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移住して、子どもを自然の中で育てたいと思っている方へ

こんにちは。
トネガワ フミと申します。
東京から富山に移住して5年目の主婦です。
5歳と8歳の娘2人と、夫との4人で暮らしています。

私には、なんとなく思い描いていた子育てというのがありました。
縁側のある家に住んで、子どもたちが庭や田んぼや川で自由に遊んでいる、
というような田舎の風景。
イメージは「トトロ」に出てくるサツキとメイが引っ越してきた村のような感じでしょうか。

夫の転勤で富山に住むことが決まった時、「これで、トトロがいそうな自然の中で子育てが実現できる」と嬉しく思ったものです。

ところが! です。
実際は、そう簡単にはいきませんでした(笑)。
移住さえすれば自然の中で子育てができる、というわけではないのですね。

移住して住んだアパートは住宅街の中。夫は会社員。おばあちゃんの家があるわけでもない我が家。庭も畑もない。土地勘もなくて子連れでいける山も川もわからない…。

「地方」と言われる場所であっても、街の中に住み、会社勤めをして時間に追われて生活していれば、都市部に住んでいるのとなんら変わりはありません。

それどころか、自然環境は「ありがたいもの」として公園や街路樹で緑が保存されている都市部と違い、身の回りの自然は「あたりまえのもの」である地域では、日常的に緑に触れる機会は都市部より少ないと言っても過言ではありません。(これには車社会ということも関係していると思います。)

そこで今回は、
東京から富山へ移住した私の試行錯誤をシェアしながら、「自然の中で子育てをしたい」と思っている方のヒントになればいいなと思って書いてみます。

0 古民家暮らしはとりあえずあきらめました(笑)

実は、移住当初は「古民家に住みたい」と思って、
週末ごとに古民家探しをしていました。

「自然」と言うとき、
その中にはいくつものイメージが含まれていることがあります。

私が「自然の中で子育てをしたい」と思うなかでの「自然」とは、
「山川海などの自然環境」の他に、「食」「手仕事」「人とのつながり」「暮らしのリズム」など、自然環境と自分たちの暮らしとが循環している包括的なものでした。

ですので、
まるっと全部を叶えるために「古民家で暮らしたい!」と思ったのですね。
短絡的と言えば短絡的です。

けれど、移住5年目。
結論から言うと「古民家暮らし」はまだ実現できていません。
半分は出来なくてあきらめた、と言えます。
けれど残りの半分は、
実現せずとも満足できるようになった、という心境です。

ポッと移住して、古民家に住むというのは
思った以上にハードルが高かったです。
探してみて気が付きました。
(夫は探す前から気づいていたそうです…(笑))
雑誌などで古民家暮らしをしている人は相当すごい人です!

1つ目の壁は、仕事です。
我が夫は会社員。どうしたって、通勤を考えなければなりませんでした。
あまり山奥で、雪が降ったら通勤できない場所に住むわけにはいきません。

2つ目の壁は、子どもたち。
空き家見学をさせてもらうと、子どもたちが「怖い」と言うのです(笑)。
実際に購入してリノベーションすれば、住みやすくなるとは思いますが…、そこまではかなり長い道のりです。
古い家は周りの木が茂っていたり、屋根が崩れかけていたり、カビの臭いがしたり、ゾゾゾゾゾっと蛇が通り過ぎて行ったりします。
私はワクワクしてしまうタイプですが、現代のキレイな環境に住み慣れた子どもたちにとっては少し刺激が強いのは事実です。

3つ目の壁は、
まだ、「ここだ!」という場所に出会えていない、ということです。
縁もゆかりもない土地で古民家を購入し、手入れをしながら暮らしていくというのは大変な覚悟が必要です。
ですので、ビビビっ!とご縁を感じる場所や家があれば決心をして起業するとか人生を変える決心をするかもしれませんが…。
まだ今のところビビビっとくるところに出会えていません。

「トトロ」の風景や、テレビで見ていた「DASH村」、石見銀山「群言堂」で有名な松葉登美さん、小田原の山を開墾するイェンス・イェンセンさんファミリーなどへの憧れはまだまだあります。

