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雪花~せっか

冬はゆったり腰をかけ
寒さと眩(まばゆ)い白さで ぼくを包む

高い峰々は 雪と氷に閉ざされて
色のない世界に染まる

うず高く積もった雪が
ぼくの前に 立ちはだかる

かきわけても
かきわけても
さらさらと崩れる粉雪は
息が上がるほど 肺にまで沁みて
ぼくの心も凍らせていく

踏み出せば 沈み込む雪の柔らかさに
そのまま倒れ込みたくなる


キンと冷えた空気
枝についた樹氷は 長い尾を伸ばし
高く澄みきった空に踊る

白銀と氷の世界

熱くなった体の芯と
痛みを通り越して 感覚の薄くなった指先
頬(ほほ)を白い吐息が撫(な)で
凍らせていく

そう
これはぼくが受けるべき罰

泣いてはいけない
甘えてはいけない

深く積もって見えなくなったハイマツも
真っ白に衣替えした雷鳥も
可憐なコマクサも
全部 ぜんぶ 閉じ込める

ぼくのことを好きだと言ったあのひとの言葉も
真っ赤に染まったりんごのような頬(ほほ)も
優しい眼差しや輝く笑顔も
全部 ぜんぶ 閉じ込める

いつか また
あのひとに会えるだろうか

いつか また
あのひとと笑いあえるだろうか

いつか また

いつか…


大きくそそり立つ樹氷がぼくをにらみつける
そんな幻想は捨ててしまえ
あのひとを傷づけたぼくには
そんな権利などないと にらみつける


手袋を外して樹氷に触れる
「…痛っ」

一瞬で手に張り付く氷は
まるで あのひとの心の叫びのようで
無理やり引き剥がすこともできずに
立ち尽くす

「ごめんね。」とつぶやいた

言葉は
吹き荒れる北風にかき消され

静かに

どこかへ

消えて

消えて


(おわり)


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作中の樹氷のイメージは蔵王のスノーモンスターです。気になる方は検索してみてください。
マイナス5度以下の世界で、大気中の水分が木や枝に張り付き、風によって氷がどんどん伸びていきます。寒さが厳しく、強風が吹き付ける場所では張り付いた氷がまるでエビの尻尾のように天に伸びていきます。
不思議で美しい自然の造形美ですね。


冬の足音が近づいてきました。
冬支度はお済みですか?
夏からいきなり冬になってしまう年が増えてきて、どこか寂しさを覚えます。
思えば四季折々の表情を魅せる日本の美しさというのは、実は稀有なものなのではないか、神様から賜った宝物なのではないかとすら思える筆者です。

秋の楽しみは紅葉。冬の楽しみは雪。
彩りの次に訪れる一面の銀世界。

雪遊び、スキー、スノボ、冬山登山、雪合戦、雪だるま。
こたつにみかん、お鍋に暖炉の灯り。熱々のココアの上に浮かべたふわふわのマシュマロ。吹いたシャボン玉の表面に踊る結晶。

冬も美しいもの、楽しいもので溢れていますね。

みなさんの冬の楽しみは何ですか?

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