誰にも伝わらないとして

俺の発言にそうちゃんはポカンと間抜けな顔になる。
ギンちゃんは笑いを堪えるのに必死だ。


「空、お前マジでそれ言ってんの？」

「うん。

梅ちゃんて、美少女だよね。」


ギンちゃんは堪えられなくなったらしく
声を挙げて爆笑した。


「九条さんが美少女？！
空って頭おかしいの？！」

「いや、ギン、言い過ぎ。」


そう言ってるそうちゃんも
涙出るレベルで笑ってるし。

…なんでだよ。

なにがそんなにおかしい。


「お前まさか、
小牧ちゃんと梅だったら
梅のがかわいいとか言うレベル？！」

「うん。…え？
だって、小牧さんは普通じゃん。」

「いや、小牧さんは普通だけど、
九条さんはそれ以下だろ。」


ギンちゃんはこの間、
バイトでボーリングに行った時の
梅ちゃんのブレまくりの写真を見せて

再び爆笑。


「それは写真の撮り方だろ！

だいたい、ギンちゃんの彼女だって
顔かわいくないじゃん！」


「菜摘はかわいいだろ。
つーかあいつ顔しかないんだから
そんなこと言うなよ。」


なぜそうちゃんがフォローしたのかは
とりあえず置いておくにしても、
俺は梅ちゃんをブス扱いされるのが
本当に気に食わない。


「なんだよ、みんなして！
梅ちゃんのことブスって言いやがって！」

「いや、ブスではないけど、
美少女ではないだろ！


ゆるキャラみたいなもんだろ！」


そうちゃんの例えに
再びギンちゃんはテーブルを叩いて笑う。


「ゆるキャラかわいいだろ！」

「じゃあお前ゆるキャラのこと
美少女だなーって思うのかよ。」

「女じゃないだろ！」

「だから、一緒。


梅なんて俺らからしたら
女にすら見えないのー。」


タヌキだよな、

そう二人で笑い合うのを見て
俺はイライラしてきた。


「だいたい、梅ちゃんデブじゃないし！
どちらかと言うと細いだろ！」

「でも超丸顔じゃん。
コロコロしてんじゃん。」

「足だって、美脚だろ！」

「短足なのが残念だな。」


「肌だって超綺麗だし、
色白だし、手綺麗だし、
腕細いし、膝かわいいし、
姿勢良いし、まつげ長いし！」


言い切った俺を見て

二人は苦笑に変わる。


「いや、俺らそこまで
九条さんのこと見てないから」


…まぁ、確かに。

見られてたところで
それもまたイライラする。


「空ってあれだな。
見る目ないよな。

もっと分かりやすい美少女
お前ならゲットできるだろ。」


そもそも、梅ちゃんの良さは
顔だけじゃないし、
どちらかと言うと性格だし、


だけど、俺にとっては

最高にかわいいんだ。

誰にも伝わらないとして

**


「なぁ、梅。
この間、空がお前のこと
すげー褒めてたぞ。」

「え、なにをですか？！
どこをですか？！」

「かわいいって。」

「…え？！どこが？！」


「…手とか、まつ毛とか。」






2013.03.22
hakuseiさま
顔