第3回 ストレスチェックを活用した職場改善

メンタルヘルス不調を未然に防ぐため、ストレスチェックを活用して従業員自身の自己管理を促進すること、加えて、管理者等が日頃から従業員への声かけを行うことの重要性について、第1回のコラムでは述べました。

ストレスチェックについては、実施しただけで終わることなく、これに基づく集団分析結果を活用することが望ましいとされ、厚生労働省から発表された、2018年4月~2023年3月の5年間を計画期間とする第13次労働災害防止計画でも「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上」にすることを、目標として策定しています。

この集団分析は、ストレスチェック結果の点数を集団(課・部など)ごとに平均したものを用いる方法や「仕事のストレス判定図」を用いる方法などが挙げられます。

今回は「仕事のストレス判定図」を用いて職場環境改善を実施する、というイメージでお話しさせていただきます。

「仕事のストレス判定図」は

1.①仕事の量的負担−②仕事のコントロール度

2.③上司の支援−④同僚の支援

というように、 4つの尺度を2つのグラフとして表したものです。

ストレス判定図

簡単に言えば、従業員自身が、

①「仕事が大変」と感じているか

②「職場に誰か助けてくれる人がいる」と感じているか

ということを評価しているのです。

これらは、ストレスチェック結果の中でも、従業員の体調(疲労度・ストレス反応など)とは異なり、職場で改善可能な項目に見えます。

そうすると、集団分析結果をどう使っていくのか、自ずと明らかになっていきます。

大まかに言えば、

①仕事の量(求められる質も含めて)と、それに対する従業員の裁量を分析・改善する

②職場内に相談できる、あるいは助けを求められる人がいるなど、従業員が支援を受けられる体制を作る。

という2点に集約されます。

この2点に注目して、各部署ごとの4つの尺度の高低、影響していると思われる要因などを分析し、これをベースにして対策・改善していくなど、職場環境改善を進めていくことになります。

肝心の手順についてですが、厚生労働省ホームページ内「こころの耳」に様々なマニュアル・手引きが掲載されています。

その中でも「入り口」として、ここから入るとわかりやすいと思われるものを2つほど紹介させていただきます。

①「職場改善のためのヒント集項目一覧表」(厚生労働省「こころの耳」)

http://kokoro.mhlw.go.jp/manual/hint_shokuba_kaizen/

→ページ下部の項目からリンク先をダウンロード

②「いきいき職場づくりのための参加型職場環境改善の手引き」(厚生労働省「こころの耳」)

http://kokoro.mhlw.go.jp/manual/files/H27_ikiki_shokuba_kaizen.pdf

①番の「~項目一覧」を参考にしながら、各部署の集団分析結果(4つの尺度)とアクション項目(施策のヒント)を対応させて施策のイメージを作り、②番の「手引き」にそって、具体的に取り組んでいくという手順です。

(※①のチェックリストと、②のチェックリストは完全には対応していませんが、4つの尺度に対応した対策をイメージするための「ヒント」にはなるかと思います。)

といっても、会社の規模、業種、業態など、事情は様々かと思われますので、自社に合った取組を進めることも重要です。

そのときに参考となるのが、次の手引きです。

・「これから始める職場環境改善~スタートのための手引き~」(労働者健康安全機構)

https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1330/Default.aspx

ストレスチェックによる職場環境改善といっても、手順自体は、品質管理に関する改善活動(QC)や安全推進活動などとそれほど変わりがありません。

つまり、PDCAサイクルを回しながら活動していくことが重要、ということです。

この「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引き~」では、改善活動の主体を、

①経営者

②管理監督者

③従業員

に分けて、PDCAの回し方を説明しています。

どこが主体で取組を始めるとよりスムーズな導入となるか、会社の風土に照らし合わせて進めていくことで、効果的かつ迅速な改善に繋がると考えられます。

いずれにしても、施策の主体がどこ(誰)が主体であるか、またはどんな施策を実行するかに関わらず、そこには多くの「コミュニケーション」が生まれるかと思います。

せっかく、メンタルヘルス不調予防のために職場環境改善をするのであれば、その改善活動自体を活用して、職場内のコミュニケーションの促進や、職制を超えたコミュニケーションの実施などを実践していくことも、効果的な施策のひとつとなるのではないでしょうか。

一人ひとりの立場や考え方が違っていても、相手を尊重し、率直に意見を交わし合うこととができるような職場風土が醸成されれば、より一層、メンタルヘルス不調の起こりにくい職場になることでしょう。

ハラスメント対策法案が令和元年5月29日国会で可決されました。

改正労働政策総合推進法には、パワーハラスメント防止のため、事業主に相談窓口の設置等、必要な措置を講ずることが義務として定められ、2020年4月から(中小企業は2022年4月から)施行される見通しとなっています。

ストレスチェックの集団分析結果をベースにして職場環境改善を行うことは、その活動が効果的に行われていけば、ハラスメント予防のために有効な施策となるのではないかと私は考えます。

※厚生労働省HP「こころの耳」には、上述の文章内で紹介した手引き等のほかにも、さまざまな情報が掲載されています。是非ご活用ください。

・職場環境改善ツール(厚生労働省「こころの耳」)

http://kokoro.mhlw.go.jp/manual/

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