【実験・検証室】 010:ニスを重ねる
印刷機で、印刷と同時に印刷面を保護したり、光沢感/非光沢感を与える表面加工があります。
それは、ニス加工です。
007・008でもご紹介したPP加工や、UVニス、水性ニス、プレスコートなど用途や目的によって様々な専用の機械で行う表面加工がありますが、今回はオフセット油性印刷と同時に行うニス加工についての検証をします。
ニス加工は、印刷と同時に加工できるためコストも納期も抑えられますし、さらなる後加工への適性も高いのが大きなメリットです。
オフセット油性印刷で通常使われるニスの中で、
光沢感を出し艶やかな仕上がりになるものをグロスニス 、
光沢感を消しマットな仕上がりになるものをマットニスと呼びます。
グロスニスが光沢感を、マットニスが非光沢感を持って見えるのは、人間の目にどのように光が入ってくるかで決まってきます。
※イラストはイメージです
人間の目は、光の反射でものを見ています。
しっかり反射され強い光が目に入ってくると、鮮明で艶やかに見え、乱反射して分散された光が目に入ってくると、ぼやけたように見えるのです。
「表面保護のためのニスではなく、そのニスの質感も楽しみたい!」というご相談をいただくことがあります。そういったご相談の中で「ニスって1度刷るより2度刷り重ねる方が効果があるんじゃないの?」という、“なんとなくそんな気がするけど、本当にそうなんだろうか?”と感じているデザイナーの方も多いように感じます。
検証
印刷物にニスを数回刷り重ねた時の、その効果の違いを見てみよう
検証スタート
カラー印刷でニスを引く時、 基本的には K・C・M・Y・ニスの順番で一気に印刷することが多いですが、今回はニスを引かないものも含め計6パターンでニスの比較テストをします。使用した印刷機は、オフセット印刷機の5色機(5色を一気に印刷できる機械)です。
グロスニスとマットニスそれぞれを上記パターンで見ることができるように、縦方向に伸びた ニスのベタ版を作成(ニスは最大4回刷り重ねます)。
こちらを検証物として印刷します。
ちなみに、グラデーションは各色のベタ(100%)〜 白色(0%)総和のグラデーションです。 CMYK4色のベタだと一番濃いところが400%のリッチブラック になってしまうので、現実的なものとして一番インキ量が多い部分を300%に抑えるため、今回はイエローを排除した【K】【C】【M】の3色のみでデータを作成しています。
印刷結果
印刷しました。
実際に印刷したものを、ニスごとに見ていきます。
【グロスニス】
グラデーションと同時印刷したグロスニス(1パス)と、グラデーションの翌日に印刷したグロスニス(1胴)。どちらもニスは1度引きですが、見たところ翌日に印刷したニスの方が光沢がありグロス感が高いです。
これは、インキが乾いていない印刷部分には後に印刷するインキが全て乗り切らない現象(トラッピング)のためです。グラデーションを印刷した翌日にニスを印刷すると、グラデーションのインキは乾いているためしっかりニスが印刷面に乗ります。
さらに、2〜4度とニスを重ねれば重ねるほどグロス感は上がっていることがわかります。
しかしここで問題発生。2〜4度ニスを重ねた部分にブロッキング(裏移り)発生です(用紙によって、裏移りの程度に違いがあります)。ニスを重ねるとインキの膜厚が上がることでグロス感は上がりますが、インキ量が増えれば印刷のリスクも増えることがわかります。
【マットニス】
グロスニスと同様、グラデーションと同時印刷したマットニス(1パス)と、グラデーションの翌日に印刷したマットニス(1胴)。どちらもニスは1度引きですが、見たところグロスニスと同様、翌日に印刷したニスの方が効果が高くマット感が上がっています。
そして、2〜4度とニスを重ねれば重ねるほどマット感は上がっていくだろうと思われるかもしれませんが、実はその逆。マットニスは重ねれば重ねるほどマット感は薄れて光沢感が出てくるのです。
※イラストはイメージです
また、マットニスもグロスニスと同様、2〜4度ニスを重ねた部分にブロッキング(裏移り)が発生しました(用紙によって、裏移りの程度に違いがあります)。こちらもインキ量が増えれば印刷のリスクも増えることがわかります。
用紙によってもグロス感・マット感の違いがありますので実際の検証資料をご覧になってください。裏移りなどを防止するためにニスを使用する場合は用紙の風合いを生かすような工夫もできますのでお気軽にご相談ください。
ニスを重ねる表現。比較印刷をしてみることで、様々な発見がありました。
求める表現は、印刷会社にご相談を。
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