罪悪感との戦い

夫に支配されてしまった妻は、
脱出をしても
自分が悪かったのではないか、
今、間違ったことをしているのではないか、
そういう気持ちになるそうです。
支配されていたとはいっても
夫の手中で保護されていた感覚もあり、
そこから自分の意志で脱出したとしても、
それまで考えることをやめていた妻は、
やっと目覚めた自我を
間違っているのではないか、と
疑ってしまうのです。

私も同じでした。
シェルターでは貴重品は
事務所に預けていました。
携帯もです。
けれど、事務所にいけば
携帯をいじることは許されていて、
誰にも教えていないはずの携帯に
着信があったので見てみると
夫からのメッセージが入っていました。
「どこへいったの?どうしてこんなことをしたの?俺はDVなんかしていないよね?帰っておいでよ。待っているよ。」と
優しく、そして涙声で語っていました。
他にもいろいろ言っていたけれど
夫の声でパニックになってしまい、
そのまま倒れてしまいました。

私がしたことは
本当に正しかったのか。
子どもたちから父親を奪うようなことをして
本当に良かったのか。
私の我慢が足りなかっただけじゃないのか。
私一人で子ども達を
ちゃんと大人にしてあげられるのか、
頭の中をぐるぐると
そんな考えが渦巻いていました。

本当にDVはあったんだろうか。
モラハラを受けたんだろうか。

シェルターでの時間は
そういう考えとの戦いでもあるんですね。
シェルターの職員の人が
みんな必ず、そうやって悩みます、
と言っていました。
この悩みこそが
心が支配されていたことの証拠なんですよ。と。

例えば私の言うことが
嘘だったり大袈裟だったりした場合、
シェルターに入る前に
たくさんの人に話をします。
市の相談員の人や
警察でも話をします。
そのなかで、誰かが
私の話が変だとなれば
こんなに緊急に動いてはくれないのです。
だから、何も心配しなくていい。
あなたがしたことは、
子ども達を守るためにも
最善の行動なのだ、と
シェルターの職員の人は
言ってくれました。

ただ、この罪悪感は、
何度も何度も押し寄せてきます。
これからの生活がうまくいっても
いかなくても、
何度も何度も苦しめてきます。
とも言っていました。

これまでに何百という避難してきた
母子を見てきた職員の話は
信用に値するものでした。

夫と別れてからもう16年くらい経ちます。
いまだに罪悪感は襲ってきます。
私の選んだ選択は正しかったのか、
必要以上に夫を悪者にしていないか、
そう考えて苦しくなります。
けれどもその度に
夫からされたことを思い出すように
しています。
そして、私は耐えられなかった。
私は間違っていない。
と、思い直すのです。

この罪悪感との戦いは
いつ終わるのかわかりません。

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