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与えられた選択権

和泉先輩は俺の隣で
最近発売された『お寿司キャンディ』の
うに味を舐めながら

Lilyについて熱く語る。


「いやー、やっぱり可愛いな!!
つーかコスプレ最高だな!!
木本さんに合わせて全員でやる
Lilyの優しさ素晴らしいだろ!!」

「…つーか、先輩。
その飴美味しいですか??」

「うにとしょうゆと穴子といくらは美味いよ。
まぐろといかとはまちは微妙。」


そう言って穴子味をくれた。


「でも結果、俺は羽田さんなんだよなぁー!!

むっちゃ可愛くね?!

いや、桜木さんみたいに
ちょっとキツそうな子にいきたくなるよな、
最近S系女子キテるから!!あ、俺のなかでな。

でもほら、浜口さんのあの
細かい気遣いは捨て難いよ。

見てみ?!コードつまずかないように
絶対木本さんに注意するから、みてみてみて、

はい、ほら!!注意した!!」


和泉先輩はこの間のLilyのライブにも
元野球部の先輩と一緒に
ちゃっかり参加していたりしている。

だから結構歌も知ってる。

俺の隣で口ずさむの
正直、やめてほしい。


「あ、本橋さんはいっつも
曲に入る前に必ず

全員のこと確認して笑う。」


思い出したみたいにそう言って
だらしなく椅子に座り

俺のことを見上げる。


「…で、その後どうなわけ。」

「…先輩には関係なくないっすか。」

「広瀬さんとは別れたのかよ。」


何も答えない俺に

はぁ、と大きくため息をついた。


「なるほどねー。

だから今日も俺を見つけて
即体育館へダッシュ。」

「…すみません。
先輩、野上先輩と来てたのに。」

「いや、俺は別に。

Lilyはどうせ見る予定だったし。」


皐月ちゃんは俺を見つけると

少し驚いてから笑った。


そんな皐月ちゃんを
隣から見ていた和泉先輩は

俺の足を思い切り踏む。


「ったぁ!!」

「やっぱムカつく!!
俺いまリハビリ中なの。分かる?!
冴島帰って二週間しか経ってないの!!
復活までもう少しかかるの!!

こういう状態の人間の前で
イチャつかないでくれる?!

公共のマナーだぞ!!」


コソコソした声でそう言って

俺のことを軽く殴ってから言った。



「その選択が例え
どんなに最悪なものだとしても


選ぶっていう行為ほど

贅沢なことないんだぞ。」



そしてしょうゆ味を口にくわえる。


「バイ冴島由香。」


先輩はなぜか少し笑って

舞台にまた、目を向けた。



与えられた選択権







**


先輩を舞台から見た時、

笑った自分は本当に最低だと思った。


でも、最低でも良い。


先輩に選ばれるためなら

どんなに最低でも良い。






2011.12.27
hakuseiサマ
選択権 

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