ。興味ないでしょ」

ある種の人は自分の趣味を人に押しつけたがるが、ある種の人は他人はどうせわからないだろうと話したがらない。
私は押しつけがましいのは苦手だが奥ゆかしい人は好ましい。

「いや、そんなことないから。とにかく人が好きなものについて熱く語るのを聞くのが私は好きなの」

何としてでも夫の好きな物を聞き出したい。
半ば強引に仕事終わりに待ち合わせをし、行きつけの鉄道模型屋さんに連れて行ってもらい、Nゲージを見ながら何が好きなのかいつから好きなのか全くの初心者が始めるには何が必要なのかあれこれをぽつぽつと聞き、居酒屋で飲んで帰った。
それが夫と初めてしたデートである。

夫の方は「映画かボーリングでも行こう(無難に楽しめるから)」と提案してくれたのだが、私の方は仕事で疲れているのに、気を遣う相手とそれらを楽しむ余裕がなく、それなら相手のホームに飛び込んで聞き手になった方が間が持つと思い提案したのだった。

もし逆の立場なら、私なら嫌である。
付き合うかまだ分からない相手に自分の好きなものを語り、もしも引かれたらショックで立ち直れないし、自分の好きなものについてそれほど自信もない。当時の夫はよく受け入れてくれたものだ。申し訳ない。

そんな出来事を例に話を進めたが、とにかく私は(未知なものを)熱く語られるのが好きなのだ。
もちろん好きなテレビ番組は「マツコの知らない世界」である。

学生の頃、ゼミの教授から聞いた話を思い出す。

「女性はとにかく色々な男性とお付き合いをした方が良い。デートで色々な場所につれていってもらいながら、見聞を広げることができるから」

今の時代ならば「女性は○○した方が良い」というフレーズや男性主導のデートのあり方など、色々引っかかるかもしれないけれど(引っかかっているのは私だけかもしれませんが)

「友達でも恋人でも色々な人と付き合って自分の知らない所に行く経験をしたら良い」

と読み変えれば教授の真意が伝わるでしょうか。

「行きつけのカフェ、好きな店、趣味の場所」は人それぞれ違うわけで、そこに生活感や信念や好みが映るものだろう。自分で行動範囲を広げることももちろんできるが、全くの他人の生活の行動範囲にお邪魔するのは、全く知らないことへの視野を広げる貴重な機会になる。親密な相手であればあるほど、マニアックな世界を共有できる。そうするには恋人との交際が一番簡単にできるというわけだ。

そんなわけで、私が過去に戻ってもし交際する前の夫に「君の趣味の世界に連れて行ってよ」と言われたら、どこに連れて行くかしらと考えたのだが、大きな本屋さんか神田か早稲田の古本街、日暮里の生地問屋街、合羽橋商店街かなあと思いついた。中野ブロードウェイか高円寺の散策も良い。
…羅列していたらそれは別に交際前の夫と行きたいわけではなく、今、私が一人で行きたい場所なのだけれど。

趣味って他人と分かち合いたい場合と一人で没頭したい場合がある。

夫は鉄道の趣味を誰かと盛り上がりたい性質ではないので、サークルなどに属さずひっそりと続けているのだが、私も同じで作文を書くのは好きだが誰かと一緒に共同で執筆するのは得意ではない。

私にとって趣味とは誰かと楽しむものではなく自分と向き合うための手段として趣味があるという感じである。

とはいえ、普段は一人で楽しむ趣味でも、誰かにこんな素敵な世界があるのを話したい、少し共感して欲しい。と思う時ももちろんある。時々は心許せる相手と趣味の世界を歩きながら話しをしたいなあと思う。

人の数だけ趣味がある。少し親しくなると思いもよらない趣味を語ってくれる人もいる。だから、私は人の趣味や好きなものについて聞くのがやめられない。もし、いつか私があなたと会う機会があったら、あなたは何が趣味なのか、ぜひお聞きしたい。私にはマツコさんほどの力量はないけれどあなたの好きな物や趣味について存分に語っていただけたら心からうなずいて聞きたいし、その世界の入口に立たせていただけたらすごく嬉しいです。

さて、今日は2021年最後の日曜日のようです。2020年8月の終わりごろから毎週日曜日の更新を始めたようなので、細々ながら1年以上このスタイルを続けていることになります。71周続いているらしいです。皆様、毎週お付き合いくださり本当にありがとうございます。

↑個人的な記録ですが物は試しにご覧いただければ幸いです。

さて明日から年末に向い慌ただしい日々が始まるかと思います。どうかご自愛ください。

今年もありがとうございました。どうか良い年をお迎えください。

そして来年もどうぞよろしくお願いいたします。