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ジャムメーカーに感謝した日

北海道ではなかなか手に入らない文旦を、たくさんいただいた。皮をジャムにしたり、わたの部分をピールにできると聞いた。珍しい果実、大切に食べなくては。

表皮を剝くのは思ったよりも難しい。固くつるつるしているそれを細かく刻む。だんだん腕が疲れてきて投げ出したくなる。
ずっと煮てもやわらかくならないので、果肉も足す。
鍋をかき混ぜ続けやっと出来上がったが、想像と少し違った。やはり売っているものの方がおいしい。まあ手作りなのだし。苦労のご褒美は指先に残る、さわやかな香り。

翌日、夫はジャムを食べた。
トーストした食パンに塗って。
私が見ていない間に残さず。
「私の分は?」
「ごめん、まだあると思った」
あれだけの文旦からこれだけのジャムしかできないと、作らなかった人にはわからない。
「おいしかったよ」と遠慮がちな声。
「もう作らない!」と怒りながら(おいしいと思ったから、あるだけ食べてしまったのだろう、と)内心でにやける。
あんな苦労はもうたくさんです。

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