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恋なんて馬鹿じゃなきゃできない


俺の口端の傷を見て

美奈が呆れた様にため息をつく。


「何してんのよ??」

「まぁ…、
イロイロあったの。」


理由は単純。


隣のクラスの奴が

美奈をバカにした。


「A組の春日ってさー、
ぶっちゃけ簡単にヤレそうじゃね??」


それくらいならまぁ、

ただのバカの意見だから。


放っておけたんだけど。


「だってあいつ、
誰にでも足開きそう。

抱くだけだいて捨てても
何も文句言わなさそうじゃね??」


それ以外にもダラダラと
美奈のことを悪く言いまくり


隣にいた貴志も軽くキレて。


「っつーか、春日となら

キスもセックスも、」


気付いたら殴ってた。


たまたま近くにいた栄司が
慌てて止めに入って。


貴志は俺側で

止める気ゼロだったけど。


栄司のことも振り払って

廊下で殴り合ってたら

担任のあっきーに止められた。


「笹内っ!!」


名前を呼ばれて

それでもまだ、足りなくて


他の先生も何人か来て


結構な騒ぎになり、


次の授業は
事情聴取と治療で出れなかった。


「喧嘩なんて
笹内らしくねぇなー。」


あっきーは少し楽しそうに

だけどやっぱり
立場上、怒りながら


俺の目を見て聞いてきた。


「何か言われたのか??」

「…。」

「何も言わなかったら
お前が悪者だぞ??」

「別に良い。」


美奈にあいつが言ったこと
俺が口にするくらいなら

退学になっても良いと

その時はマジで思った。


「…ね、あっきー、
俺、処分とかあるの??」

「ねーよ、ばーか。

たかが鼻血出させただけで
退学なんかにするか。

向こうも反省してるし。」


反省したって許されないこと

この世にはあんだろーが。


「…殺したい。」

「威勢良いな。」


あいつに美奈の何が分かって

美奈がお前に何を見せた??


っつーか、絶対あいつ

美奈に頭の中で

何かしてんだろ。


そう考えたら、また腹が立ち

机を蹴飛ばすと

外に居たらしい長野先生が
教室の扉を開ける。


「秋田先生??」

「あー、平気、平気。

ちょっと机に足当たっただけだから、な??」


俺の目を睨む様に見るから

俺も睨み返すと


また、少し笑う。


長野先生はため息をつき

教室からでていった。


しばらく経つとチャイムが鳴って

俺、かなり長い時間
キレっぱなしだったなーって


そう思って教室を出たら

そこに美奈がいて。


「み…、」


名前呼ぼうとしたら

頭を軽く叩かれた。


「ほら、帰るよ。」


その声はかなり頼もしく

思わず笑ってしまった。



「日高から聞いたよ。

ほんと…、何してんのよ??」

「まぁ…、
イロイロあったの。」


それで、冒頭に戻る。
美奈が鞄を持ち直すから

俺は慌ててその鞄を持つ。


「ごめん、美奈。」

「謝るとこ、そこじゃない。」


俺が持とうとした鞄を
自分の手で持つ美奈。


「日高から聞いた。
あと、島田からも。

私のこと、かばおうとしたって。

友達も、言ってた。

ヒロ、かっこよかったって。」


だけど冷たい美奈。

まぁ、だろうな。


俺、やっちまったし。


「賢い男はバカの話なんて
笑って聞き流すの。

モテる男はモテない男を
笑ってなんぼでしょーが。」

「…はい。」


「構った瞬間、同レベル。」

「…はい。」


大人しく頷く俺を見て

腕を組む美奈。


「そもそもイイ男はねぇ。

彼女に心配や負担を
かけないもんなんですー。」

「えぇ、重々承知してます。」


棒読みで答えると

また、頭を叩かれた。


「本当に反省してんの?!」

「してねーよ。

殴って正解だった。

つーか、殴り足りねぇ。」


反省なんてする訳ねーだろ。


「だいたい、美奈は良いのかよ??

お前、あんな男に
頭の中で抱かれてんだぞ??」

「その発想するヒロのが
よっぽど気持ち悪い。」


冷静に言われると逆に

こちらの怒りは蘇る。


「…やべぇ。
また、イライラしてきた。」

「カルシウム不足。」


そう言って美奈は

俺の唇にキスした。


「嬉しかったよ、それなりに。」


そして俺の口の傷に触れる。


「でも、無茶しすぎ。

やり方が荒い。」


美奈にキスされるとなぜか

怒りは少しずつしずまって。


「心配させないで。」

「…ごめん。」


物影に隠れて深くキスすると

美奈の息が少し上がる。


「俺、バカだから。」


すると美奈も少し笑って
俺の頭を優しく撫でた。

「私もバカだよ。」

美奈の手は優しくて

あぁ、俺ってやっぱり


結局まだまだダメだなって


思い知らされた。



恋なんて
馬鹿じゃなきゃできない







**


「おい、春日!!
ヒロ、お前のために
飯島のこと殴ったぞ!!」


日高がそう言った時、

あのバカ、の前に

嬉しい、が先だった私を


どうか許してほしい。





2011.02.01


[確かに恋だった]サマ
恋なんて馬鹿じゃなきゃできない

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