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全部、ちょうだい

千葉っちにチョコを渡して
職員室から出た時に
丁度渉とすれ違った。


「まふゆちゃん!!」

「…。」

「えっ?!シカト?!」


ココで会うのは想定外だったので

私はスルーして
なかったことにしようとしたけど

渉は私の隣にピッタリ並ぶ。


「…なんで今日、渉が学校いんの??」

「今日はたまたま受験なくてさ!
昨日、合格発表されたとこ受かってたから。

岡山先生に報告しようと。

てか、まふゆちゃんは何してるの??」


私がどんなに早歩きしても
さっさと追いつかれてしまう。


「千葉っちにチョコ渡してた。」


私の答えに露骨に落ち込む渉。


そのまま壁に体を倒す。


「俺、彼氏なのに…。

千葉先生に負けるとか…。
福島先生とか香川先生に
負けるならまだしも…、

千葉先生に負けるとか…!!」


わざとらしく壁とか叩いて
見ててほんとに引く。


引きすぎて、笑えて来る。


「…あるよ、渉にも。
はい、これ。」


作ったクッキーを渡すと
私の手に持った袋を指差す。


「それらは誰にあげるの。」

「え??なにが。」


「そのチラチラと見えてる
マフラー的なものとか。

まだまだ余ってるチョコ的なものとか。

どなたに渡すの。」


チョコ的なものは例年通り
作りすぎて余るパターン。


マフラー的なものは

渡すのが嫌になったパターン。


「関係ないでしょ。」

「いや、あるよ!!
もし、まふゆちゃんがそれを
伊達に渡したり、廉次に渡したり
梶に渡したりする気ならば

俺は全力で止める!!」

「いや、その辺は私から何もいらないでしょ。」

「友チョコだと言うのなら
君に友達そんなにいないよね!!」

「うるさい。」

「貰ったにしてもそんなに友達、」


「うるさい!!」


渉は少しビックリして
私のことを見て、気まずそうに笑った。


「ごめん、いや、
今のはいつものノリだよ?

本気では思ってないし!!

つーか、まふゆちゃんの友達想いなとこ、」


「うるさいから、

全部、あげるよ。」


袋を突き出したら
渉は目をぱちぱちさせた。


「…はい??」

「いらないなら、いい、けど、」

「いや、いるけど。いいの?本当?」


少し笑いながら袋を受け取るから

走って逃げようとしたのに
それでも追い掛けてくるとか


ホント、

しつこくてウザい。



全部、ちょうだい







**


「ねぇ、最初から俺に渡す気だった??」

「なわけないでしょ。」

「マフラーは??」

「趣味で作ったの。」

「なんで持ってきたの??」


「お願いだからもう、

あっち行ってよ!!」






2012.02.15
hakuseiさま
うるさいな、全部あげるよ

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