見出し画像

【参加レポート】とやま帰農塾2022 「五箇山掘レッキング塾」(2023/2/24~2/26)

とやま移住note管理者スタッフの「N」と申します。
富山県主催、NPO法人グリーンツーリズムとやま企画の田舎暮らし体験プログラム「とやま帰農塾」をご存じでしょうか?

2022年度最終回の今回は、世界遺産・菅沼集落での生活や文化について知り、体験ができる「五箇山掘レッキング塾」に2泊3日で参加してきました。

2022年度 とやま帰農塾の体験レポートはこちら

とやま帰農塾2022「灘浦塾」(2022/5/28~5/29)
とやま帰農塾2022「南砺塾」(2022/7/9~7/10)
とやま帰農塾2022「立山塾」(2022/10/21~10/23)

★五箇山掘レッキング塾の主な体験メニュー★
・塾長が案内する世界遺産・菅沼集落散策
・古民家のライトアップ作業と夜景鑑賞&撮影会
・郷土御膳と民謡体験・こきりこ節の踊りを見学
・赤かぶ掘レッキング
・かんじきを履いて集落散策
・地元酒蔵利き酒&お酒を学ぶ
・石臼でそば粉挽き、そばがき鍋作り

一日目【開講式】

塾長をはじめ、県職員、南砺市職員の皆様からご挨拶をいただきました。
五箇山塾は平成19年から始まり、今年で16年目。冬ならではのプランを堪能して、五箇山の人間性や自然の良さを知ってファンになってください、冬場の五箇山塾は辛いこともあるかもしれませんが、その暮らしを体験することで理解を深めていただきたい、とのお言葉。その後、塾生5名より、一言ずつ自己紹介を行いました。

五箇山掘トレッキング塾 開講式

【塾長が案内する世界遺産・菅沼集落散策】

塾長に伴われ、世界遺産・菅沼集落へ。
菅沼集落には現在26名の方が住んでいらっしゃいます。
人々が実際に生活しているということが評価されての世界遺産なのだそうです。合掌造りの茅葺屋根に使用される茅は「茅場」で育てられますが、「茅場」の整備・維持・管理がユネスコの無形文化遺産に登録されたことをとても誇りに思うと塾長がおっしゃっていました。良質な茅を作るためにはマンパワーが必要だそう。ケイ素が含まれた土壌で育てると丈夫で長持ちします。また、ガラス繊維が含まれるためピカッと光るそうです。

塾長から合掌造りの屋根に使用する茅の説明を聞きます。
菅沼集落は1995年12月に世界遺産として登録されました。
雪に覆われた菅沼集落。それでも積雪量は昨年の3分の1だそうです。

五箇山の冬場の天気はとても不安定だと感じました。ついさっきまでは青空も出ていて暖かかったのに、急に雨が降り出し、寒くなってきました。宿泊所の合掌の里まで急いで戻ります。

集落散策後は地元の日帰り温泉で温まります。
くろば温泉は、地元の方々だけでなく観光客やスキー客も利用する人気の日帰り温泉です。オーストラリアから来たご家族連れも温泉を満喫していました。

ダム湖に面した露天風呂からの眺めは絶景です。

【郷土御膳】

浄土真宗の開祖・親鸞聖人の命日にはその遺徳をしのんで報恩講という仏事が行われます。その後にふるまわれるのが報恩講料理。ヨーロッパ風に考えるとビーガン料理と(塾長談)。動物性のものは一切使用しません。
輪島塗の朱塗りの器には五箇山豆腐、ぜんまい、ウドなどが並びます。包丁をあまり使わないのが特徴。五箇山豆腐はとても固いので味をしみこませるためにとろ火でゆっくり仕上げていくそうです。ご飯が少ないのは、小さな気配り。一杯目を一口で食べたあとは、おかわりをしてくださいねというメッセージが込められています。二杯目は山もりに盛られたご飯がでてきます。もちろん塾生全員がおかわりをして美味しくいただきました。

材料はその年に採れた一番良いものを使用します。おもてなしの心がこもった料理でした。
汁物のいとこ煮。中に入っている小豆は親鸞聖人の大好物だったそうです。

【民謡体験と古民家ライトアップ】

地元のHさんに「こきりこささら踊り」をご披露いただきました。
「ささら」は檜の板108枚を組んで作られる、こきりこには欠かせない楽器です。ささらを打ち鳴らすことによって108の煩悩を追い払うとのこと。
狩衣の衣装をまとった優美かつ力強い踊りに魅せられました。

