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ウポポイ・国立アイヌ民族博物館研修視察レポート(2023.3.9)

<研修目的>

日本人のみならず、外国人観光客からの問い合わせも増えているウポポイ。自分の目で見て体験することで、より分かりやすく、効率的な案内ができるようにする。
所要時間やそれぞれのプログラムについても自分の言葉で説明できるようにする。

<当日のスケジュール>

10:00  ウポポイへ到着
10:15  国立アイヌ民族博物館 シアタープログラム
         「世界が注目したアイヌの技」(20分)
10:35  国立アイヌ民族博物館 博物館 見学
11:15  国立アイヌ民族博物館 シアタープログラム
         「アイヌの歴史と文化」 (20分)
11:35  カフェ リㇺセ 昼食
12:30  体験交流ホール 短編映像上映「カムイユカㇻ」 (30分)
13:30  体験交流ホール 伝統芸能上演
         「シノッアイヌの歌・踊り・語り」 (20分)
13:50  伝統的コタン チセ見学
14:30  体験学習館 ポントキッチン (30分)
15:00  体験学習館 楽器演奏鑑賞 (15分)
15:20  体験学習館 別館 ドーム型スクリーン映像体験「カムイアイズ」 (10分)
15:30  国立アイヌ民族博物館 博物館 見学
16:00  JR白老駅へ出発

<見学・体験内容>

■国立アイヌ民族博物館

ウポポイの入場ゲートを通ると、まず目に入る大きな建物。
入口が2か所あり、1階はシアターとお土産ショップ、ポロト湖を眺められる休憩スペースや図書コーナーがあり、2階が博物館となっている。
一般のお客様は博物館に入場する際に受付で整理券をもらう必要がある。

博物館では展示物のほか、いたるところで映像を鑑賞することができる。
アイヌ文化について簡単に紹介するアニメーションが流れているところには椅子があり、少し座って鑑賞した。
アイヌ文化にほとんど触れてこなかった私にとってはわかりやすく、楽しめる映像だった。お子様向けの映像なので、家族連れの方でも休憩がてら気軽に見ることが出来る。

他にも展示物に関する映像が、それぞれの展示物の近くで流れている為より理解を深めながら見ることができる。
それぞれの展示物には日本語、英語、韓国語での解説があった。
またタッチパネルも多数あり、そこではアイヌ語やチセの建築法などの映像資料を日本語、英語から選んでみることができる。
実際に触って体験できるようなブースもあった。

今回はプログラムを優先したため時間があまりなく、展示物や映像は簡単にしか見ることができなかった。しっかり鑑賞するには少なくとも1時間は必要と感じた。 

■国立アイヌ民族博物館シアタープログラム鑑賞

①    「世界が注目したアイヌの技」
シアターには私一人しかいなかった。
世界中の博物館にあるアイヌの展示物について詳しく解説するプログラム。日本では見られない貴重な展示物なども、高画質の映像で細部まで鮮明に見ることができた。

②    「アイヌの歴史と文化」
このプログラムには外国人も含め20人ほどが鑑賞していた。
鳥のキャラクターがアイヌの歴史を可愛らしく紹介してくれるプロブラム。基本的な内容でまとめられていたため外国人やお子様におすすめできる。
それでも歴史が大の苦手である私にはあまり内容が入ってこなかった。 

■昼休憩

目当てのアイヌ料理「オハウ」をたべるためにカフェリムセへと向かった。入場ゲートの外にあるため少し歩いた。
木造のあたたかい雰囲気の店内にはグッズの販売コーナーもあり、少し見ようと思ったがすぐに料理が出てきた。

「オハウ」とは、「温かい汁ものを」意味するアイヌ語で、極寒の地に住むアイヌの人々の体を温めてきた伝統的な料理のひとつである。
なかでも、鮭はアイヌの人にとって大切な魚であり、カムイチェプ(神の魚の意)と呼んだという。