ですが、古民家探しで壁にぶち当たってしまったので、
「古民家に住む」と、「自然の中で子どもを育てる」を切り離して考えることにしました。


1 検索は「森のようちえん」で 

私の体験からですが、
「自然の中で子育て」のきっかけをつかむためには、
インターネットで「森のようちえん」と検索してみるといいと思います。

「森のようちえん」というのは、北欧諸国発祥とされる野外保育活動です。
日本では「森のようちえん」に対して大きなピラミッド型の組織があるわけではなく、「自然の中で子どもを育てたい」人が独自で立ち上げた団体や活動が、各地に存在しています。
2005年に「森のようちえん全国ネットワーク」というものができ情報が得やすくなりました。2014年に行われた「森のようちえん全国実態調査」には179施設が回答していますので、実際にはおそらくそれ以上の数の団体や活動があると思います。

各地でそれぞれ独自の発足、発展をしているので、保育士さんが子どもを預かって自然の中で遊ばせてくれるところもあれば、親の自主保育という団体もあります。
平日に毎日通える保育園のような施設もあれば、週末や長期休みなどに誰でも参加できるイベントを開催しているような活動、自然学校のように小学校低学年くらいまでの子どもまでの教育に取り組んでいる団体などもあります。認可保育園、無認可保育園、NPO法人、企業、任意団体など組織形態も様々です。

私が移住した富山県で、「森のようちえん」と検索すると下記の3つが出てきます。


◆富山森のこども園/任意団体 
(週1回親子サークル型/週末イベント)

◆まめでっぽう/認可外保育施設 
(平日預かり型/親子参加型)

◆ガイア森のようちえん/NPO法人
(平日預かり型/週末習い事/長期休暇イベント)


移住した当初に、検索でヒットしたのは「富山森のこども園」だけでしたので、そこに行ってみることにしました。

「富山森のこども園」は、富山市にある「自然博物園ねいの里」という、低い山が3つ分くらいある自然公園で主に活動しています。野外保育とシュタイナー教育を2本柱として活動する「富山森のこども園」の活動はこんな感じです。

【森のようちえんの一日】
………………………
朝10時 親子で集合
・手作りおやつを食べる
・みんなで森の中を散歩
・季節によっては木の実を摘んだり、水遊びをしたり
いつもの炭焼き小屋に到着
・木の枝には、お手製のブランコやハンモック、
少しの手仕事
・蜜蝋のロウソクを作ったり、季節の行事の工作をしたり
子どもたちは自由に遊ぶ
・大人は薪から火を起こして、大鍋でスープを作る
(味噌汁の時もあれば、豆乳スープやトマトスープの時も
森の中には、焚火とスープのなんとも言えないいい香りがただよいます!)
・スープとお弁当を食べたら子どもたちはまた遊ぶ
14時 帰りの時間
・当番の大人が絵本を読む
(こどもたちは真剣に聞き入ります)
・歌を歌ってさようなら
………………………

子どもが育つとき、夢中で遊べる場所とゆったりした時間を与えてやりたいなと思っています。
親だけでは実現するのが難しいそのような時間を持たせてくれる「富山森のこども園」に、とても感謝しています。

「自然の中で子育てをしたい」という共通の思いを持っているので、
そこに集う大人たちと過ごす時間は私にとっても、とても気持ちいい時間です。

東京でも「森のようちえん」の活動に参加させていただいたことがありましたが、そこに集う人々も、私の知らない世界を見せてくれる視野が広く、心もちが自由な素敵な方たちでした。

これは勝手な印象ですが、アウトドア好きはもちろん、音楽やアートを仕事にしている人や、外国移住経験があったり、夫婦のどちらかが外国出身だったりする人が多い気がします。

でも、私のような元会社員で今は主婦というフツウの人もいるから大丈夫です(笑)

行政が積極的に「森のようちえん」活動を推進している地域もあると聞きます。「自然」「子育て」のキーワードでワクワクする方は、「森のようちえん」でぜひ検索してみてください。


2 情報源は移住者同士のつながりから 

これを読んでくださっている方は、「自然の中での子育て」と「移住」に興味がある人だと思います。
ですので、ここだけの話をさせていただきます。

富山へ移住して発見したことですが、
生粋の富山県民のほとんどは、
「自然の中で子育てをしたい」なんて思っていない! ということでした。

「自然の中で子育てをしたい」なんて言っていること自体が、
「都会から来ましたって感じ」だそうです(笑)

実際、雪だけでなく雨もよく降る富山県は、屋内の遊び場や体育館がとても充実しています。
なので、生粋の富山県民親子は、暑い夏、寒い冬、雨の多い春と秋、通年で屋内で遊んでいます(笑)

