音無桜花

詠みます。

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最近の記事

音符の旅人。の第百八十七首

第百八十七首 開演に夜装姿に着飾った 音符が南へ旅立ってゆく ─── 音無桜花 2024.09.29. 秋の幕があがりました 渡りの季節です 燕が電線に鈴なりになっていました。 ざっと30羽以上いたでしょうか。 この中には、今年産まれた若鳥もたくさん混じっているのではないかと思います。 初夏に日本へ飛来した燕たち。 子育てを終えて、そろそろ南へと旅立つ時期です。 並んで電線にとまっている姿は『♩』『♪』音符のよう。燕尾服(イブニング)のような姿は、折り目正しく正装して

    • 季節の声。の第百八十六首

      第百八十六首 真夜中のそよ風に乗り(ほら其処で) 冷蔵庫だって鳴いてるじゃないか ─── 音無桜花 2024.09.28. 夜、耳を傾けると秋の虫が涼し気な音色を盛んに奏でています。 虫の音にまぎれて、エアコンや冷蔵庫も鳴いています。未だ夏は完全には冷めやらず、彼らは夏色の声で鳴いているのでしょう。

      • 秋ゴコロ。の第百八十五首

        第百八十五首 気がつけば秋の匂いが夜に解けて 私のココロを愁いといいます ─── 音無桜花 2024.09.27. 深夜詠 夜、窓を開けているとすっかり秋の風情。 暑さ厳しい時期には感じられなかった匂いが、夜に解けています。 秋を実感する空気感です。 わけもなく切ないような、悲しいような、それでいて甘いような。 恋心にも似た、複雑な感覚が訪れています。

        • 夜風。の第百八十四首

          第百八十四首 窓辺から秋の夜風がしのび込み 孤独に触れて通り過ぎてく ─── 音無桜花 2024.09.25. 深夜詠 ずいぶん涼しくなって、暑さで眠れないような夜ではなくなってきました。 にも関わらず、私は心地よい眠りにつく事ができずに寝苦しさと浅い眠りに悩まされています。 深夜になって、開け放した窓から部屋に入り込む空気が一層冷たくなってきました。冷気が肌に迫る感覚も強くなったように感じます。 ─── 眠れずにいる私に素っ気なく触れると、秋の夜風はどこかへ通り過

        音符の旅人。の第百八十七首

          海原をゆく花。の第百八十三首

          第百八十三首 葛葉萌ゆ緑がうねる海原の 波濤をこえて彼岸花燃ゆ ─── 音無桜花 2024.09.21. 彼岸の朝に 近所にある河原。 一面、夏に繁った葛の葉で覆いつくされている場所があります。 さながら緑色のうねる波のようです。 起伏に富んだ海原のよう。 そんな一面の緑の海に、彼岸花が一輪咲いていました。 群生しているのをよく見かける彼岸花ですが、ここの彼岸花はたった一輪だけ。それなりの広さをもつ河原ですが、見渡しても一輪だけが咲いています。 波をこえて緑の海原

          海原をゆく花。の第百八十三首

          月と砂漠。の第百八十ニ首

          第百八十ニ首 月あかり後ろにながく影法師 いまは中秋 砂漠は彼方 ─── 音無桜花 2024.09.17. 満月の夜。 今夜も駱駝は砂漠をゆくのでしょうか。

          月と砂漠。の第百八十ニ首

          季節のバトン。の第百八十一首

          第百八十一首 熱りを雫に溶かし秋時雨 夏の想いを引き継いでゆく ──── 音無桜花 2024.09.16. 黄昏の通り雨に 日が沈み、夜が訪れる頃合いから、雨が降ってきました。 通り雨のようです。 西の晴れた空には夕暮れの明るさが残っていますが、身の回りでは、頭上を覆う雨雲に夜がいつもより早く訪れようとしています。 急速に訪れる夜に、街灯があわてて灯りを点していきます。 中秋の名月の前日、小望月の姿もいまは見えません。 猛々しいほどに暑さを誇った今年の夏。 その

          季節のバトン。の第百八十一首

          月と吐息。の第百八十首

          第百八十首 秋月夜 虹雲あわく艷めいて 虫の音繁く吐息は微か ─── 音無桜花 2024.09.14. 日中は暑い日が続いていますが、朝晩の空気は随分とやわらいできました。 月の見た目もいくぶん秋らしくなり、鮮明さと温かみを兼ね備えてきた印象を受けます。 今夜の月齢は11。 月あかりに照らされて、彩雲が淡く輝いています。 微かな虹色の雲間に隠れた月。 艶っぽい空が秋の夜長を彩っています。

