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【投機の流儀 セレクション】「10%消費税」は日本経済を挫折させる

「10%消費税」は日本経済を挫折させる
2014年の8%への消費増税は日本経済に大きなダメージを与えた(★註)。その消費増税までは、GDPの6割を構成する消費が順調に増大し「2%目標」も進みつつあった。しかし、内閣官房参与の浜田宏一博士が強力に主張した通りになって、増税後は国内の消費総額は一気に縮小して4年後の今日でも増税前の「2%目標」に向いつつあった時のレベルより5兆円も低い。
89年に消費税を創設した時はバブルの全盛期だったから大した問題はなかったが、二度目の97年の5%への増税は日本をデフレ経済に決定的に追い込んだ。消費増税をした結果、政府の税収は6年間で10兆円以上も減った。当然、財政は激しく悪化した。経済の停滞で法人税や所得税が縮小したからだ。

(★註)5月5日号で述べたことであるが、今までの3回の消費増税は好景気の最中に行ったが経済実勢も株価も少々躓いた。
初回は89年4月、バブル景気の最爛熟期、それでも消費税導入時には日経平均は下がった。次、97年4月5%に増税した時、これもGDPも下がり株も下がった。次に2014年4月、アベノミクスの壮年期相場の走り、これもGDPも下がり株価も下がった。3回とも好景気の最中だった。ましてや今は戦後最長になると思われている景気の終末期に来ているし、アメリカ景気はどの国の歴史にも類のない10年好景気という期間を迎えている。

経済成長と財政再建を両立させるには消費税を凍結させるだけではなく、「消費税を減税することが必要だ。そうすればGDPの6割を占める消費が活性化して必然的に経済は成長する」と主張するのは京都大学大学院藤井聡である。12年以降内閣官房参与を務める(「10%消費税が日本経済を破壊する」藤井聡著、晶文社、2018年刊)。

筆者もそう思う。
もう一つの筆者の考えは、プライマリーバランスを保つに必要なことは17%消費税だ。17%に至るまで毎年1%ずつ消費増税することを超党派(★註)で決めて着実にそれを実行する。そうすればインフレマインドが醸成されてわずかながらも買い急ぎ気分が生じて適度なインフレが実現する。この説は5月5日号で述べた。
勝間和代氏の言う「人口ボーナス」は夙に終えて労働人口が減り始めてから久しい。それに加えて消費税を創設したことが日本のデフレを長引かせた。ひとことで言えば、人口減という政策では簡単に解決できない問題を消費増税という愚策が日本経済の衰退を決定的にした。

現在の日本経済の先進各国に比べての相対的な弱さの原因は人口減少とデフレである。前者は担当大臣などを据えてもそんなことでは簡単に解決できない問題だ。 
しかし後者は政策の失敗である。こんな単純なことを内閣官房参与が主張してもまだ気付かない。
要するに日本経済の相対的な衰退は30年間の前半の長期にわたった政策の失敗と経済学の貧困に在る。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)米利上げ観測が後退して世界の13市場で株価下落。そのうえ、10連休の最終日、日本時間で6日の早暁、トランプの対中国自動車関税発言で大幅安、10連休は斯くて終わって令和元年の初日の立会いは▼335円と大幅安で始まり最初の二日で▼700円だった。
(2)“Sell in May”――「5月には売れ」
第2部 令和時代の株式投資、「1億投資家・ツワモノたち」
と「一般投資家」についてのアンケート要約

「1億円以上の投資家」「ツワモノ」「一般投資家」の三者に対する日経ヴェリタス紙の1千人のアンケートの要約
(1)両者の種々の行動の差
(2)1億円以上の人、チャンスとあれば積極的に取引を仕掛けながらリスク管理は徹底する。
(3)「買い時は逃がさない」
(4)1年後の相場の見通しについて
(5)ライフスタイルの相違
(6)長生きリスク――「如何に死ぬか」は「いかに生きるか」である
第3部 中長期見通しと長期投資と、中央銀行への政治圧力の問題
(1)日経平均三尊天井形成後に大幅下落か、高値更新して続伸か
(2)人口減少と日本経済
(3)「長期的投資は人生を豊かにする」(澤上篤人)
(4)中央銀行への政治圧力、「その功罪を歴史に学ぶ」
第4部 消費増税と政局と市況
(1)「10%消費税」は日本経済を挫折させる
(2)読者のIさんとの「消費増税延期について」の交信
(3)昭和から平成、平成から令和へ、これの既視感
第5部 海外情勢
(1)好調の米経済に潜むリスクはないか
(2)巨体・中国経済
(3)米の対中国貿易摩擦
(4)中国景気減速の影響が各国企業に広がりつつある
第6部 企業不祥事と投資機会の実際
(1)はじめに:筆者の長年の友人でジャーナリストである嶌信彦(
2019年4月19日 vol.140より)
仮題「少し大げさにいえば、日本は工業大国として岐路に立っているのかもしれない」――投資家としてここから学ぶものは何か?
仮題は筆者付す
(2)企業不祥事から投資家として何を学ぶか――筆者が実行した失敗例まで含めた7つの事例

【お知らせ】
「投機の流儀 セレクション」のアーカイブは、電子書籍の紹介サイト「デンショバ」にてご覧になれます。
デンショバ
http://denshoba.com/writer/ya/yamazakikazukuni/touki/

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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