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【投機の流儀 セレクション】世界の分断がもたらしたインフレが日本に物価高(インフレとは違う)をもたらした

日本の物価が上がった原因はインフレではない。インフレは、需要が供給よりも強いことから起こる。ところが、今、物価が上がっているのはその意味のインフレではなく、世界の分断がもたらした供給不足による物価高が原因になった単なる物価高である。
そういう意味では「連合」の迷会長が言った「物価高のために賃上げした」という意味の物価高という言葉の使い方は正しいであろう。

ところが、世界の分断がもたらした物価高が長年の日本の課題であったデフレを反転させて、本当の意味でのインフレにつながる可能性がないことはない。
原材料が上がるよりも、賃金が余計に上がれば需要は伸びる。そうすれば、インフレは起こる。本稿で何度も言ってきたように、全ては賃上げから始まる。デフレは、消費も設備投資も先送りすることから始まる。したがって、利益剰余金が残る。これが低PBRの元になった。

1株当たり純資産は半強制的に公的資金を注入して、13年続いた不良債権不況を脱した年、つまり2003年を基準にしてみれば、今はその頃の4倍半ぐらいの金額になっていると思う。
そして、アベノミクスが始まった頃、2012年末から1株当たり純資産は2倍半ぐらいになっている。

この意味から言えば「日経平均33年ぶりの高値」と言うが、33年前よりも企業の懐具合は豊かになっていることになる。33年前のPBRは3.6倍ぐらいだった。1株当たりの純資産は8400円ぐらいだった。今、1株当たり純資産は2万円を超えているであろう。

したがって、機械的に33年前のPBR3.6倍に当てはめれば、日経平均は72000円ということになる。「33年ぶり」などと言っても、当時と企業の内容が違うし、世界情勢も違うし、株価の勢いも違うし、株価の方向が違う。

「33年前」は下向きの時代だった。39000円弱が垂直に下げて3万円を割り込んだ、その時のことを言っている。そして、7000円になるまでの間のプロセスだ。その時と比較してもあまり意味がない。

第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)個人売りが海外勢の買いに肩代わりされた構図
(3)日本株だけの上昇鮮明
(4)週足7本連続陽線、2年4カ月のボックス圏離れ後、堅調に高値圏に張り付いている。
(5)「日経平均バブル後の最高値」「33年ぶりの高値」と言うが、これはどういう意味か?
(6)日本株、個人投資家は弱気、大型株偏重の高値更新
(7)日経平均33年ぶりの高値、この先をどう読むか?
(8)解散・総選挙を迎える─自民・公明との仲の亀裂は懸念
(9)名目GDP過去最高、この方が「日経平均33年ぶりの高値」より何倍も大きな話しだ。
(10)かすかに見える脱デフレの曙光
(11)米地銀破綻は続く。
(12)機械受注4〜6月の見通しは4.6%増加
(13)世界の分断がもたらしたインフレが日本に物価高(インフレとは違う)をもたらした。
(14)広島サミットの意義

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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