ささらを打ち鳴らす音が心地よく室内に響き渡ります。

ちなみに五箇山地区にある南砺平高校の郷土芸能部は、2022年8月に行われた「全国高等学校総合文化祭東京大会」の「郷土芸能部門」で日本一となる最優秀賞と文部科学大臣賞を受賞。部員たちは大会で「こきりこ」を披露したそうです。

地元の方々や塾生全員で準備した古民家のライトアップを鑑賞します。
雪の壁を四角に削って作った設置台の中で、ろうそくがゆらゆらと幻想的な光を放っています。

ライトアップされた合掌の里「水上家」

二日目【赤かぶ掘レッキング】

氷点下、一面銀世界の朝を迎えました。空気が澄んでいて、身も心も引き締まります。

朝のお散歩

朝食の後は雪中の赤かぶ掘りに出かけます。雪かきを行いながら、赤かぶの畝まで掘り進めていきます。

なんとか畝に到達
雪中の赤かぶを手で掘りおこします。軍手はつけていますが、手がかじかんできます。
赤かぶにまつわるお話を聞きます。

採れたての在来種の赤かぶはみずみずしく、爽やかな梨のようなお味です。
この赤かぶ作りは、塾長がある集落のおばあさんから盃1杯分の在来種の種をいただいたことから始まりました。
昔ながらの種からできる赤かぶを作り続けてほしいというおばあさんの願い。この種を譲り受けるときに作り続けることを約束したそうです。焼き畑に種をまき、草刈りはせず、また肥料も使わない農法で作ると不思議と虫がつかないそう。

【かんじきトレッキング】

午後からは、和かんじきとスキー用ストックを持ち、吊り橋を渡ってトレッキングに向かいます。

吊り橋にて、一時足をとめます。
吊り橋から見た風景。深緑の川の色がとても印象的です。
和かんじき

和かんじきはクロモジの枝で作られます。昔の人は1年くらいかけて自分のかんじきを作ったそうです。
長靴だけで雪の中を歩くと、ずぼっと体中が雪にはまってしまい大変なことに。和かんじきを履くことでそれを防ぐことができます。

和かんじきを装着し雪中へ。

慣れていないので足が絡んで思うようには歩けません。かんじきを履いた片方の足で、もう片方の足を踏んでしまい、塾生全員が雪の中で滑ったり、転んだり。そこで塾長から、「花魁(おいらん)歩きをすると歩きやすくなるよ。」とのアドバイス。試してみるとなるほど、さっきよりもスムーズに歩けます。

途中、昔ながらの冬場の野うさぎハンティングについて教わります。

野うさぎは夜行性の動物で、昼間は木の根っこのところに入って寝ているそうです。冬場は全身真っ白になりますが、耳の先のほうだけ黒いので、それを目印に野うさぎを探します。細い木の棒を野うさぎにあてないようにして飛ばすと空気を切り、野うさぎには鷹の羽音に聞こえるらしく、雪穴に隠れます。そこをすかさず手で塞ぎ、野うさぎをハンティング。以前は五箇山で暮らす人々を支える冬場の貴重なたんぱく源となっていました。

トレッキングは考えていたよりも大変でした。まず、天気がコロコロ変わります。晴れて青空が出てきたと思いきや、急に雪が降ってきて吹雪いてくる。会話をする余裕が徐々に無くなってきて、聞こえてくるのは自分の吐息と、かんじきを履いて雪の中を歩くザクザクザクという足音だけ。そうしたなか、塾長や村の人の声かけとサポートに励まされながら全員無事にトレッキングを終えることができましました。ほんの少しですが、五箇山の冬の厳しさを体感しました。

【地元酒蔵利き酒&お酒を学ぶ】

二日目の夕食。郷土料理をいただきながら、地元酒蔵の利き酒とお酒について学びます。

イワナを焼くとても香ばしい匂いが食欲をそそります。
地元五箇山の幸が並びます。

地元・山本豆腐店の丸山(まるやま)、蕗の薹、焼きたてのイワナ、ウド、赤かぶの甘味付けなどがところ狭しとお膳に並びます。この地域では、がんもどきのことを「まるやま」という呼び方をするそうです。具だくさんで、食べ応えがあります。少し早めに芽吹いた蕗の薹は苦味が効いていて、春の訪れを感じさせてくれました。そして、地元のHさんが焼いてくれたイワナは絶品。外はパリパリ、中はふっくらとしていて丸ごと食べられます。

