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【投機の流儀 セレクション】米中の覇権争いにおいて、米国の最終目的は中国のJapanification(日本化)である

これは恩田達紀著「米中冷戦がもたらす経営の新常識15選」(日経BP、2023年刊)の言い分である。言うまでもないことだが、かつて米国は日本を意図的に弱体化させ、お人好しの日本はそれにみすみすとその策略に乗っかってしまった。

まずは貿易戦争を仕掛けた。いわゆる貿易摩擦、日本に迫る構造改革であった。そして、1985年に超円高を誘導するために仕組んだプラザ合意である。その時の円ドル相場は240〜250円だったが、10年後には79円になった。そのプラザ合意の席上には日本もいたが、人の好い日本はみすみすそれに乗っかった。

そして円高ドル安になったので、輸出がトクにならなくなった―→輸出の製造業現場を海外に移した―→中国を「日本の工場」として、中国はベトナムの人件費の安いところに製造拠点を移した―→製造技術が国内から海外へ流れて「産業の空洞化」が日本国内に起こった―→円安になったとしても、輸出効果は以前ほど上がらなくなった―→結果的には、海外へ移した製造拠点を日本に呼び戻すような始末になった。

この一連の経緯を通じて、米国は日本を衰退させることに成功した。同様に、米国は中国の力を削減しようとしていると前掲書では言う。ところが、中国は日本ほどお人好しではない。日本ほど甘くはない。筆者の言い分では、中国は国家ではなく、共産党が率いる組織である。そして中国共産党の目的は、我が党の絶対的権威の掌握と永続統治にあり、共産党による専制体制の永続にある。

中国は2500年前の「孫子」以来、「春秋左氏伝」「六韜三略」「呉子」「韓非子」等々、連綿と続く詐略と謀略の国である。彼らは、国内外の世論を操作する「世論戦」と国内外の相手の心を揺さぶる「心理戦」と国内外に正当性を示す「法律戦」などを緻密にまんべんなく、大胆に展開する。80年代の日本ほど甘くはない。
しかも、中国の核兵器開発に制限は事実上ない。米国の国防省は、中国の核弾頭は2035年には1500発以上になると報告している。中国は米国との核兵器開発に関する対話を拒んでいる。

一方、米国も1.北大西洋条約機構(NATO) 2.日米同盟 3.米韓同盟などで中国包囲網を目指し、新たな軍事同盟やパートナー関係を追加しようとしている。2021年に米英2ヶ国間で「新大西洋憲章」が合意されたが、これは中国に対して西側の中核となる米英がその役割を果たす基盤にするためである。加えて、翌年21年には米英豪のAUKUS、及び日米豪印のQUADも発足させている。
日本は安全保障のもとでは完全に米国の傘の下に入り、貿易面では米国をも主要顧客にしているが、数年前から中国の方が米国よりも比率がずっと高くなった。

【 今週号の目次 】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)週末の市況
(3)「四六木星(しろくもくせい)」と「黒三兵(くろさんぺい)」 
(4)東証プライム市場が、夏から約2割減る。
(5)配当付き最終日の売買
(6)世界株の時価総額、100兆ドル割れ
(7)「日経平均はNYダウの写真相場」か?
(8)「IS(アイエス)バランス」という“基礎の基礎”を理解せよ、と首相に言いたい
(9)株高の持続力が高まるか否かは、賃上げの裾野の広がりがカギを握る。
(10)積極的に賃上げをした銘柄の株が上がっている。

第2部;中長期の見方
(1)米中、首脳会談実現へ協議に弾み (出所:ダウ・ジョーンズ 2023.9.29)
(2)「中国経済悪化はリーマンショックとは違って、世界の金融市場の神経機能を破壊するものではなく、経済の実勢悪への影響だと限定的に見るべきだ」と本稿では述べてきたが、今回若干修正する。
(3)チャイナマネーの逆回転が起こる可能性
(4)米中の覇権争いにおいて、米国の最終目的は中国のJapanification(日本化)である。
(5)国策銘柄というものの考え方について─排出権取引と「もう一つの国策銘柄」
(6)トランプが大統領として再登場した時のリスク
(7)「エルドアンが変えたトルコ」=エルドアンが居なくなれば、大チャンス  
(8)トルコ経済、利上げしても下落は続く。
(9)大国トルコについて─エルドアン退任すれば、大きな好機
(10)専制国家中国と議会制民主主義国のインドとのいがみ合いが大きな障壁となる─国際金融の安定に必要なのは、G20の復権
(11)ロシアの傭兵を率いたプリゴジン暗殺については、既視感がある。

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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