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聖域。の三十五首

「この季節ならではのものを」と思い、滋賀は湖東三山のひとつで知られる『西明寺』へ出掛けてきました。

秋は紅葉の名所として賑わう古刹で、由来は平安時代へと遡ります。
現在は本堂と三重塔が国宝に指定されていて、山腹に築かれた庭園は国の名勝指定となっています。

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その歴史と佇まいで十分見事なお寺なのですが、「この季節ならでは」と足を運んだのは理由があります。

それは、境内の木々の緑と梅雨の雨をたっぷり含んだ一面の『苔』。

京都の苔寺・西芳寺さんが有名なので、一面の苔の魅力を知る人も多いのではないかと思います。

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今日は梅雨の中休みで夏日になりました。

苔の瑞々しさを心配しながら現地に向かったのですが、木々の梢が乾燥から守ってくれています。
日射しが強い一日でしたが、境内の土はしっとりと水分を含み、風はとても涼やか。


「これが雨中だったら別格の風情だろうな」と思いつつも、強めの木漏れ日に浮き上がる緑翠の世界に心を奪われます。
この時期の苔が放つ強い生命力を感じずにはいられません。

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小さな小さな緑翠の王国。
瑞々しい一面の緑からの贈りもの。

清涼さと濃密さを感じさせる「この季節ならでは」の山の空気が、季節限定の聖域を作り出していました。


第三十五首
不可侵の清く気高い現世うつしよ
摂理を宿した生命の庭
─── 音無桜花

2023.06.17.深更詠
小さな緑の王国に捧げる

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