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your love is desperation


気付けば付き合って7年経った。
就活して、頑張って入った出身大学も
既に2年目でかわいい後輩と働いてる。

同僚がこの間、結婚した。
高校の頃から付き合ってる彼氏がいる、って言ったら
ものすごく驚かれた。


「波音ちゃん、起きて。
いつまで寝てるの、もう朝だよ」

「んんー…。
無理、起き上がれない…。」

「仕方ない、バナナスムージーを作ってあげよう」


バナナスムージーに惹かれて
起き上がった私を見て
輝くんは呆れたように笑った。


「ほんと、朝弱いよね」

「うるさいー…。
輝くんが起こしてくれるから良いのー」

「はいはい。」


面倒見が良くてイケメンで
優しくて頼りになる上に
一途で健気な彼氏は

絶対に私のことを呼び捨てしない。


ずっと、って言葉も
一度も使わない。


お揃いのグラスに
バナナスムージーを入れてから
飲み終えた私の口の上についたスムージーを
手元のティッシュで拭き取った。


「…子ども扱いしすぎ!」

「あれ、子どもじゃなかった?」

「お、な、い、ど、し!!」


今年で

24歳だよ。


それなのにどうしてあなたは

そんなに、いつまで経っても


寂しそうな目をしてるの。


「…今度、お母さんが
輝くんに会いたいって。」

「なんで。」

「なんで、って…。
もう七年も付き合ってるんだし、
こんな、半同棲みたいなことしてるんなら
いっそ出て行って二人で暮らしたら?って…」


喋りながら

悲しくなった。


断る理由を探してる目だ。


「…でも、お互い仕事も忙しいしさ。
波音ちゃん、家事苦手でしょ。
俺転職したばっかりだし。
二人で暮らすってなったら相当つかれるし、
何より波音ちゃんのお母さんも、」


「だよね、そーゆーと思った。」


こういう言い方で
感情のニュアンスは伝わってしまうから
長年一緒にいるっていうのは

楽で、残酷だ。


「…会って欲しいの?」


どうしていつもあんなに優しいのに
こういう、デリカシーのない質問してくるんだろう。


「べつに。」

「…ごめん。」


「輝くんは

私が別れたいって言ったらどーする。」


動じることもなく

スムージーのなくなったグラスを
流しに片付けながら少しだけ考えた。


「別れたいの?」

「ちがうよ。

でも、別れたいって言ったらきっと
『わかった』って言うんだろうなって

思っただけだよ」


きっと、

それが君のためになるなら、って言って
笑顔で簡単に手を離すんでしょう。


「…怒ってるの?
スムージー美味しくなかった?
お母さんに会った方が良ければ会うよ」


「スムージー美味しかったし

会った方が良いから会って。」


わがままになってしまった。

わがままにならないと
付き合っていけなかった。


私一人だけ

独りでずっと

走ってるみたいだ。



your love is 
desperation

 




**


不満そうな波音ちゃんの気持ちは
本当は分かってるんだけど。

だけど、どうしたって

俺といれば幸せだよ、なんて

言い切れない。


俺がいらなくなったら
捨ててね、の方が

気持ちとして

しっくりきてしまう。






2017.10.04

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