音無桜花

詠みます。

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最近の記事

月と砂漠。の第百八十ニ首

第百八十ニ首 月あかり後ろにながく影法師 いまは中秋 砂漠は彼方 ─── 音無桜花 2024.09.17. 満月の夜。 今夜も駱駝は砂漠をゆくのでしょうか。

    • 季節のバトン。の第百八十一首

      第百八十一首 熱りを雫に溶かし秋時雨 夏の想いを引き継いでゆく ──── 音無桜花 2024.09.16. 黄昏の通り雨に 日が沈み、夜が訪れる頃合いから、雨が降ってきました。 通り雨のようです。 西の晴れた空には夕暮れの明るさが残っていますが、身の回りでは、頭上を覆う雨雲に夜がいつもより早く訪れようとしています。 急速に訪れる夜に、街灯があわてて灯りを点していきます。 中秋の名月の前日、小望月の姿もいまは見えません。 猛々しいほどに暑さを誇った今年の夏。 その

      • 月と吐息。の第百八十首

        第百八十首 秋月夜 虹雲あわく艷めいて 虫の音繁く吐息は微か ─── 音無桜花 2024.09.14. 日中は暑い日が続いていますが、朝晩の空気は随分とやわらいできました。 月の見た目もいくぶん秋らしくなり、鮮明さと温かみを兼ね備えてきた印象を受けます。 今夜の月齢は11。 月あかりに照らされて、彩雲が淡く輝いています。 微かな虹色の雲間に隠れた月。 艶っぽい空が秋の夜長を彩っています。

        • 残暑と月と。の第百七十九首

          第百七十九首 天をゆく秋に吹かれて涼しげに 弓張月はつれないお顔 ─── 音無桜花 2024.09.11. 今宵は上弦の月。 空の彼方は涼しそう。 なかなか去ってくれない厳しい残暑。 私は心身にこたえていますが、秋雲の向こうの弓張月は素知らぬ様子です。

        月と砂漠。の第百八十ニ首

          空蝉。の第百七十八首

          第百七十八首 とまり木に『生きた証』と残されて 主は何処へ九月の空蝉 ─── 音無桜花 2024.09.09. 夏色の緑を脱ぎさろうとしている桜葉の陰。 蝉の抜け殻がひとつ、美しい形のまま幹にしがみついています。 彼の抜け殻の主である蝉は、今年の暑い夏を声を限りに生きて、無事に全うしたのでしょうか。 抜け殻は、主のその後とは無関係に、 風雨に朽ち果てるのを静かに待っています。

          空蝉。の第百七十八首

          Happy Birthday🎉。の第百七十七首

          第百七十七首 初めぞめの淡海の桜とことはに この花咲くやににぎ八千代に ─── 音無桜花 2024.09.02. 今日はパートナーの誕生日です。 今年は誕生日の前々から「特別な言葉を」とリクエストされていました。 難易度の高いリクエストではあったのですが、短歌をきっかけに知り合った私達。 「誕生日に短歌を贈るので、相聞歌の形にしよう!」と相成りました。 始めのうちは私がプレッシャーを感じていたのですが、相聞になった時点でパートナーもプレッシャーを感じ出したようです(

          Happy Birthday🎉。の第百七十七首

          合唱。の第百七十六首

          第百七十六首 蝉たちの夏の命が地に散って 秋の夜に鳴く命になります ─── 音無桜花 2024.09.01. 残暑はまだまだ厳しいようですが、頭上で夏を謳歌していた蝉の合唱も聞こえなくなってきました。 今は音色涼しげな虫たちが、大地の草むらのなか、秋の夜長を謳歌しようとしています。

          合唱。の第百七十六首

          でんでん虫。の第百七十五首

          第百七十五首 野を分けて風が近づくその朝に でんでん虫がお出かけしてゆく ─── 音無桜花 2024.08.30. 台風、その前。 (まだ時間あるからな) (安全な高い場所に行くんやぞ)

          でんでん虫。の第百七十五首

          朧月『切』。の第百七十四首

          第百七十四首 風吹かば今こそ内を明かさなむ 雲わだつみの朧の月よ ─── 音無桜花 2024.08.23. 第百七十ニ首・朧月『慈』と対になる一首です。(当歌の投稿にともない、第百七十ニ首目は朧月『慈』に改題しました) 当歌は『慈』とほぼ同じタイミングで詠んだ歌なのですが、月に寄り添うニュアンスが上手く表現しきれませんでした。 『慈』は、朧月の短歌に最初に込めたかった思いを素直に歌にしています。私の技量不足と、真意を大切にした結果、『慈』は現代語を使った仕上がりになり

