本音を言えたらどんなにラクか

朝、走りながら笹内と
校門を通り過ぎる島田を窓から眺める。


あぁ、走る姿も

素敵だなぁ、と思う。


校門の秋田先生に
服装チェックで引っ掛かった笹内を
横で庇う島田を見て、


優しいなぁ、と思う。


結局一緒に怒られる島田を


お人よしだなぁ、と思う。


チャイムが鳴った頃に
ちょうど教室にギリギリで入り、
ちょっと息の上がってる島田を


セクシーだなぁ、と思う。


授業中、ペン回しに没頭しすぎた結果
ノートを写せなかった島田を


かわいそうだなぁ、と思う。



チラッと目が合って

ニコリと笑われたとき、

鼻血が出そうになった。



休み時間、友達と
楽しげに話す島田を見ていたら
皐月に肩を揺らされて
慌てて現実に戻る。


お昼休み、購買に行ったら

「木本さーん、」

と笹内に声をかけられて
その隣にいた島田と目が合った。


「なに買ったの??」

「たらこおにぎり。」

「え、一緒だ。

わー、なんか嬉しいー。」


明るく笑われて

はずかしすぎて死にそうだった。


「な、なにが嬉しいの?!気持ち悪い!!」


笹内は後ろから来た春日さんと
何やらイチャイチャしつつ

私のことを二人仲良く見つめて来る。


「き、気持ち悪い…?!」

「だ、だって、キモいじゃん!!
同じの買って嬉しいとか、意味わかんない!!」


そんな言い方してしまう自分が


本当に、嫌い。


「えーじー、わりー。
俺、美奈と飯くうわー。

えーじは木本さんと
仲良くランチして。」

「え、あ、うん。」


笹内の要望に島田は
少し戸惑いつつも頷く。


私は小さくため息をついて

教室に戻りかける。


そんな私の腕を
慌てるように掴む島田。


反射で振りほどいたけど

多分、私のそういうのには
慣れてるんだと思う。


特に顔に焦りも浮かべず

「ごめん」とだけ呟いた。


「二人で食べようよ。」

「な、なんでよ…??」

「あ、木本さん、本橋さんと食べる??」


皐月は今日はお昼、

委員会がある。


「七香達に入れてもらうつもりだった。」

「まだ誘ってないんだ。」

「それは、」


「なら俺と食べよ。」


笑いながらサラッと簡単に

言ってのける島田が

素敵すぎる。



本音を言ったら

こんなに想いは溢れてるのに。



「…島田が一人になっちゃうなら

一緒に食べてあげても良いよ。」



その想いを一滴も

貴方に伝えられない。



本音を言えたら
どんなにラクか







**


好き、好き、好き。


何回言っても足りないのに、

一回も言えないなんて、


勿体ないのに

やっぱり、できない。






2012.02.04
hakuseiサマ
本音

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