スープ自体は、昆布だしベースの塩味であっさりしており、大根やジャガイモ、人参、鮭が入っている。鮭が塩辛くごはんが進んだ。とてもおいしかった。

■体験交流ホール

体験交流ホールで作品を鑑賞するには、事前に隣の発券所で席をとる必要がある。スタッフの方が見やすい席から順番に取ってくれるようだ。
発券所は9:30から開くとのことなので、必ず良い席で見たいという方は早めに発券することをおすすめする。当日分であれば一度に何公演でも発券可能とのこと。

また発券所の前には本日のスケジュールが貼り出されており、各公演の発券状況を確認することができる。
〇は発券可能、△は発券可能だが団体の予約が入っているという。

①    短編映像上映「カムイユカㇻ」
短編のアニメーションプログラム。
「カムイを射止めた男の子」と「キツネにつかまった日の神」の二作品が上映される。映像がスクリーンと床に映し出されるため臨場感がある。
画風はかなり独特であったが、内容は面白くお子様も楽しめると思った。

②    伝統芸能上演「シノッアイヌの歌・踊り・語り」
ウポポイ一番の目玉であるプログラムで、外国人含め多くの人が鑑賞していた。様々な演目がある中から、毎回6演目が披露される。

今回は、ウウェランカラプ(正式な挨拶)、サルルンカムイ リムセ(鶴の踊り)、ユカラ(英雄叙事詩)、ムックリ演奏、エムシ リムセ(刀の踊り)、イヨマンテ リムセ(熊の霊送りの踊り)だった。

近くで見ることが出来たので、表情や足音、声がはっきりと聞こえた。
とても迫力がありアイヌの世界観に没入できた。
特に最後の熊の霊送りの踊りは、男性の特徴的な掛け声が印象に残った。
ぜひ他の演目も見てみたいと思った。

■伝統的コタン

チセは全部で3棟あり、そのうち一つは出入り自由で見学ができる。
伝統的コタンではムックリの演奏体験やアイヌ語学習など、合わせて8種類のプログラムあるが、今回は他のプログラムで時間が無かった。

チセに入ると中央に火のカムイがいるという囲炉裏があり実際に火がついていた。博物館のシアタープログラムで学んだ通り、神窓と呼ばれる窓の近くには宝物である漆器が置かれていて復習になった。
チセ内部は床暖が効いていて快適だった。スタッフの方がいるため、気軽に質問することができる。

■工房

少し時間があったので、工房にも立ち寄った。
こちらも出入り自由で見ることが出来る。
刺繍プログラムなどが行われる場所で、毛皮などの展示物はやさしく触ることが出来た。
アイヌ文様の刺繍をしているスタッフの方がいて、手元が拡大されモニターに映っていた。気軽に質問することも出来る。

刺繍体験、木彫り体験は会場で5分前までの受付が必要。所要時間は60分程で、無料と有料のものがある。

エゾシカ                  ヒグマ
アザラシ
魚の皮で作られた履物

■体験学習館

①    ポントキッチン

予約が必要なプログラム。
予約はプログラム開始の15分前までにしなければならない。
また定員になると締め切られるため、必ず受けたいという場合は早めに予約することをおすすめする。
今回は私一人だったが、前の日は満員だったそうだ。定員人数が多くないため注意が必要。

メニューは日替わりで、今回はシト(団子)とシトにつけるクルミのたれを作った。シトとは米粉やイナキビで作る団子のことである。
稲作が始まる前、アイヌにとって米は高級食材であり冠婚葬祭やイヨマンテ(熊祭り)の儀式などにみんなで食べたという。

あらかじめ用意された粉にお湯を少しずつ混ぜてこね、丸く成形し茹でる。
茹でている間に、クルミを擦りつぶり砂糖、塩で味付けし、そのたれに茹で上がった団子を絡ませて食べた。素朴な味でおいしかった。
無料のプログラムで学びながらおやつが食べられるのはかなりお得感があった。

また、土日祝のみ開催される調理体験プログラム「ポロトキッチン」は、開催日2日前の正午までの予約が必要。
所要時間は180分と長く、有料(1500円)である。季節ごとにメニューが変わる。 