          朧月『切』。の第百七十四首

          宇宙船。の第百七十三首

          第百七十三首 地に落ちて静かに朽ちゆく宇宙船 公園遊具は外灯の下 ─── 音無桜花 2024.08.22. 外灯の明かりの下、誰もいない夜の公園の遊具たちは沈黙して佇んでいます。 ジャングルジムに滑り台がくっついた姿の遊具の頂上には、アクリル製の半透明な丸窓がありました。 何かの間違いで公園に帰還した、宇宙船の着陸船のよう。 丸窓を通して漏れてくる外灯の明かりは、眠りについた宇宙船をずっと見守ってきたかのようです。 写真が撮れなかったので、近しい雰囲気の画像をお借り

          宇宙船。の第百七十三首

          朧月『慈』。の第百七十ニ首

          第百七十ニ首 今宵こそ教えておくれ朧月 きみが光を隠した理由を ─── 音無桜花 2024.08.21. 夏の終わり。秋の始まり。 十六夜。 雲の影に閉ざした本心。

          朧月『慈』。の第百七十ニ首

          空をゆく。の第百七十一首

          第百七十一首 遠つ人雁金のゆく秋空を 見送るままに立つ道の端に ─── 音無桜花 2024.08.20. 鳥の群れが逆∨字型の列を組んで飛んでいきます。 私の住む地域は水鳥が多く、その姿をよく見かけます。梅雨が明けて餌の魚が豊富になってくると、三々五々に餌場の川や田んぼに来たり、飛び去って行ったりします。 鴨などの小型の水鳥も多くいます。 最近、隊列を組んで飛んでいく群れを見かけるようになりました。 渡りが始まる時期なのか、餌場への移動の途中なのかはわかりませんが、

          空をゆく。の第百七十一首

          渚。の第百七十首

          第百七十首 秋空に飛行機雲が尾をひいて 夏の名残りの渚のように ─── 音無桜花 2024.08.18. 飛行機雲。 天球を横切って残された航跡。 秋の風に流され、空に波打ち際を描いています。 名残りというには、まだまだ暑すぎる残暑です。

          渚。の第百七十首

          送り盆。の第百六十九首

          第百六十九首 蜩の鳴かない里での送り火の ご先祖様は少し都会派 ─── 音無桜花 2024.08.15. 私の両親は二人とも田舎の山間部の生まれでした。 父方も母方も、先祖代々のお墓はそれぞれ両親の生まれ故郷の山裾にあります。 幼少の頃、お盆に親に連れられてお墓参りに行くと「蜩の蝉時雨」「山鳩(キジバト)の鳴き声」「茗荷が自生している藪」が3点セットでした。 少し涼しさが感じられるようになってきた墓地でのお参りが済むと、帰宅後には冷えた西瓜が待っていました。 都会で

          送り盆。の第百六十九首

          種火。の第百六十八首

          第百六十八首 肩を打つ雨に凍える人影と 種火を分けあう言の葉燃やして ─── 音無桜花 2024.08.11. 突然に降り出した、視界を遮るほどの雨。 目の前の道さえ判然としないほどの雨。 温もりを奪う降り止まぬ雨。 私には雨を降り止ませることも、 道先に標を立てることも、 せめて傘を差しのべることも、 体を温めて苦痛をぬぐい去ることも出来ません。 三十音と少しの短歌。 言の葉を燃やして生じる、わずかな種火の熱。 その熱が届けばよいな、と思う。

          種火。の第百六十八首

          七夕、天の川。の第百六十七首

          第百六十七首 白波に心があらば天河 波のはざまに逢ふ瀬あらまし ─── 音無桜花 2024.08.10. 牽牛と織女に 今日は旧暦の伝統的七夕の日です。 今日詠んだ歌は7月7日の七夕を過ぎてから着想を得たもので、あれやこれやと首を捻りながら時間をかけて仕上げた一首です。 意は次の通り。 天の川の流れに心があるならば、 一面の白波の間にある流れ穏やかな浅瀬で、 牽牛と織女は逢瀬を重ねられたろうに。 七夕の由来のひとつは中国の伝説です。 結婚後、幸せのあまり仕事を疎か

          七夕、天の川。の第百六十七首