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みんな一緒の物差し:特殊相対論/テンソルとLorentz変換

今回はテンソルの話.テンソルってなんやねんと言う人はよければこれこれを読めば話は繋がると思う.Lorentz変換は前々回に話した.今日はテンソルの言葉でLorentz変換の話をしようと思う.

復習1:Lorentz変換

Lorentz変換とはなんだったかといえば,回転と等速で動く座標変換のことだった.

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しかもこの変換は"長さ^2"を変えない変換だった.

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復習2:ベクトル,テンソルと物差し

ベクトルとは向きと大きさを持った矢印だった.テンソルとは矢印二本以上同時に必要なものだ.

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矢印,向きと大きさがある.根元の位置は関係ない.

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テンソルの例,磁石同士が及ぼしあう力は磁石の場所を示すベクトルと磁石の向きを表すベクトルの二本が必要だ.

ベクトルやテンソルは回転,反転,長さを変える変換ができてそれは行列で行われるのだった.添字の上下は和をとるのだった.

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ベクトルは物差し"η(イータ)"を使って内積を決めて,自分自身との内積を大きさと呼ぶ.

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四次元ベクトル

ここまで復習すれば今日の話はなんとなく読めるかもしれない.実は冒頭で言ったように特殊相対論の話はテンソルの言葉で話せるのだ.

これから死ぬほど光速"c"が出てくるので一々書くのが面倒だ.だからc=1としよう.そうすると"t"は本当に長さの単位になる.速さに時間をかけると長さになるやつだ.光速は大体300,000,000m/sだから,"1秒"は”300,000,000m”なのだ.

時間と位置を含めた四つの座標がベクトルになる.

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四次元だぞ〜と言う主張のために添字はギリシア文字で書こう(μ:ミュー:\mu).空間の添字が"x^(μ=1)=x,x^2=y,x^3=z"だったから,時間の添字を"x^0=t"と"μ=0"と決めておこう.相対論の添字は0~3の四つ走るのだ.

特殊相対論の物差し

ベクトルを決めたから,きっと何か変換を表す行列があるのだろう.これを"Λ(ラムダ:\Lambda)"と呼ぼう.ΛがLorentz変換を表すなら"長さ"を変えないようにならなければならない.

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これをじっとみて,特殊相対論の物差しは何か考えてみよう.すると

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と決めておくと,μとνの添字を0~3まで動かして和をとると先の"長さ"を再現できるだろう.この物差し"η"を特殊相対論の計量(けいりょう)と呼ぼう.

また,添字の上と下を変えたければ,この計量を使って上げ下げする.

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負号がつくから面倒だがしょうがない.

Lorentz変換を表す行列

Lorentz変換が行列Λで変換するとしよう.座標変換は

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とかけるはずだ.

回転とboostをじっと見ると

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となる.紙とペンがあれば,青から赤への変換を行列Λと上の変換式を使ってやってみてほしい.

赤と青の長さは特殊相対論の世界では同じ長さになるから,

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添字いっぱいで読みにくいなぁ〜と思うが落ち着いてみてほしい.赤と青の変換を使って書き直したのだ.そうすると上真ん中と下右は同じ青系のベクトルで書いてあるから,計量がΛで変わるなと言う条件が出てくる.

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ここから,計量ηを不変に保つ変換をLorentz変換と呼ぶことにしよう.

一々条件を書いて変換を書き直していたら面倒だ.テンソルの言葉でかくとあとあと計算をするのに楽チンなのだ.物理の立場からみても,誰からみても同じと言う相対性の原理をテンソルの言葉で,物差しを変えないと言われた方が数学的にもはっきりしてわかりやすい.

特殊相対論の立場からすれば,この世の全ての人間は,同じ物差しを使っているのだ.止まっている人も,ものすごい速さで動いている人も同じ物差しを使う.規格統一された物差しが与えられているのだ.

まとめ

1>特殊相対論は光速度不変と相対性の原理から出発
2>光速を不変にするようにboost(と回転)の変換を決めた
3>boostと回転を合わせてLorentz変換と呼ぶ
4>回転で長さは不変,拡張してLorentz不変の"長さ"を作った
5>"長さ"をテンソルの言葉で書き直したら物差し"計量"に条件が出た
6>逆に"計量"を不変に保つ変換をLorentz変換と呼ぼう



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