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心臓ごとあなたにあげるわ

今年はシュークリームに挑戦した。

詩織ちゃんにコツとか聞いて
すごく、上手くいって。


私はそれを持って

ゆきくんの部屋で待機。


一昨日まふゆちゃんと買った
赤い、チェックのスカートと

黒いリボンを髪に結んで

正座していたら


メールで来た時間より
3分くらい早くに
ゆきくんが部屋に帰ってきた。


「ただいま。」

「おかえり!!」


私の格好を見ると
少し微笑んだゆきくん。

男らしい手を握ったら
すごく冷たくて

私との温度差に
少しドキッとした。


「蘭ちゃんの手、あったかい。」

「外、寒いもんね」

「うん、そうだね。」


そう答えながら立ち上がるゆきくんを
私は慌てて引き止めた。


「どこ行くのっ??」

「いや、どこって…。

蘭ちゃん、オシャレしてるし。
外でご飯とかたべたいのかなって。

このあいだ涼太くんから
良いお店聞いたんだ。

良かったら行かない??」


行きたい。でも、

今日はちがくて。


「これ、ハッピーバレンタイン!!

シュークリーム!!」


差し出した箱をゆきくんは
嬉しそうに持ち上げた。


「ありがとう。
あとでゆっくり食べるね。」


そう笑ったゆきくんの手をもう一回、握る。


そしてゆっくり

唇にチューした。


ビックリするゆきくんが

ちょっとだけ可愛い。


「あと、わたし。」


言ってから恥ずかしくなった。

あー、やっぱり言わなければ良かった。


でも、

言ってみたかったのも事実。


「…蘭ちゃん、」


名前を呼ばれて、顔をあげたら

再び重なった唇。


ゆきくんの手があたたかくなって

私の温度と重なる。


それだけでも苦しい。


ゆきくんの指と私の指が絡む。

キスが、深くなる。


「…貰っちゃって良いの??」

「い、いい、よ…??」


苦しい、嬉しい。

そんな気持ちでいっぱい。


ゆきくんの手が一瞬離れて

私の髪を撫でた。


「だからリボンしてるのか。」

「ベタでごめんね。」


「そういうの、好きだよ。」


私の黒いリボンが
スルリと髪をほどいて


ゆきくんの指が私の体をなぞって、

ゆきくんで頭がいっぱいになって、

心臓もゆきくんのせいでうるさくなって、


もっと、もっと、全部


ゆきくんにあげたい。



心臓ごと
あなたにあげるわ







**


レストランは予約していて、

道も調べて、
デートコースも一応
考えてたんだけど。


全部覆るほど、

君が欲しいと思う俺は


まだまだ、ガキだね。







2012.02.16
hakuseiさま
心臓

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