「どこで農業しているの?」「六本木です!」
「農業」という言葉を聞いて、皆さん何を想像しますか?
「生活を支える無くては職業」「お米や野菜を育てる!」「自然と密接な仕事」「きつそう」「代々受け継ぐような仕事?」「結構汚れそう」「田舎でやる仕事」など、良くも悪くも色々な捉え方があります。
色々なイメージを持たれる職業、農業は、我々の生活にとって必要不可欠な職業です。
近年、様々な分野でテクノロジーの技術革新がされていますが、農業界でも技術革新の流れから、様々なアイデアや方法が考案されています。
そのようなアイデアの一つで僕が興味深いと思ったのが、「垂直農業」。
垂直農業とは?
垂直農業とは、その名の通り従来の地面で土を耕して農作物を栽培する方法ではなく、高さを利用して高層ビルのような建物で農作物を栽培する栽培方法です。
垂直農業の具体的アイデアは色々な種類があるが、大まかなコンセプトの特徴として次のようなものがあげられます。
・10~30階の建物の中で、野菜や果樹などの農作物を育てる。
・建物全体が自然光を取り入れやすい造りにする。
・建物地上部で、レストランや直売所を設営する。
・生活用水などを処理して、栽培に再利用する。
・栽培過程で出た、食物残差も再利用する。
このアイデアを初めて聞いた方は、「土地を耕して農地にすれば良いのでは?」と思った方もいるかもしれません。
しかし、このアイデアが生まれた背景には、農地による自然環境へのダメージや、既存の農業の限界があるのです。
ブラジルと同じ面積の農地は無い
垂直農業の研究の第一人者である、コロンビア大学のディクソン・デポミエ氏の著書「垂直農場 明日の都市・環境・食料」によると、農業の土地利用に関して、次の問題指摘している。
69億人の食糧となる動植物を育てるには、南米大陸と同じ面積の土地が必要だ。このまま伝統的な農業を続ければ、2050年にはブラジルもうひとつ分に相当する農地が必要になるが、そんな土地はどこにもない。
~(中省略)~
それほど広大な新しい土地は存在しない。大規模な飢餓と、必要の食物や水の供給源をめぐる武力闘争を避けたいなら、新しい解決策を考えなければならない。
引用:「垂直農場 明日の都市・環境・食料 ディクソン・デポミエ著 2011年発行」
このように、既存の農業のやり方では、生産面でも、環境面でも、社会的にも限界になりつつあります。
将来に対しての大きなメリット
垂直農業は、そういった問題の多くを解決してくれる農法として注目されています。垂直農業がもたらすメリットは大まかなものだけでも次のようなメリットがあります。
①通年栽培が可能
②気候に関連した不作が起きない
③農業排水が出ない。(農業排水は、工業排水や生活排水と比べて約10倍も土壌を汚染しています。)
④生態系のシステム回復を促進
⑤殺虫剤、農薬、除草剤などが不必要
⑥水の使用を70%以上削減
⑦フードマイル( 食糧の輸送に伴い排出される二酸化炭素が、地球環境に与える負荷に着目した指標)の大幅な低下
⑧食生産の管理がしやすい
⑨新しい雇用機会の創出
これらのメリットによって、多くの課題が解決できる可能性があるのはとても興味深いことです。
僕自身も、これだけのメリットがもたらされるアイデアがあるのだと、とても驚きました
土地取得の方法や、莫大な初期費用の投資、電力の確保など垂直農業を実現する上での課題はありますが、それらを克服してでもこのアイデアを実現する価値はあると僕は思います。
垂直農業のアイデアは世界中でコンセプトが練られています。下記にその一例が見られるリンクを貼りました。ぜひご覧ください。(下記のリンクは、シアトルに拠点を置く建築会社「ウェーバー・トンプソン」が考案した垂直農業のモデル)
http://www.weberthompson.com/projects/319?tag=Urban+Farm
半世紀後の大都会で
垂直農業は、持続可能な社会が謳われている今の世の中において解決すべき課題の多くをクリアにしてくれるアイデアです。
実際にこの10年間で、何個もの垂直農場が建設され運用されつつあります。
僕の夢の一つに
「垂直農業で、持続可能な社会を創る」
というのがあります。
昨今のコロナ騒動で、都市部に住む人が食料品を買い占めて、スーパーマーケットで野菜などが品薄になったことが最近報道されました。
その現象を通じて、「食料が安定的に供給されるありがたさ」「農業の大切さ」を実感した人も少なくないはずです。
半世紀も経ったときには、「どこで農業しているの?」「六本木です!」なんていう会話もでてくるかもしれません。
「当たり前を支えていく」
これが農業の魅力であり、原点だと僕は思います。
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