メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん―古典から東洋医学を学ぶ―』第176号 新企画 ─「よもぎ」のテーマ読み ─ 4 「艾葉」(内景篇・蟲・単方)他

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆


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  第176号

    ○  新企画 ─「よもぎ」のテーマ読み ─ 4
       「艾葉」(内景篇・蟲・単方)他

           ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説 
      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。「よもぎ」のテーマ読みの続きです。今号も項目建てのある
 部分を読みますが、一つ読み逃していた箇所があり、そちらをひとつ、ま
 た前号に続く部分をひとつ、合計ふたつの項目を読みます。


 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)


 (「艾汁」 p168 下段・内景篇 蟲)


 艾汁

   殺蛔蟲取一升空心飲當下蟲本草


 (「艾葉」 p327 下段・外形篇 後陰)


 艾葉

           治痔漏虫蝕肛門熟艾一團雄黄少許
   同焼火以竹筒納下部引烟熏之良本草

    
 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)


 艾汁

   殺蛔蟲。取一升、空心飲、當下蟲。『本草』


 (「艾葉」 p327 下段・外形篇 後陰)


 艾葉

           治痔漏、虫蝕肛門。熟艾一團。雄黄少許。
 
   同焼火、以竹筒納下部、引烟熏之良。『本草』


 ●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)


  特になし


 ▲訓読▲(読み下し)


 艾汁(がいじゅう)

   蛔蟲(かいちゅう)を殺(ころ)す。

   一升(いっしょう)を取(と)りて、

   空心(くうしん)に飲(の)みて、

   當(まさ)に蟲(むし)を下(くだ)すべし。

   『本草(ほんぞう)』


 艾葉(がいよう)

痔漏(じろう)、肛門(こうもん)を

   虫蝕(こしょく)するを治(ち)す。

   熟艾一團(じゅくがいいちだん)。

   雄黄(ゆうおう)少(すこ)し許(ばか)り。
 
   同(おなじ)く火(ひ)に焼(や)き、

   竹筒(たけづづ)を以(もっ)下部(かぶ)に納(い)れ、

   烟(けむり)を引(ひ)きてこれを熏(くん)じて良(よ)し。

   『本草(ほんぞう)』


 ■現代語訳■


 艾汁

   回蟲を殺す。空腹時に一升服用すれば、

   蟲を下すことができる。『本草』


 艾葉

           痔漏で肛門が蟲蝕された者を治す。

   熟艾を一丸め、雄黄少量を同時に焼き、
 
   竹筒を肛門に差し入れその煙を引き入れて

   薫じれば良い。『本草』


 ★ 解説★

 よもぎのテーマ読みの続きです。さらに項目建てのある部分です。

 前号まで順を追って項目建て部分を読んできましたが、ひとつ飛ばしていた箇所に気づき、そちらをひとつ、さらに前号の続き部分からひとつ、読んでみました。

 順番が飛んだので、改めてよもぎの読み始めから順番に、翻訳部分だけを記載してみます。・・・・で囲った部分が飛んだ箇所、今号で読んだ部分です。


 
 艾葉(内景篇・血・単方)

  吐血、鼻血、便血、尿血など、全ての失血を治する。
  搗いて汁を取り飲む、乾燥したものは煎じて服用する。『本草』


 艾葉(内景篇・胞・単方)

  崩漏及び帯下を主治する。煎じて服用する。
  血崩には熟艾を鶏卵の大きさ分、阿膠珠五銭。
  乾姜(炮黒)一銭。以上を一緒に煎じて服用する。『本草』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 艾汁(内景篇・蟲・単方)

   回蟲を殺す。空腹時に一升服用すれば、
   蟲を下すことができる。『本草』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 艾葉(内景篇・大便・単方)

           赤白痢および膿血痢を主治する。
   酢で煎じて空腹時に服用する。『本草』


 陳艾葉(外形篇・胸・単方)

   卒心痛を治する。
   熟艾を濃く煎じて服用すれば即座に治癒する。『本草』


 艾葉(外形篇・腹・単方)

   悪気により心腹が痛む者に、搗いて汁を取り飲む。
   乾燥したものは濃く煎じ服用する。『本草』


 艾葉(外形篇・後陰・単方)

           痔漏で肛門が蟲蝕された者を治する。
   熟艾を一丸め、雄黄少量を同時に焼き、
   竹筒を肛門に差し入れその煙を引き入れて
   薫じれば良い。『本草』


 だいぶよもぎを考察するカードが増えてきましたね。今号の二つ目では、今までと違って服用せずに、煙で薫じるという方法も登場しています。

 ちなみに、今号で二つ目に読んだ箇所も、例によって熟語はそのままのものが多く、「痔漏」などもそのままにしてあります。

 これは同じ「後陰」の章に項目建てがあり詳述されているので、そちら
 を参照読みすることでこの語の詳細を把握することが可能です。


 さらに「痔漏で肛門が蟲蝕された」とした部分、解釈によって

 
  痔漏 と 肛門の蟲蝕

  痔漏 で 肛門が蟲蝕された


 とに分かれます。つまり並列なのか、または因果関係なのかの違いですね。上に書いた別項の「痔漏」を読むと「瘻痔亦謂之蟲痔。 歳月積久、蟲蝕其間」とあり、「痔漏 = 肛門の虫蝕」と見ている節がありますので、「痔漏 と 肛門の虫蝕」という二つの症候ではなく、「痔漏 で 肛門が虫蝕された」の方が適切と思いますが、いかがでしょうか。

 細かい点ですが、ご興味おありの方は「痔漏」の項目も併せてお読みいただきご自身でご検討くださればと思います。


 ◆ 編集後記

 よもぎの通し読み、ひとつ飛ばした部分と順当部分、ふたつを読みました。

 なぜ飛ばしてしまったかというと、項目が今までのように「艾葉」ではなく「艾汁」であるため、目からすり抜けてしまったのですね。

 網羅して読んでいるつもりですが、何分膨大な文字列の中から探すので、漏れがあるかもしれません。気づき次第また今号のように、読み飛ばしを補足しながら読み進めていきたいと思います。

                     (2016.07.16.第176号)
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