ずっと行きたかった大学に、行くはずだと思っていた大学に、合格した。番号があってよかった。番号がある想像ばかりしていた去年、番号がなかったから。
この一年間を、どう捉えようか。どう自分のなかに位置付けようか。クソみたいな一年だった、と言い続けたい。
春。自習室で予習をするだけで薄暗くなっていく夕方が、大嫌いだった。好きな音楽と好きな本だけに触れて、一日を終えたくて、勉強はほとんどやめてしまった。友達と喋るためだけに、予備校に通った。大学に受かるために耕すことを忘れてしまった知的好奇心は、底をついていた。日記を書いた。夜は散歩に出た。うたを作った。うたをうたった。授業は寝ていた。東京の友達と電話をした。夏。一緒に帰る人と帰るためだけに予備校に通った。友達と映画を見た。モデルナのワクチンを打った。友達とかき氷を食べた。毎日自習室で本を読み、寝て、新しい夏の曲を聴いた。英作文と漢字の勉強を少しだけした。なんのための勉強かわからなかった。ただ帰りの電車が楽しみだった。秋。季節外れの花火をした。少しだけ予習を始めた。内職をして授業中に先生に怒られた。花粉症と自意識にひどく悩まされた。みんなの目が怖かった。優しくなりたかった。芸術に触れる機会は次第に減っていった。結局勉強をせざるを得ないことに気づいた。東京の友達と電話をしても、同じ話題の繰り返しに終始することがもどかしかった。うたをつくった。うたをうたった。冬。けんかをたくさんした。保つことが、コントロールすることが、難しかった。向き合った。優しくありたかった。過去問を始めた。友達は失速を知らず、ずっと勉強していた。若気の至りか、と思った。泣けるようになった。日記を続けていた。受かりさえすればいいと思った。ごまかしていた。ごまかしたくない強い気持ちも、ごまかしていたし、ごまかしていることも、ごまかしていた。はやく、はやく、はやく、と急かしていた。急いていた。ひとり眠るために、うたをうたった。とろけていたかった。
クソみたいな一年だった。この一年のおかげで今がある、と言い続けるだろうが、美化したくない。確かに、素晴らしい一年だった。素晴らしい出会いに恵まれた。でも、きれいじゃなかった。ない方がいい一年なのだろう。クソみたいな一年だった。
現役で合格した友達は、「数学で失敗したけど、大学にキレてたらなんとかなった」と言う。これだ、と思う。キレればよかったのだ、と今さら気づく。大学にキレる。受験勉強にキレる。システムにキレる。クソみたいな一年だと言い、それにキレ続ける。そうすることでやっと、苦しみもがいた自分が報われる気がする。キレる。だきしめる。キレる。だきしめる。キレる。だきしめる。
一年。
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