けれど、そこは自然豊かな富山県。
アウトドアで遊ぼうと思えば、スキー、海水浴、キャンプなど本気の遊び場にことかきません。安い、近い、空いている、で手軽に遊べるし、本格的にカヌーやスキーなどのアウトドア競技に取り組む環境もあります。
なので、普段は屋内で遊び、ここぞというときにダイナミックに自然の中で遊ぶ、というのが富山流?なのかな、と密かに観察しています。

そのため、
〇〇に行けばホタルが見れるよ、とか。
小さい子と散歩するなら〇〇がいいよ、など
日常的な自然あそび情報を聞きたい場合は、
地元の方ではなく移住者同士のネットワークの方がよいです(笑)。

子育てに関する移住者のネットワークとして、富山では以下の3つがオススメです。


◆「転勤ノオト」(全国)
引っ越す人たちが支え合うWebマガジン

Webマガジンでは「転勤族の妻や家族」「引っ越し」「ママの働き方」「子育て」などをキーワードに情報を発信。
リアルな活動拠点である富山県では、移住定住促進イベントの企画や、新しい働き方への提案イベントなども開催している。「転勤族(移住)ママの月イチ交流会」を開催。


◆「ママスキー」(富山、石川) 
富山・石川の子育てママのための情報サイト

富山県内の子育てママに圧倒的な人気を誇るママ情報サイト。
気軽にママ会ができる「ママスキーハウス」という交流スペースを運営。
「県外(移住)ママ」「起業ママ」「1歳児ママ」「双子ママ」など、キーワード別のママ会を開催しているので、自分と興味関心の似ているママたちと出会える場になっている。
県内企業と連携して大小様々な子育てイベントも開催。


◆「くらしたい国、富山」(富山)
県が発信する移住情報  https://toyama-teiju.jp/

富山県では、県が積極的に移住定住を促進。
随時行われている「移住者向けイベント」に参加してみると、移住者を歓迎してくれる雰囲気があり嬉しくなる。特に都市部から移住される人は「こんなに歓迎してくれるの?」と感激すること間違いなし(笑)。一歩踏み出して参加してみることをお勧め。


3 思い切って自分の興味を発信してみる

少しずつ「自然」や「子育て」の話ができるお友だちや知り合いが増えてきたら、今度は自分の興味をピンポイントで発信してみることをお勧めします。

私の場合は「魚」でした。
富山のスーパーで出会ったお魚が美味しすぎて、
「お魚をさばきたい」と声に出して言ってみたところ、
お魚さばきママサークルを始めることになりました。

同じく移住してきた先輩ママが、漁師さんや料理人さんに話をつけてくれて、場所を探してくれました。
私も手づくりのチラシを作り、ママ友に配って開催したお魚さばき勉強会。

そこで出会った家族は、一緒に川や海に行ったり、焚火で焼き芋の会をしたりと、一緒に子育てをしてくれる大切な友人になってくれました。

魚に興味を持ったことで季節の移ろいを感じられるようになりましたし、
お魚をさばいて命を美味しくいただくという行為は、
私にとってはまさに自然の中で子どもを育てたいという思いに合致するものでした。


まとめ

地方に移住すれば、自動的に自然の中で子育てができると思っていたけれど、そうではないということに気づいた移住1年目。
古民家に住むという夢をとりあえず保留にして、
自然の中で子育てをする方法を色々模索してきたこの4年間です。

Uターンの方とか、地元の人と結婚して移住したとか、知り合いがいるなど、土地にツテがある方は、ぜひそれを存分に活用されたらいいと思います。素敵だなぁとうらやましいかぎりです。(そこにはそこのご苦労もあると思いますが…)

私のように、ツテもなく情報もなくうっかり移住しちゃった方はぜひ移住先で「森のようちえんで検索」→「移住者ネットワークに首をつっこんでみる」→「思い切って自分の興味を発信してみる」で、自然を感じながらの楽しい子育てを試してみてくださいネ。


利根川さん写真

【ライタープロフィール】
トネガワ フミ
2016年1月に夫の転勤について富山に移住。東京都出身。若い頃は金融機関勤務でまちづくりに従事。(金融機関がまちづくりをしている事例って意外とあります) 今、はまっているのは“子育て”と“富山の魚”。偶然性や未完成なものに惹かれるタイプ。子どもが育つ楽しみや資源をシェアする「子どもと暮らしの企画toyama」主宰。ママのためのお魚さばきサークル「ママ×おさかな」共同代表。
富山県呉西にて、夫と娘2人との4人暮らし。ライター、エッセイスト。

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