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1人読み用

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朗読用、1人読み用の短編、詩、セリフなど。
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2023年5月の記事一覧

夢を願う

あなたがここに居てくれるという事 それはただの奇跡なのだろう 夢のような幸せを 日々感じている 数多の苦しみや悲しみを 乗り越えてきたのは ただ君に会うためだけの 試練だとしたら 君と未来を紡ぐための 試練だとしたなら 僕はもう他には何も要らない 僕が欲しいのは ただ君だけ 君の心だけ 君が微笑んでくれるなら 君が喜んでくれるなら 僕はこの身を 心を 魂さえ捧げるだろう 君の声を聞きながら 未来に思いを馳せる 二人で他愛のない話をして 笑い合って 時に怒って 時

星降る夜に

星が降ってくるよ 無数の星が 音もなく キラキラと 寝転んだ草原に 星が降ってくるよ 無数の星が キラキラ しゃらしゃら 輝いて 星が降ってくるよ 無数の星が キラキラ しゃらしゃら 笑いながら 星が降ってくるよ 無数の星が ぼくのまわりに しゃらしゃらと 星が降ってくるよ 無数の星が 溺れそうになって 息ができなくなる 星はどんどん降り積もって ぼくのまわりにたくさんの 星の海が生まれたよ 星が降ってくるよ 無数の星が キラキラ しゃらしゃら キラキラ しゃ

空に溶ける

今日も陽が沈む 地上の星が瞬き始め 空が藍に染まり 水平線を 太陽の残り香が 朱(しゅ)に染める 呼吸を忘れて眺める 刻一刻と変わりゆく 色と世界を 只々(ただただ)美しい 頬を熱いものが流れてゆく やがて広がる漆黒に 空と海の境界が分からなくなる 波の音と 漆黒の海 飲み込まれそうな感覚を覚えて 身を震わせる 目を上げれば そこには億万の輝き 何億光年の時を超えて届く瞬き それを想うとき 「嗚呼、なんと矮小なのだ。」と 自分の存在のちっぼけさを思い知る

星屑の光とユニコーン

そのユニコーンは星を食べる 星から溢(こぼ)れた光の欠片 シャリシャリ シャリシャリ シャリシャリ シャリシャリ そのユニコーンは星を食べる 甘いあまい星屑の光 真珠色に輝いて そのユニコーンは歌い出す 空の煌(きら)めき詰め込んだ 深い青い夜の歌 星の光は導くよ 空の彼方の そのまた向こう 月の光の架け橋を そのユニコーンは駆けてゆく ダイヤモンドやエメラルド サファイア ルビー タンザナイト ありとあらゆる宝石を いっぺんにこぼした星空を そのユニコ

花便り

低く、遠く、雷鳴が轟(とどろ)いて 大粒の生ぬるい雨が ぼつり ぼつり と 足元の色を変えていく   川沿いのガードレールを外して 無骨に、ぎゅうと固めてある雪は 埃と土で斑(まだら)に汚れている   道の端の雪を踏めば ジャクジャクと鳴き 雨と土に染まって、足跡の形に消えていく   この冬、散々頭を悩ませた雪も これで見納めだと思うと ある種の、哀愁めいたものを覚える そんなわがままな自分に 思わず笑ってしまう   「春時雨か。」   空を見上げて、頬で雨を受ける 雨と埃の

音が消える日

細雪(ささめゆき)の降る日 音が消える日 風が粉雪を巻き上げ、世界は真っ白に塗り替えられる 牡丹雪(ぼたんゆき)だったそれは、 しんしんと降り続け やがて底冷えする寒さと共に細かくなっていく さらさらとふる乾雪(かんせつ)が あたり一面を あっという間に銀世界へ変えてしまった キシキシと足下の雪が金属音を奏でる 足を動かす度につま先で新雪(しんせつ)が 軽やかに舞う ふわりふわりと笑いながら 振り返ると、歩いてきたはずの足跡が消えていた 風花(かざばな)が雪紋(せつもん)