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正直すぎるカレ


大変なことになった。


壊れた看板を見て

俺は慌ててしまう。


どうしよう。

つぐみにバレたら。


これは大変なことになる…!!


数分前、俺は職員室に
補習のプリントを渡しに来た。

すると、そこでたまたま
生徒会で来ていた鶫と
バッタリ鉢合わせた。


「あー、フミくーん。」


ニコニコ笑いながら
つぐみは俺に駆け寄る。


「なにしてるの??」

「補習終わったから出しにきた。」


古語のプリントを見せると
鶫は納得した様に頷く。


「今から帰るの??」

「おう。つぐみは??」

「私も帰るよ。」


あっきーは俺と鶫を
見てるくせに見ないフリ。


「一緒に帰るか??」


俺の質問に鶫は
単純に一つ頷く。


「じゃあ、私の教室で待ってて。

あ、私の教室、文化祭で使う
看板が立て掛かってる。


絶対、壊さないでね。」


そう言われてウキウキで

つぐみの教室に入った数秒後。


俺は思い切り看板に頭をぶつけ

看板の足が取れてしまった。


「…やべぇ。」


どうしよう。

どうしたら良いんだろう。


そもそも謝るとしたら
これは2D全員に謝る規模の話だ。

つーか、D組の担任の志賀先生にも
謝らなくちゃいけない。


俺、習ってねーよ!!


全然馴染みねーよ…。

絶対オレのこと怒る…。


どうしよう、ホント。


「フミくん、お待たせー。」


「つぐみ、ゴメン!!」


つぐみが入ってくると共に
俺は急いで頭を下げる。


「…へ??」

「これ、2Dの看板…、
おれ、その…、


壊しちまったんだ!!」


頭を下げてそう言うと

つぐみは俺のことを

何も言わずに見てくる。


「謝って許される問題じゃねーけど…。

俺、全く同じの作り直すから!!

ホント、ごめんなさいっ!!」


つぐみは俺から離れ

看板をいじりだす。


「志賀先生にも謝って来る。」

「黙ってればバレないよー??」


つぐみは俺を見ずに

そんなこと言ってくるけど。


バレない嘘なんか

この世にないんだっ!!


「ぜったい、バレる!!

それに、隠し通せても
D組の奴らは困るしっ!!

せめて謝る機会だけでも、」



「ってゆーかフミくん、

なおったよー。」



つぐみはいつもの調子で

淡々とこちらに
看板を向けてきた。


「…え??」

「私、すごいでしょ??」


そしてつぐみは俺に

躊躇なく、抱き着く。


「正直者なフミくん、だいすき。」


どうして良いか分からないけど

うん、とにかく


抱きしめ返すべきだと

俺は、思った。



正直すぎるカレ







**

ぎゅっ、てフミくんが
抱きしめ返してくれるから

なんか、笑っちゃって。


接着剤使ったことは


内緒にしました。






2011.09.01
【hakusei】サマ
200「壊さないでね」 

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