②    楽器演奏鑑賞

出入り自由な15分ほどのプログラム。
もともと予定には入れていなかったが、ポントキッチンのスタッフの方に教えてもらい時間があったので見ることができた。
ムックリやトンコリの演奏を聴くことができる。

■体験学習館 別館

「カムイアイズ」鑑賞
ドーム型シアターで、1人1台なので映像に入り込んだような感覚になる。「カムイアイズ」の名前の通り、カムイの目線になった映像が見られる。
カパッチリ(オオワシ)のカムイと、チロンヌプ(キタキツネ)のカムイの2種類の目線で映像が流れる。

オオワシの映像は、空を飛んで流氷や山を上から眺めるもの、キタキツネの映像は雪原のなかで食べ物を探しながら歩いているものだった。
どちらも最後には運命のアイヌの矢に打たれて終わる。
動物の目線を体験するものなので、映像にリアルな揺れがあり少し酔った。

<アクセス>

白老で電車を降りるとウポポイの臨時改札への案内が見えた。

そこからエレベーターを上がると改札の機械は無く、駅の職員の方がいて切符を渡した。「ウポポイですか」と聞かれ、はいと答えると簡単に道を案内して下さった。
駅を出るとすぐにウポポイへの方向が書かれた大きな看板があり、以降も至る所に案内表示があるため迷うことなく到着する事が出来た。
途中、整備されていない泥の道があり雨の日は歩きづらそうだった。

帰りも臨時改札口から入り、駅の職員の方に切符を渡しスタンプを押してもらった。こちらも迷うことなくスムーズに電車に乗る事が出来た。
ホームには待合室がないため、電車が来るのを待っている間は雪が降ってきてとても寒かった。

札幌から白老までのJR料金は往復指定席で約7000円、自由席でも5600円と、何度も行ける値段ではない。
道南バスの高速おんせん号にウポポイに止まる便(往復4400円)があるが、バスが当面の間運休のため札幌からはJRしか方法がない。
また高速おんせん号が運行を再開したとしても、ウポポイへ止まる便は往復それぞれ一日一便と、時間の融通が利かない。
特に若年層の場合はまた行きたいと思っても交通費で諦めてしまう人もいると思う。 

<研修報告>

アイヌ文化について特に学んだことがなく、正直関心もあまりなかったが今回研修という形でウポポイを訪問させていただき、今まで壁があったアイヌ文化を身近に感じることができた。

博物館と言えば展示物を見て説明書きを読んで…と難しいイメージがあるが、ウポポイは解放的でモダンな空間に実際に体験できるプログラム、目の前で伝統芸能が見られたことや、わかりやすい映像が身近に感じられた大きい理由だと思う。
また親切なスタッフの方々のおかげでとても気持ちがよく過ごすことが出来た。

私と同じくらいの年齢層でアイヌ文化に興味のある人はあまり多くないかもしれないが、一度行ってみると意外と楽しめることが分かったので若年層のお客様にもお勧めしていきたいと思った。
入場料も大人1200円、年間パスポート2000円と良心的な価格設定で、無料の体験プログラムが豊富にあるのでまた行きたいと思える。

天気が暖かくなったら、外のテラスでご飯を食べたりベンチに座ってポロト湖を眺めたりするのも良いと思うので、色々な楽しみ方が出来る。

また、外国のお客様も楽しめるように鑑賞プログラムでは5か国語の音声ガイド機に加え、外国語のパンフレットもある。(博物館内の音声ガイド機はコロナで貸出停止中)体験プログラムではAI翻訳機で対応してくれる。

今回は事前にプログラムを決めて予定を立てていたため効率的に回ることが出来た。これから研修内容を生かして、お客様のニーズに合わせておすすめのプログラムを紹介できると思う。
また自分自身がアイヌ文化に対する関心も生まれ、研修に行くことが出来て良かった。 
(reported by KS)

外は寒いが、あたたかい休憩所が3か所あり自由に休める。(飲食自由)                 
お水も飲める。
消火器にもアイヌ語

 


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