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【投機の流儀 セレクション】「もしトラ──トランプリスク」どんなことになるだろう?

海外要因で最大なものがトランプの再選であろうと筆者は考える。米国のアジア外交は大きく転換するだろう。トランプ流の実業界の経験、つまり相対(あいたい)取引で二国間取引が盛んに行われるだろう。

トランプは北朝鮮の金正日と大統領在任中に3回会った。バイデン政権になってから北朝鮮は対米強硬路線を強め、今や米国に到達するICBMを保有するようになった。トランプは就任後、4回目の北朝鮮会談を仕掛けるだろう。そして、韓国に置いた米軍を引き揚げると言うだろう。そうすれば日本が脅威に遭遇する。それをセールストークとして、日本に相対取引を仕掛けて、結果的には関税を10%か15%上げると言い出すだろう。暴落するのは輸出企業だ。

そして、ウクライナに侵攻したロシアに弾薬の供給を止めると言うだろう。また、日本に駐在している米軍の費用をもっともっと負担しろと言うだろう。トランプは同盟国である日本の安全を脅かし、それを盾に経済的負担を求めるという外交を露骨に行うだろう。
トランプ時代に大統領補佐官だったボルトン氏は回顧録で「トランプは在日米軍を撤退させると日本を脅して、交渉上の有利な立場をとるだろう」と臆面もなく述べている。在韓米軍の撤退と同時に、在日米軍も撤退すると言い出すだろう。または在日米軍の経費を負担しろと言い出すだろう。そうなると昨年日本株をリードしたグループの一つ、重工御三家である三菱重工(7011)・川崎重工(7012)・IHI(7013)が花形になる可能性もある。

また、こういうことも考えられる。アメリカは元来多国間交渉を断ち切って、独立しても生きていける国だというDNAがある。第4代大統領モンローのモンロー主義、第7代大統領の「合衆国は合衆国国民のための国だ」と言って、対欧州交渉を断ち切ることを考えた。元々250年前の独立宣言から、アメリカは食料も資源も自給自足できる国土を有しているから、他国と関係しなくてもいいのだというDNAはあった。これは事実だ。トランプはそのような回りくどいことはと言わずに、直接相対取引で迫るだろう。

今、考えられる海外要因は以下である。
1.二つの戦争
2.中国経済の大きな衰退
3.日米金利差から来る為替の攪乱
4.「もしトラ」

もっとも大きいのは、最後の「もしトラ」であろう。これは直接的に影響するからだ。但し、ウォール街ではアメリカファーストという合衆国本来の伝統に伏在していた本質をえぐり出してみせるやり方に喝采を送り、ウォール街さえ良ければいいのだという理屈を付けて「ウォール街の懲りない面々」によるNYダウの暴騰もあり得ないことではない。
NYダウと日経平均とのデカップリング論(「デカップリング」は「経済分断」と訳されるが、デカップリング論に相当する日本語はない。分断論とか経済分断論という言葉は見当たらなかった)は注意深くありたいし、やめたほうがいい場合が多いと本稿では述べてきた。
この点を思い出しながら、ウォール街を注視すべきである。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)株式市場に「唐突」という言葉はない。必ず、予兆があるはずである。
(2)週末は、整理局面らしく動いた。
(3)23日の日銀の会合は、重要な内容を示唆した。
(4)「海外投資家は強気」と言うのは、野村とゴールドマン・サックス
(5)熱血漢黒田さんの後に学者タヌキの植田さん
(6)3日続落場面では、短期売買を好む個人投資家が信用買いを入れたものと思われる。
(7)「レビュー」と称して時を稼ぎ、迷っているフリをする「タヌキ植田総裁」の手腕
(8)植田タヌキ総裁に利上げの腹があることは、誰よりも金利に敏感な債券市場のプレイヤーに読まれている。

第2部;中長期の見方
(1)今年に入ってからの1ヶ月を振り返れば・・・
(2)過去、日銀が金利上げに移った時期と株式市場の関係─「初押しは買うべし」
(3)「脱現金、日本株で勝つ」
(4)「分断の時代」に直面して、苦闘する日銀
(5)「成長と分配の好循環」を成立させるためには・・・
(6)実質賃金の上昇を継続させるには、どうすれば良いのか?
(7)「正しく恐れる」ことが本当の勇気だ。
(8)明確で短い説明を反復主張できなければ、総理には向かない。
(9)「もしトラ─トランプリスク」どんなことになるだろう?
(10)経営への取り組み改善の開示
(11)インフレ傾向を受けて消費関連株が上がったが、二極化現象が進んでいる─低価格・低額販売銘柄の株価好調、高級ブランド銘柄は失速
(12)インフレが続けば、投資する人としない人の差が明確に出てくる。
(13)岸田首相の「巴投げ」は、ひとまずは効いたが・・・
(14)ダボス会議、景気先行きに概して楽観ムード
(15)日本株について、海外ファンドマネージャーの見方
(16)COP28が東電株(9501)に与えた影響

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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