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1、2、3で言ってみよう

今日のライブで決める。


何度も何度も心の中でそう言ってるのに

手は汗ばむしドキドキしまくるし
いつもは好きなあの歌もこの歌も
どれも全然耳に届かない。


「ギャラスタのライブなんて来るの
三ヶ月振りです!」

「あ、そ、そう?」


バイトの後輩の女子に惚れて
ギャラスタを知った。


好きな音楽を聞いたら
知ってますか?と聞かれて
CDを借りて以来、俺も好きになった。

ライブに行く様になって
二人でギャラスタの話をするようになって
距離が縮まった気がした。


ライブに誘って、

今日、告白するって決めた。


「あの、先輩?
体調でも悪いんですか?」

「え?!あ、いや?
悪くないし元気だし楽しいよ!」


一息で答えた俺のことを
少し不思議そうに見てから
噴き出すように笑う。


「先輩、やっぱり面白いですね。」


面白いじゃ、困るんだよなぁ。


笑いながら心の中で
そうポツリと呟いた。


正直どこまで脈ありなんだろ。

こうしてライブに一緒に来てくれるってことは
きっとゼロではないだろう。

バイト先でも仲いいし、
同期の奴は俺の評判
割といいって教えてくれたし。


付き合いたいって言ったら

うん、ってなるのだろうか。


そんなことを考えてから
もうしばらく時間は経って

気付いたらギャラスタが
フクがギターを変える時間を
埋めるように喋っていた。


「みんな、水のんで良いからね。」


カクの声に水を飲む後輩。

俺もつられるように飲む。


「…ほら、カク。
フク少し時間かかるってよ。
なんかやれよ。」

「えーと。

じゃあ、1、2、3って言った時に
秘密にしてたことを言います。」

せーの、って言われて
俺らも123と声を出す。


「先輩のケーキ食べたの俺です!」


ふざけんな、と流星が言って
バタバタしてるうちにフクがギターを持つ。


「えー、じゃあ、あれだな。

カクにちなんだ歌にします。

歌える人は一緒にどーぞ。」


123、の掛け声とともに
フクのギターがなった。


隣でぴょんぴょんはねるその手を

勇気を出して握った。


ほら、勇気を出して言ってみよう。


「みきちゃん、」

「はいー?」


123で言ってみよう。


「おれ、あのさっ!」


耳に唇を近付けて

俺は心の中で123と数えた。



「みきちゃんが好きだよ!!」



ぴょんぴょん跳ぶのをやめて

少しだけ俺の中だけ沈黙になった。


曲が終わった時

小さく「私もです」って言われて

周りも気にせずに
よっしゃー、と叫んだら
流星に少しだけ笑われた。



1、2、3で言ってみよう







**


ギャラスタのライブに二人でくると
恋愛成就するっていうカクの冗談、

あながち間違ってないのかもしれない。






2012.07.12
hakuseiさま
1、2、3

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