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自選短歌②

さっき受けた1限の授業で先生が言っていた。その概念を表す言葉がないからってその概念が存在しないわけではないと。

それで先生が言っていた例は、元カノから「結婚おめでとう!」とか「なんで君と結婚しなかったんだろ」とか言われると、なんて言ったらいいかわかんないけどモヤッとするでしょ?この感情を表す言葉はないけどこの感情はあるんだよ、って話だった。

自分が感じたものを言葉で表すのにも限界がある。でも自分がエモーショナルに感じた繊細な気持ちをできるだけ言語化していこう。短歌で!

①いつだかの中央線が遅延して
なきゃもっとあった君との時間

付き合ってる間の1分1秒を大切に思うことは難しい。人間は空気がなきゃ生きれないのに、目に見えない空気を当たり前に感じている。同じく付き合っている間の二人の時間は当たり前過ぎるし、ちょっとばかりデートに遅刻することもあるだろう。5分の遅刻をその時は何も感じないかもしれないが、気軽に会うことのできない関係になった後なら一緒に過ごす5分の尊さがわかるはずだ。日常的に遅延している中央線が当たり前と感じすぎて無駄にした5分の大切さを後になって知るわけだ。

②描きかけの絵を片付けずそのままに
しとくみたいに独り身でいる

男性の恋愛は「名前を付けて保存」で女性の恋愛は「上書き保存」だとよく言われる。絵に例えるなら、男性は1つの絵が描き終わると別の絵を描き始め、女性は絵に上塗りで続きを描いていくといったところだろうか。絵を片付けないということは、続きを描く気はありそうだし、なんなら自分で「描きかけ」と認識しているのだ。でも自分で「描きかけ」だと思っていたところでその絵をまた描くことがないことなど大いにある。新しい絵を描くことも、絵の続きを描くこともできないままどうなるかわからない将来に少し希望を抱いて絵をそのままにしているから、いつまでも恋人ができないでいるって話だ。


③来たる夏待たずに作った素麺に
溶け込む日差しを薬味に使う

本当はこの歌を夏に詠みたかった。しかし春に素麺を作るが如く、夏を待ちきれずに詠んでしまった。僕は素麺を食べる時、麺は水に浸しておく派だが、そうすると水面に日差しが煌めいたりする。まだ夏は来ていないとは思うが、夏の日差しを先行体験しているような気分になり、素麺がより一層美味しく感じたりするんだよこれが。


④「楽しかった!また今度」ってLINEする
頃合い伺いイレブンに寄る

異性とご飯に行ったりした後、解散してから「今日はありがとう」的なLINE送ったりするよな。あれの正しいタイミングはいつやねん。どっちが先にその文送るのかって牽制し合ってる部分もあるよね。僕は帰り道にそういう文章を送る派だ。でも別れてすぐメッセージ送るのも違和感あるかもしれないから、ちょっと帰り道にあるセブンイレブンに寄って時間を稼いでお茶を濁したりする。スマートじゃないね。


⑤いつもより重いペダルを漕ぐ夜道
汚い月が僕を嘲る

疲れたり、なんか嫌なことがあったりすると自転車を漕ぐ気力もなかったりするよね。ペダル重い〜家遠い〜なんて思って帰っていると、そういう時の月はなんかもやっとして綺麗じゃなかったりする。まるでこっちの心情を反映しているかのようだ。月にも馬鹿にされているような気分になりながらも、自転車は漕ぐしかないし、家にはそのうち着く。決して良い気分じゃなかったけど、その時の気持ちっていつまでも覚えてたりするんだよな。


⑥この僕と君を取り巻く
金田一秀穂も定義できない事象

特殊なケースについては知らないが、恋愛は二人の問題だ。片思いだろうが付き合ってようが二人が関わる話だと思うし、他者は関係ない。二人にしか見えないものはきっとある。当事者にしかわからない気持ちや観測できない事象はきっとある。どれだけ周りの人に迷惑かけ散らかして大勢を巻き込もうとも結局は二人の世界で行われていることなんだ。僕はそう思う。金田一秀穂氏は僕の大学の大大大先輩だし辞書を編纂していることで著名だが、彼であっても他者の恋愛を辞書的に定義はできないはずだ。二人の世界に余所者は口出し無用。金田一秀穂も、口出し無用だ。

やっぱ冒頭の話みたいに、生きてると言語化できないけどモヤッとすることってあるなって思う。それをどうにか切り取って人に伝えたいよな。モヤッを共有できたら、より素晴らしい。

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