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カラーとモノクロ 11

「カラーとモノクロ 10」で、見え方の違いについて少し書きました。私たちが普段見ているものは、人によって少し見え方が違う、ペットは飼い主が見ている姿と、他人から見えている姿は違う、という話でした。

推しの人を応援している人、誰かの熱烈なファンであれば、対象を見る目は開かれていて、ファンでもなんでもない人に見えている姿よりもきっと数倍よく見えていると思います。

同じに見えなくてもおかしくはないのです。人はそれぞれ少しずつ見え方が違うのだから。主観で見ているからということもあるし、色の見え方も違ってきます。

 

先日、夫が自分の車の色はグリーンだと言い、家族はとても驚きました。他の家族はみんな黄色い車だと思っていたからです。

それで、いろいろな色を見て互いに何色に見えるか話し合ったら、夫は黄色がグリーン寄りに見えることがわかりました。

長く一緒に暮らしてきて、そのことに気がつくのに何十年もかかってしまいました。

夫はドライブに行くと畑や樹木から雑草まで、素晴らしく碧く美しいグリーンの世界に見えて、ドライブが好きなのだそうです。

それを聞いて、私は自分が損をしているような気持ちになりました。

 

話は変わりますが、郵便ポストの色を何色だと思いますか?

そのことを知人と話し合ったことがあります。周囲の人はたいてい何かの作家であるので、色の定義は大切です。

郵便ポストは古いものは退色していることもありますが、新しいものはだいたい朱赤だという話になりました。日陰にあるポストは紅色に見えることもあります。

この赤の見え方がかなり人によって違うことがわかりました。

えんじ色という色は、えんじ色ですとしか説明ができないのですが、これが赤に見える人、茶色に見える人がいます。グレーっぽい赤に見える人もいます。聞き取りをしていると、年齢が進むほど区別が難しくなっているように感じました。

グレーは明るいグレーから濃いグレーや暗いグレーなど、段階がありますが、グレーもどれくらいグレーなのか、ということが人によって違う風に感じるようです。

 

絵を描く人、デザインをする人は、受け取る側(観る人)のことも踏まえて作品を制作しているのでしょう。

 

私は版画を作るとき、色のトーンを揃えるようにしています。そうすると違和感がありません。トーンとは色調のことで、明度(明るい・暗い)と彩度(鮮やかさ・おとなしさ)を組み合わせた調子のことです。

明るく鮮やかなトーンで作ると画面が生き生きと元気良くなります。暗くおとなしいトーンで作ると沈鬱な画面になります。

版画はエッジがきついので、隣り合う色同士がかけ離れたトーンになればハッキリくっきりした印象の画面になるし、おとなしいトーンでまとめれば上品な印象になります。

作品の雰囲気に合わせて色を調節することで、同じ版を使う版画で違う印象の作品を生むこともできます。

 

一方、絵を描くときは中心(主役)が目立つように明るくしたり、強い色を入れたりします。そこに視線が行って欲しい、というところを目立たせるのです。

風景画は全体像が大切なので、平均的に描かれるのが多いです。

人物や静物は作家の見せたいもの、中心があることが多いです。この場合の中心とは、キャンバスのど真ん中のことではなく、絵の中の主役のことです。
またそういうことを無視して、端から端まで全てが主役の絵もあります。


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