          月と吐息。の第百八十首

          残暑と月と。の第百七十九首

          第百七十九首 天をゆく秋に吹かれて涼しげに 弓張月はつれないお顔 ─── 音無桜花 2024.09.11. 今宵は上弦の月。 空の彼方は涼しそう。 なかなか去ってくれない厳しい残暑。 私は心身にこたえていますが、秋雲の向こうの弓張月は素知らぬ様子です。

          残暑と月と。の第百七十九首

          空蝉。の第百七十八首

          第百七十八首 とまり木に『生きた証』と残されて 主は何処へ九月の空蝉 ─── 音無桜花 2024.09.09. 夏色の緑を脱ぎさろうとしている桜葉の陰。 蝉の抜け殻がひとつ、美しい形のまま幹にしがみついています。 彼の抜け殻の主である蝉は、今年の暑い夏を声を限りに生きて、無事に全うしたのでしょうか。 抜け殻は、主のその後とは無関係に、 風雨に朽ち果てるのを静かに待っています。

          空蝉。の第百七十八首

          Happy Birthday🎉。の第百七十七首

          第百七十七首 初めぞめの淡海の桜とことはに この花咲くやににぎ八千代に ─── 音無桜花 2024.09.02. 今日はパートナーの誕生日です。 今年は誕生日の前々から「特別な言葉を」とリクエストされていました。 難易度の高いリクエストではあったのですが、短歌をきっかけに知り合った私達。 「誕生日に短歌を贈るので、相聞歌の形にしよう!」と相成りました。 始めのうちは私がプレッシャーを感じていたのですが、相聞になった時点でパートナーもプレッシャーを感じ出したようです(

          Happy Birthday🎉。の第百七十七首

          合唱。の第百七十六首

          第百七十六首 蝉たちの夏の命が地に散って 秋の夜に鳴く命になります ─── 音無桜花 2024.09.01. 残暑はまだまだ厳しいようですが、頭上で夏を謳歌していた蝉の合唱も聞こえなくなってきました。 今は音色涼しげな虫たちが、大地の草むらのなか、秋の夜長を謳歌しようとしています。

          合唱。の第百七十六首

          でんでん虫。の第百七十五首

          第百七十五首 野を分けて風が近づくその朝に でんでん虫がお出かけしてゆく ─── 音無桜花 2024.08.30. 台風、その前。 (まだ時間あるからな) (安全な高い場所に行くんやぞ)

          でんでん虫。の第百七十五首

          朧月『切』。の第百七十四首

          第百七十四首 風吹かば今こそ内を明かさなむ 雲わだつみの朧の月よ ─── 音無桜花 2024.08.23. 第百七十ニ首・朧月『慈』と対になる一首です。(当歌の投稿にともない、第百七十ニ首目は朧月『慈』に改題しました) 当歌は『慈』とほぼ同じタイミングで詠んだ歌なのですが、月に寄り添うニュアンスが上手く表現しきれませんでした。 『慈』は、朧月の短歌に最初に込めたかった思いを素直に歌にしています。私の技量不足と、真意を大切にした結果、『慈』は現代語を使った仕上がりになり

          朧月『切』。の第百七十四首

          宇宙船。の第百七十三首

          第百七十三首 地に落ちて静かに朽ちゆく宇宙船 公園遊具は外灯の下 ─── 音無桜花 2024.08.22. 外灯の明かりの下、誰もいない夜の公園の遊具たちは沈黙して佇んでいます。 ジャングルジムに滑り台がくっついた姿の遊具の頂上には、アクリル製の半透明な丸窓がありました。 何かの間違いで公園に帰還した、宇宙船の着陸船のよう。 丸窓を通して漏れてくる外灯の明かりは、眠りについた宇宙船をずっと見守ってきたかのようです。 写真が撮れなかったので、近しい雰囲気の画像をお借り

          宇宙船。の第百七十三首

          朧月『慈』。の第百七十ニ首

          第百七十ニ首 今宵こそ教えておくれ朧月 きみが光を隠した理由を ─── 音無桜花 2024.08.21. 夏の終わり。秋の始まり。 十六夜。 雲の影に閉ざした本心。

          朧月『慈』。の第百七十ニ首