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140字小説集

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140字小説だけ集めたもの。コメント欄に設定付き。
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2016年9月の記事一覧

「…みかん?」武の眉間にしわが寄る。「そうめんにみかんとか…嘘でしょ?」信じられないという視線の先に瑞々しいオレンジ。「うちの地方では入れるの」「それは…酢豚にパイナップル以上の大罪だろう!」「…うっせーな、シチューにご飯盛るくせに…」同棲し始めて数日、私たちの溝は深まるばかり。

いつまでものろのろと靴紐を結び直してる頭頂部を見てたら、無性にイライラした。そんなの適当にガッと足突っ込めよ。巻き込んだってかかと履きつぶしたっていいじゃん味じゃん。そんな大事にしたって、ただの靴じゃん?「待たせてごめん!」まぶしそうに笑う。なあ、ただの俺じゃん。ほんとバカお前。