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群の作用

※随所適当な議論をしているかもしれません。ご了承ください

1.定義

定義
群$${G}$$、集合$${X}$$に対し、$${G}$$の$${X}$$への作用とは次の2つを満たす写像$${G\times X\rightarrow X : (g,x)\mapsto g\cdot x}$$のことである:
(1)$${G}$$の単位元$${e}$$と任意の$${X}$$の元$${x}$$に対し、$${e\cdot x=x}$$が成り立つ
(2)$${\forall g,h\in G}$$と$${\forall x\in X}$$に対し、$${(gh)\cdot x=g\cdot (h\cdot x)}$$が成立

注意
群は一般には可換ではない。これより、作用と言っても「右作用」と「左作用」が存在するが、今回は左作用について議論していく。

注意
群の作用を表す際は、$${g\cdot x}$$や$${x^g}$$と表されることが多いが、これらは乗算や累乗ではなくあくまでそういう書き方であり、ただの写像であることに注意されたい。

2.群の作用についての命題(appendix)

命題1
$${g\cdot \ast :X\rightarrow X:x\mapsto g\cdot x}$$は全単射である。

(証明)
背理法で示す。まず、単射でないと仮定する。
このとき、$${g\cdot x_1=g\cdot x_2}$$を満たす相異なる$${X}$$の元$${x_1,x_2}$$が存在する。
一方、$${x_1=e\cdot x_1=g^{-1}\cdot (g\cdot x_1)=g^{-1}\cdot (g\cdot x_2)=e\cdot x_2=x_2}$$が成立し、$${x_1,x_2}$$の取り方に矛盾。

次に、全射でないと仮定する。
すなわち、$${\exists x'\in X \text{ s.t. } \forall x\in X;g\cdot x\neq x'}$$が成立。
このとき、右辺$${=g\cdot (g^{-1}\cdot x)}$$となるので、写像の定義から$${x\neq g^{-1} \cdot x'}$$が成立。
(ここで、左辺の$${x}$$は集合$${X}$$の任意の元であることに注意・・・(1))
ここで、$${g^{-1}\cdot \ast :X\rightarrow X:x\mapsto g^{-1}\cdot x}$$は写像なので、$${X}$$のある元$${x''}$$が存在して、$${g^{-1}\cdot x'=x''}$$が成立し、これは(1)に矛盾。(証明終わり)

Remark
上の命題から、$${S(X):=\{ f:X\rightarrow X| f\text{は全単射} \}}$$とすると、写像$${G\rightarrow S(X):g\mapsto g\cdot \ast }$$はwell-definedであることがわかる。

実は$${S(X)}$$は写像の合成に関して群をなす。ここで、群の定義については以下を参照。

命題2
写像$${\phi :G\rightarrow S(X):g\mapsto g\cdot \ast }$$は群準同型である。

(証明)
$${g,h\in G}$$に対し、$${\phi (gh)=(gh)\cdot \ast =g\cdot (h\cdot \ast )=(g\cdot \ast )\circ (h\cdot \ast )=\phi (g)\circ \phi (h)}$$が成立するので、群準同型だとわかる。(証明終わり)

命題3
写像$${\phi :G\rightarrow S(X):g\mapsto \phi _g }$$が群準同型であるとき、$${G\times X\rightarrow X:(g,x)\mapsto \phi _g(x)}$$は作用である。

(証明)
・g=eのとき、$${\phi _e}$$は$${S(X)}$$の単位元であるから$${\phi _e=\text{id} _X}$$。すなわち、$${\phi _e(x)=x}$$。
・$${g,h\in G}$$に対して、$${\phi _{gh}(x)=\phi (gh)(x)=(\phi (g)\circ \phi (h))(x)=\phi _g(\phi _h(x))}$$となり、これは群の作用の2番目の条件に該当。
(証明終わり)

問題
次は同値であることを示せ:
(1)$${G\times X\rightarrow X:(g,x)\mapsto \psi _g(x)}$$は群の作用
(2)$${G\rightarrow S(X):g\mapsto \psi _g(x)}$$は群準同型
(hint:上の命題2,3の主張から導かれますので、それを自分なりにくみたててみてください)

以上

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