明治13年創業の地元の酒蔵・三笑楽のお酒は地元食材の山菜やジビエなど、癖のある食材に合うよう、伝統的に辛口に造られています。三笑楽の社長でもある七代目杜氏は、地元の人に愛される骨太のお酒を造り続けたいのだそう。裏山にブナの原生林があり、そこからの伏流水でお酒を造ることがこだわりだそうです。利き酒でいただいたお酒は、地元の酒屋さん、おみやげ物屋さんでも比較的手に入りやすいそうです。美味しい郷土料理と三笑楽のお酒を いただく。 とても贅沢で、 心豊かになるひと時でした。

   左:純生吟醸 ・・・フルーティでやわらか いお 味                
中央: 蔵出し生原酒 ・・・ 春一番に出される この時期ならではのお酒    
    右: 濁り酒・・・熱を通していない生酒 で、 アルコール度数が高くすっきりとした辛口
二日目もライトアップされた夜の景色を楽しみました。
ピンク色のライトに照らされて、夜桜を見ているかのようです。

三日目【石臼でそば粉挽き・そばがき鍋作り】

三日目の朝食はパン、スクランブルエッグ、ベーコンなどの洋食です。食事に変化をつけてくださる心遣いが嬉しいです。こちらも美味しくいただきました。

3日目の朝食。こちらも残さずいただきました。

まずは、石臼の挽き方を塾長から教わります。そのあとは、塾生全員で協力しながら、実際に挽いてみます。始めは恐る恐る、慣れてくると、そばの実を挽く速度も速くなり、石臼の間からどんどん粉が落ちていきます。まわりにたまった粉をかき集めてさらに挽き、ふるいにかける作業を繰り返し、なめらかな粉に仕上げていきます。

無心になって石臼を挽きます。
挽きあがったそば粉。上手に挽けていると塾長から褒めてもらいました。
そばがき鍋が出来上がりました。

キノコや野菜がたっぷり入った鍋に熱湯でこねて団子状にしたそばがきを入れて出来上がります。
何とも言えないふっくらとした触感のそばがきは絶品で、塾生全員がおかわりをして平らげました。

地元・拾遍舎(じっぺんしゃ)さんのお蕎麦も一緒にいただきます。

【閉講式】

塾長、塾長と一緒にお世話をしてくださった地元のHさん、南砺市職員の方から、閉講のご挨拶をいただきました。そして、冬の五箇山だけでなく、春・夏・秋の五箇山も体験してファンになってください!と。たしかに、冬だけでなく、五箇山のすべての四季を体験してみたくなります。
塾生一人一人からも感想を発表。世界遺産バスに初めて乗って楽しかった、富山への移住が決まった後にもまた五箇山を訪れたい、農業に対する塾長の熱意を感じた、共同作業でそば挽きをしたことで塾生皆が仲良くなれた、伝統芸能に興味があるので、こきりこを鑑賞できてうれしかった、など、様々。とても名残惜しい雰囲気のなかでの閉講式となりました。

【感想・まとめ】

内容が盛りだくさんで、とても充実した3日間でした。塾長をはじめとする関係者の方々には大変お世話になり、感謝の一言しかありません。赤かぶ掘り、冬のトレッキングなど、とても貴重な体験をさせていただきました。
また、塾長の子供のころからの体験に基づいた生活にまつわるいろいろな話を聞かせていただいて強く感じたことは、昔ながらの文化や生活を伝承していくことの重要性や難しさです。日本の伝統や世界遺産を守っていくためには、自らも当事者となって動いていくことが必要であることに今さらながら気付かされました。

コロナ禍も落ち着き、近頃は五箇山を訪れる方も増えてきているということです。皆様も機会があれば是非五箇山に足を運んでみられてはいかがでしょうか。

帰りの世界遺産バスを待っていると、少し青空が覗いてきました。

「とやま帰農塾」の情報や、その他の移住関連イベントなどの情報は以下のサイトやSNSをご確認ください。
NPO法人グリーンツーリズムとやま「帰農塾」
富山県移住・定住促進サイト「くらしたい国、富山」
富山県就農ポータルサイト「とやま就農ナビ」
とやま移住 「Facebook」 「Twitter」 「LINE」 「Instagram


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?